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これらの方法にはそれぞれ長所と短所があり、物体表面を暖めて凍らせないようにする熱エネルギーによる方法ではエネルギーコストが高く、機械的に落とす物理的方法では施工性とコスト、化学物質による氷点降下を利用した方法では性能の持続性や公害の点で問題がある。ポリマーコーティングによる方法は材料の表面の性質のみによって着雪氷防止を機能させることから技術的には難しいと考えられる。しかし未処理に比べて、雪や氷の除去が容易になることや比較的施工が容易であり、複雑な形状の被着体にも処理できる等々メリットは大きい。」と記述されている。

さらに、この研究の成果として着雪、着氷のメカニズムの解明、付着強度の測定、付着強度と材質の関係解明がなされ、併せて防止策としてのフッ素系素材が有効との見通しがたてられているものの、耐久性や普遍性、低コスト性を含めた決定打となるような防止材料の開発にまでは至っておらず、今後の研究が必要と結んでいる。

 

1.2 船舶設備について

海上、特に極寒地域の海上においては、着氷によると考えられる海難事故が昔から発生しており、その多くが悲劇的な結末を向かえている。船体着氷による場合瞬間的に転覆する場合が多く、海水温度が低いために乗組員がほとんど助からず、まことに悲惨である。また、着氷を除去するための作業も苛酷な環境下で行うので作業員にとっては危険きわまりない作業となり、作業時間の長さによる体力の消耗や落下する氷による負傷或いは転落死亡等常に危険と背中合わせで航行の安全を確保するのに懸命となっている。

 

(1)日本

日本で船体着氷が問題にされはじめたのは1950年代の終わりからであった。

1952年の講和条約の発効により、マッカーサーラインが撤廃され、戦後中止していた北洋漁業が解禁された。1954年頃から始まったタラの試験操業が好調であったことから、サケ・マス漁の裏作として冬期タラ漁に参加する漁船の数は、年々急速に増加していった。1957年9月から翌年4月までの8カ月間に、出漁許可を得て操業した漁船の数は 532隻に達した。それと共に海難件数も大幅にふえ、出漁隻数の1割にあたる53件を記録した。しかも、転覆や行方不明が13隻に及んでいること、乗組員の死亡や行方不明が181名に達したことなど、その犠牲の大きさが目立っていた。(表1-1参照)

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