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これらの報告からしぶきの発生は、向かい波もしくは斜め向かい波で船舶が航行するときに多く、しかも、波浪中の波長λと船長Lの比λ/Lで変化する。相対風向・風速が大きくなれば、しぶき量が多くなる。また、相対風向・風速の変化は発生したしぶきの流れが船内方向に移動するか、または船外方向に移動するかの要因となり、船内に入るしぶき量が異なってくるであろう。

 

(3)船速としぶき量

荒天下の波と船体船首部との衝突によって、しぶきが発生することから船速の要因が重要な項目となる。船速としぶき量の関係をまとめる。

日本海難防止協会5)は、2mモデル模型船を用い、3〜6knotの船速で水槽実験を行った。船首船型フレヤーを原型と大・小の3種で、波長と船長の比を1.5とし、水面上30cmの位置でのしぶき量を計測している。この結果、速度が上昇するにつれて、しぶき量が増加し、6knotでは約0.02g/cm2回のしぶき量を計測している。フレヤーの影響は、小さい場合がしぶき量が増加するが、大きいと3.5knotで極大値を示し、船速が増加するとしぶき量が減少して有利であると論じている。このことからフレヤーは船の運動をおさえるが、他方でしぶきの発生源として働くとしている。

加藤8)は、模型実験及び実船観測によって、船の速度としぶき量の関係を調べた。正船首から一定の風と波を与えて、しぶき1回当たりの量を求め、3〜4knotまではしぶきが上がらず、これ以上の速度では急激に増加するとしている。風速12m/s、波の波長と船長の比が2、船速6〜7knotの条件のとき、ブリッジ正面、上甲板ともに0.1〜0.2kg/m2回と見積もっている。船速が速くなると一定時間の間に上がるしぶきの回数が増加するので、速度の影響はさらに大きくなるとし、船速を落とすとしぶき量が減ずると結論づけている。

 

(4)気温条件と着氷

しぶきが船体構造物に付着し、外界気温が低いときに結氷する。外界気温が低いとき船体構造物も冷やされており、付着したしぶきの熱が奪われ冷やされて着氷すると考えられる。着氷は気温条件と風とが相互に関連するから、気温だけを抜き出して議論できないが、ここでは気温を中心にしてまとめる。

日本海難防止協会が行った調査5)によると、「階級1:氷が少し着いた、階級2:多くの氷が着いた、階級3:非常に多く着き危険なので氷割をした」の階級別で、着氷階級1は気温が-4〜-6℃のときに多く、2と3を加えた階級では-6〜-8℃のときとなっている。

階級3の氷割を必要とする気温は-2〜-8℃では少なく、-8℃以下になると多量の着氷が生じるとし、-12℃以下では2回に1回の割合で氷割を必要としている。

気温と風力階級との関連では、?気温が-6℃より高く、風力3以下のとき着氷がほとんど起こらない、?気温が-6℃以下なら風力階級3以下でも着氷が起こり得るとしている。一般に、着氷が多くなるのは風力4以上、気温-4℃以下であり、特に多量の着氷が50%以上を占めるようになるのは、(気温×風力)の絶対値が40を越える場合であるとしている。

 

 

 

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