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岩田17)は、気象・海象とその中におかれた船舶の諸条件により、どの位の氷がどこで成長するかを求めることが重要であるとして、熱伝達理論から求めている。それによると、ある気温のもとで、水滴を含む気流の中に物体がおかれて、これに水滴が凍着する場合、着氷の寸法、形状、重量などは、物体が捕捉する水滴の温度と水量、ならびにこの水量が結氷するときの潜熱がどれだけ奪われ、そしてこの状態がどのくらい継続するかによって決まるとしている。もし、この潜熱の量が奪われる熱量より少ない場合は捕捉水量が全部凍結し、捕捉水量が次第に増加し、双方の熱量が等しくなったとき、着氷量は最大に達する。捕捉水量がさらに増せば、一部は氷となりりきれずに風に吹き飛ばされるかまたは滴下するとしている。そして、円柱が気流と直角に、平板が平行もしくは直角になるよう配置して、着氷量を理論で求め、実船実験と比較している。

しかし、実際の着氷現象は、物体の形状・寸法が多種多様で、しかも着氷の成長につれて変化し、このため捕捉水量と奪われる熱量も時々刻々変化するため、着氷を推定することは困難なことであるとして、実船試験を行って、実験と比較を行っている18)

複数の船で、条件を変えて着氷量を試算している。124GT型オッタートロール船の例として、風速25m/s、着氷継続時間10時間として試算した結果では、気温-5℃で全着氷量5.5t、-10℃で14t、-15℃で27tと見積もっている。-5℃では、遮蔽甲板(2.37t)、ハンドレール(1.5t)、デリック(0.76t)、操舵室頂部(0.43t)、船首ブルワーク(0.24t)、などと続いているのに対し、-15℃ではハンドレール(10.92t)、遮蔽甲板(8.14t)、デリック(4.74t)、操舵室頂部(1.52t)、船首ブルワーク(0.83t)、操舵室前面(0.58t)、と順位が入れ替わっている。

この理由は述べられていないが、実船実験結果と理論とが良く一致したとしている。そして、着氷の成長に及ぼす主な因子は、気温、風速、水滴が付着する物体の形と寸法、付着する水滴の過冷却の程度と量、着氷現象の継続時間であるとし、物体が捕捉する過冷却水滴が多いほど着氷量が多くなるとしている。

 

 

 

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