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2.3.2 密接度

(1) 流氷の密接度に関する研究事例

流氷の密接度についてはマイクロ波放射計による観測が実利用されている。マイクロ波放射計としては、Nimbus-7衛星のSMMRおよびDMSP衛星のSSM/Iがあり(Cavalieri et al., 1997)、これらの衛星で得られたデータはNational Snow and Ice data Center(NSIDC, Boulder, Colorado)で解析、提供されている。NSIDCでは1978年から継続的に観測を行っている。

マイクロ波放射計は天候(昼夜を含む)に左右されることなく、海面の放射温度を測定することができる。密接度の測定原理的は、海面の放射輝度と流氷域の放射輝度が異なり、混在している場合はその比率によって放射輝度が直線的に変化することを利用して計算するものである。空間解像度は25?程度とSARに比べると3ケタ程度悪いために、細かい判読には適さない。例えば本研究の対象範囲は約100×100kmであるから全体を4分割したそれぞれの領域の密接度が求められることになる。従って北極海や南極海など広大な海域を概観する目的には適しているが、オホーツク海の北海道沿岸部を対象とするには問題がある。航空機搭載型のマイクロ波放射計による実験例もある。

合成開口レーダによる密接度調査については、流氷情報が早くから実用化されているカナダの経験が長い。カナダの流氷情報(Canadian Ice Serviceによる)は流氷の密接度や氷種、氷厚などをエッグチャートと呼ばれる様式にまとめて提供している。

添付資料(付図8、9)にエッグチャートの解説と流氷判読図の例を示した。SAR画像からの密接度の具体的な判読方法については資料が入手できなかったが、主として肉眼での判読(経験的な技術による)と補助的な画像解析を併用しているものと考えられた。

(2) 目視判読による密接度解析

本研究の対象画像から肉眼によって密接度を判読した結果は、分布の目視判読図(図10)に重ねて示した。ここでは氷盤間のやや輝度の低い部分はほとんどが薄い新成氷であるとして密接度を求めた。

流氷の密接度の判読においては次に示す基準を用いた。

・ 密接度10と考えられる氷盤は、比較的均一な散乱強度を示し境界も明確に判読できる場合が多い。

・ 流氷と開水面の混在域と考えられる部分では、輝度の高い部分を流氷と考え、比率に応じて密接度を決定する。

・ SAR画像からは薄い新成氷と海面の判断は困難。

・ 氷盤間に見られる中間的な輝度の部分を流氷と判断すると、多少密接度を高く見積もる結果が予想される。

(3) 画像処理による密接度解析

? 2値化画像からの密接度計算

2.3.1(5)?「標準偏差/平均値による2値化」で作成した2値化画像(図31)をもとに、10×10ピクセル毎にその中で流氷と判断されたピクセルの存在率を求めて密接度

 

 

 

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