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る数値シミュレーションが多く実施され、振動モードと観測結果の整合性について検討された。

さらに広瀬ら(1983)5)は、田子の浦港において長周期波のための計測機器によって長周期波を観測し、台風によって有義波高50cmを越える長周期波がもたらされること、長周期波のエネルギーが、駿河湾内に来襲するうねりのエネルギーの約3/2乗に比例することなどが明らかにされた。

最近になって平石・田所ら(1996)6)は、日本のいくつかの港湾において、長周期波による港湾荷役の障害事故が多く発生している苫小牧港や能代港などの港湾を中心に、港の内外の波浪観測を実施し、港の内外における長周期波の特性を検討している。

 

1)合田良実:不規則波浪に伴う長周期波の諸研究について,第31回水工学夏期研修会講義集,B-6-1〜20, 1995年7月.

2)赤松英雄:長崎港のセイシュ(あびき),気象研究所研究報告,Vol.33,No.2,pp.95-115,1982年6月.

3)Hibiya,N.and K.Kajiura(1982):Origin of the ABIKI phenomenon (a kind of seiche) in Nagasaki Bay,Jour.Oceanogr.Soc.Japan,38,172-182

4)大村哲夫・福代倫男・蒔田靖紀・森谷誠生:長周期波の観測と解析について(1),第28回海岸工学講演会論文集,pp.49=53,1981.

5)広瀬宗一・高橋智晴・菅原一晃:駿河湾における長周期波の特性,港湾技研資料,No.451.60p.1983年6月.

6)平石哲也・田所篤博・藤咲秀可:港湾で観測された長周期波の特性,港湾技術研究所報告,第35巻.第3号,1996年9月,pp.3-36.

 

2.2 長周期波と船体動揺の関連に関する研究

 

港内が比較的静穏であっても、係留船舶が大きく水平運動を示し、荷役障害を起こしたり、係留索が切断される事故は過去からいくつか報告されてきたが、特に最近外洋に面して整備された港湾において問題として指摘されている。

まず志布志港において、係留船舶の荷役障害が第四港湾建設局(1987)7)によって報告され、志布志港内の特定のバースで低気圧等によって係船ロープが切断される事故が頻繁に発生したが、現地観測の結果沖合いで発生した長周期波は防波堤による遮蔽を受けずに港内に減衰せずに伝搬していることが示された。

松良ら(1994)8)は苫小牧港の港内外において、波浪観測と船体動揺の観測を同時に行い、波浪スペクトルと船体動揺スペクトルの比較から波浪から動揺への伝達率が検討された。

また白石ら(1995)9)は日本海側の港湾で、港内外の波浪観測データと係留船舶の長周期動揺を測定し、港内に存在する長周期波が船体動揺を引き起こすことを確認し、係留索と防舷材の改善が長周期動揺に対して効果的であることを示した。

さらに永井ら(1997)10)は、仙台新港における波浪観測データと係留中のタンカーの動揺量と係留策張力の測定結果から、長周期波は風浪に比較して発達が早く、減衰が遅く、有義波高が減少したあとで、係留船舶の動揺が発生しているケースを報告している。

 

7)運輸省第四港湾建設局:志布志港静穏度調査報告書,95p,1987年

 

 

 

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