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相対風速の影響でのしぶき量は、風速が0.4〜0.5m/sを越えると直線的に増加するとしている。しぶきは、風と波と船の前進速度があって初めて発生し、その位置を

?船首が波に突っ込むとフレヤーに沿って水幕が上がり、それが風に吹きちぎられてしぶきになるもの、

?船首波と海の波が重なると、その部分の波高が加え合わされ、異常に高くなり砕けて上がるもの(斜め向かい風)、

?船による船首前方への波と海の波とが重なった所から上がるもの、

の3種に分類している。

この結果から、

?λ/Lが1.5〜2.0の船が向かい波中を航走するとき、もっともしぶきをかぶりやすいこと、

?波高・船速・風速が増せばしぶき量が増加し、ある限界まではしぶきはほとんど上がらず、ある値を越えると急激に増加すること

?航走中に船体にかかるしぶき量を減らすには、船速を落とすのがよく、向かい風・斜め向かい風では、転針し波や風の方向を変えることが有効であるが、船の安全に対しては問題があり、注意を要すること

とまとめている。

加藤8)は、450GT型巡視船を12ノットで走らせて実験と水槽による模型実験を行った。しぶき量は向かい波のときに多く、正船首から受けたときよりもおおよそ30°方向から受けた、やや斜め向かい波の方が多くなることがあると報告している。波長40m、波高1.8mでしぶき量約70kg/m2hとしている。また、1時間当たりのしぶきの回数が増えると、1回当たりのしぶき量が比例して増えたり、回数nの2乗で増すと言っており、しぶきの発生回数を減らすことを指摘している。

向かい波、横波(船首に対して90°方向からの波)、追い波(180°方向からの波)で分けると、横波、追い波のときは、しぶきが殆ど上がらない。船長の1〜2倍である波長の向かい波のとき、最もしぶきが上がりやすく、横波や追い波ではしぶき量が少ないとしている。

波浪階級からみた実船調査では、日本海難防止協会が行った実態調査5)によると、波浪階級3(やや波がある)及び4(かなり波がある)の場合、「多量の着氷」が調査対象1,158件の30%であるが、波が高くなり荒れてくる波浪階級5〜7では、「多量の着氷」が50%近くになるとしている。

上村ら11)は、簡易着氷試験装置によって着氷の成長におよぼす風速の影響を調べた。噴射ノズルから500mmの位置に供試体をセットし、噴射条件及び風速を変化させて着氷実験を行った。単位噴霧水量約100kg/m2h、粒径190μmのとき、着氷率は風速の増加と共に徐々に増加する傾向を示し、風速が15m/s以上になると90%以上となったと報告している。また、単位着氷量に及ぼす風と水温の影響では、気温の変化より風速に大きく依存していると報告している。

沢田4)は、風速が8m(波高1.5m)に達すると着氷が始まり、10m(波高2m)を超えると強い着氷が起こるとしている。船体にかかる回数が対船風速に比例し、着氷量はそのしぶきの回数に比例するため、対船風速が大きいほど氷が着きやすいとされたのは、低速船時代の定説であって、いかなる風向の場合でも対船風速に対して船速の占める割合が50%を超える今日の高速船時代では、むしろ風速そのものが着氷を左右すると考えるのが妥当である。高速で航走すれば、船体との衝突で頻繁に波しぶきを空中に舞上げ、風向にかかわりなく船上に降り注ぐとしている。

 

 

 

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