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沢田4)はWMOの式から、おおむね気温が-3℃になると氷が着きはじめ、-6℃を割ると激しく着氷すると言っている。しかし、気温が-3℃以下であっても、風を背にして追波で航行する場合や漂泊中は、まれに船尾付近に氷が着くことはあっても、その量はごく僅かで、着氷の心配はいらないことが判明したと言っている。このことから船体着氷の主たる原因は、船首が向波とぶつかる際に打ち上げられる海水のしぶきであるとし、着氷を避けるためには、まず船体にしぶきがかからないようにすることが早道であると報告している。

守村16)は、水槽実験で風速5m/sと8m/sの風としぶきを与えて鉄板に着氷する量を計測しているが、着氷量の最低値は-1〜-2℃の範囲にあり、温度が下がるにつれて直線的または2乗のカーブで増えていくと報告している。

気温と風力階級の関係は、表3-1のIMCOの勧告案と照らしても、それぞれの調査報告によって異なっているが、1〜2℃の違いがあるものの、ほぼ一致した結果と見て良いと思われる。すなわち、気温が-2℃付近、風速5m/s以上で着氷が始まる。

 

(5)船体着氷量の推定

日本海難防止協会が行った調査調査書5)は、気象・海象条件を与えると船体の各部にかかるしぶきの量と伝熱量を計算し、これらの大小から船体各部の着氷量と重心の位置を計算するソフトウェアを開発し、実船観測と比較している。

これによると、風速が15m/sを越えると、しぶき量は十分で着氷量は伝熱的条件で決まる。10m/s程度であるとしぶきが全部着氷し、しぶき量により着氷量が決まるとしている。風速が15m/s以下であると、変針し横風にすると着氷量が減ずるが、20m/s以上ではどちらに変針しても、しぶき量が十分で着氷量が減らないとしている。

また、日本海難防止協会が行った実船試験5)では、捕捉しぶき量が少ないと大部分が凍り付いて着氷率(船体にかかったしぶきの全重量[捕捉しぶき量]と着氷となって船上にとどまった水の量[着氷量]の割合)が大きくなるが、着氷の絶対量としては少ないこと、着氷量が多くなるような着氷率は40〜60%であることが分かったとしている。

L.Makkonen6)は、風によって発生するしぶきは、風速が25m/s以上で水面から約3m以上の高さまで持ち上げるのに十分な水量を生じるには、水の含有率が10.3g/m3と非常に小さすぎるので、多くの場合着氷量としては不十分であるとしている。一方、波が構造物に当たって発生するしぶきは、大変大きな水の流体量で、船上では5kg/m3と見積もれると言っている。

 

 

 

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