1) 設計方針
昨年度試作した一次試作品は基本的には自己復正性能を持つことが確認されたが、90度横転状態、特に天幕内に水を入れた場合に復正力の不足が認められた。その原因のひとつとして復正途中における艤装品袋の移動があったため、二次試作品の設計に際しては、固定ベルトを気室間に渡し、さらに外部補強気室の設置により艤装品の移動を防止する構造とした。
また、昨年度の投下試験において、コンテナFRPの破損がみられたため、?コンテナの使用材料とその構造、?上下コンテナ相互の回縛方法、?コンテナといかだ格納台とのマッチング、等につき検討した。
また、1997年2月におけるIMO設計設備(DE)小委員会において、自己復正型及び天幕付き両面型救命いかだの新たな要件として、自動排水機構を装備することが追加された。そのため、二次試作品の設計にあたり、いかだ床面の下側に補強気室を取り付け自動排水が容易な構造にした。
2) 試作
二次試作品のいかだの形状は長円形で、本体重量は173kg、上下方向の重心高さは床上0.263m、横方向の重心は中心線よりボンベ側に0.571mである。
いかだ床面下部に設けた外部補強気室の浮力は175kgで、いかだ本体の重量にほぼ等しく、喫水は底部の床面で水面とバランスする。
また、いかだの横方向の重心位置はボンベ側0.571m、補強気室の浮力中心はボンベ側0.36mにあり、いかだ浮遊時の傾斜は殆ど認められない。
復原性計算は、救命いかだ反転状態での天幕内部海水量を、100mmの高さで約200kg、200mmの高さで約510kg、300mmの高さで約1010kgの場合について行った。沿海装備の艤装品(重量10kg)を装備した場合についても同様の計算を行い、すべての場合において復元する結果を得た。
コンテナについては、FRP板の厚さを従来の3mmから5mmへと増加させると共に補強リブを3本にふやして全体の強度を増加させた。また、落下時の衝撃による上下コンテナのずれを押さえるため、かみ合わせリブの高さを高くした。
3) 性能評価試験
(1) 自己復正性能
規定の内圧を保持している状態では、天幕内に水がある場合においても十分な自己復正性能を持つことを確認した。
(2) 射水試験
異常なし。
(3) 自動排水機構
外部補強気室を取り付け、排水弁を適切に配置すれば、性能を満足することが分かった。