(6) 流氷分布解析のまとめ
? 肉眼による判読
RADARSAT/SAR画像からは肉眼による判読で大部分の流氷域は明瞭に区別できた。空間解像度も十分であり流氷分布調査に適したセンサであると言える。より広い範囲の判読にはWideやScanSARなどのビームモードも選択できるため、適用範囲も広い。
判読上の問題としては、次の点があげられる。
・ 風浪による高輝度な海面と流氷との区別がつかない領域があった。
・ 流氷(と思われるもの)であっても暗く表現される場合がある。
・ 氷盤間の空間が海面なのか薄い新成氷かの判断はレーダ画像だけからは困難である。
? 画像解析による流氷域の抽出
画像解析では、単純な二値化では流氷と開水面を分離することはできないが、エッジの強調や空間特性値の算出によりある程度までは流氷域の抽出が行えることが示された。また、ノイズ低減フィルターをかけることでその後の解析が効果的になることが分かった。
本研究で試みた範囲の解析では、あらかじめ決められたアルゴリズムを用いて自動処理を行う方法では肉眼での判読を越えることは困難であった。しかし、画像解析を併用することにより肉眼での判読性を向上させることが可能と考えられ、また、肉眼による判読から得られる情報を加味して解析することで、より正確に流氷域を抽出できる可能性があり今後の研究課題である。
解析対象がRADARSATの1シーンのみであったため他のシーンやセンサについても検討を行う必要があるが、本研究で対象とした画像は、
・ 明らかに海面と考えられる部分であっても、風浪の影響のため高い輝度(後方散乱強度)を示す部分と輝度の低い部分とが見られた。
・ 流氷群の中に輝度の大きく異なるものが混在していた。
・ 密接度の低い海域では風浪による散乱と流氷との輝度レベルが接近していた。
などの特徴が見られ、画像処理による分離を困難にしていた。このような特徴が見られた原因としては、次のような地理的、時期的なものが考えられる。
地理的条件としては、北海道はオホーツク海の南端であり、流氷の生成域から遠く離れているため移動中に融解、再結氷、積雪、衝突による変形などを受けたさまざまな状態の流氷と現場で凍った新成氷とが混じっている可能性があげられる。
時期的条件としては、画像が撮影されたのが海明け後の3月末であり、気温の上昇に伴い、温暖な日に融解して寒冷な日に再結氷するような変質を受けた可能性があげられる。