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第3章 まとめと今後の課題

 

3.1 まとめ

 

3.1.1 SAR画像による流氷情報の解析結果

SAR画像からは流氷の分布・密接度に関して有益な情報を判読できた。画像を肉眼で見て判読する場合でも流氷の分布と概略の密接度の判読が可能であった。

画像処理の結果からは、エッジ強調による流氷域の抽出、部分画像の統計値による流氷域の抽出などによりある程度、流氷域を強調・抽出することができた。本研究で試みた画像処理では肉眼による判読を越える結果は得られなかったが、海面に見られる高輝度域(風浪によると思われる)と流氷域との分離の可能性が示されるなど、今後の研究につながる成果が得られた。

本研究が対象とした画像は、海面に広い範囲にわたって高輝度な部分が見られ流氷と海面の輝度分布が重なったことや、流氷域の中に黒い氷盤が見られたことなどにより、輝度値による単純な分離は行えなかった。しかし、オホーツク海の同じRADARSATの画像でも、付図4(3)に示した画像のように流氷域と開水面とが比較的明瞭に区別されるものもあり、場合によっては輝度値のみでの分離が可能なケースもあるものと思われた。

流氷を対象とした合成開口レーダ画像の処理については、今後多くの事例を研究し、さまざまな条件の画像に対して適用を試みて一般化する必要があると考えられる。

 

3.1.2 SAR画像の水路業務への適用性

(1) SARと他の流氷観測手法との比較

流氷を対象とした観測手段として考えた場合、陸上や船舶からの目視観測では、天候に左右される他、観察範囲が限定され、夜間は観測できないという欠点がある。しかし、現地データとして流氷の種類、氷厚などが得られる点で他にはない長所を持っている。

航空機による目視観測は面的な分布を短時間に観測でき、低高度から流氷の状態も観察することができるため、現在実用的に観測が行われている。しかし、観測が天候に左右される他、夜間は飛行できない、ロシアとの国境の海域であり飛行空域が限られるなどの制約がある。

LandsatやNOAAなどの光学センサによるリモートセンシングは、可視光による画像が得られ肉眼で直感的に判読できる点で優れており、流氷観測にも「ひまわり」やNOAAが実用的に使用されている。しかし、悪天候の多い冬季の北海道沿岸では雲により観測できない確率が高くなる。

これらに対して、合成開口レーダは雲を透過して観測できる、夜間でも観測できるというマイクロ波センサ共通の特徴を持っている他、同じマイクロ波センサであるマイクロ波放射計に対しても空間解像度が優れている(マイクロ波放射計は25km程度であるのに対して合成開口レーダは10m程度と3桁も高い解像度を持つ)という長所があり、この点で流氷観測に適したセンサであるということができる。しかし、合成開口レーダの場合、画像に写っているものと実際に現場にあるものと対応に不明確な部分があり、画像だけでは

 

 

 

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