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へ急行した。「組合長、水出まっか。」組合長曰く「うん、出るんちゃうか。」組合長宅の蛇口をひねる。水が出る。「ううん?。おかしい。」なぜ高い位置にある水道が出て、低い位置にある水道が出ないんだ?.じっくり考える精神的余裕なし。わが家では出ない。ひとまず役員に連絡しよう。順次確認していく。ほとんど出ているという。

しかし出ないところがある以上、早急に原因をみつけだして、修理をしなければ。水源から順次水道管埋設位置を追いかけてみるがなかなかわからない。道路に亀裂が走り、水が滲んでいるように見えるところを見つけた。これだ、大がかりな工事になりそうだなと思いながら準備にかかろうとした。ところが、そこより低位置でも蛇口から水が出ている。ここは違う。そのときやっと気付いた。今回は非常に短時間でわが家の水が止まった。「そうだこれはわが家の近くで本管が破損しているに違いない。」あわてて自宅近くまで戻る。なんとわが家から数10mのところで本管がはずれ、川の中へザーザーという音を立てながら水道水が流れ出している。「ああ情けない、落ち着いて考えていればもっと早くわかったろうに。」と反省しながら工事にとりかかった。

「あっそうだ。職場へ出勤が遅れる旨連絡しよう。」232-4411、 232-4000いずれも反応がない。しようがないか、そのうち連絡できるだろう。まず工事。────まったく無責任な区役所職員である。やれやれ。────「これから仕事に行ってくるわ。」と言って補修工事現場のそばを通って勤めに出ていった近所の人がしばらくすると戻って来た。「どうしたん?」「電車止まっとるで。この先の道も陥没して車やったら通られへんで。」と言う。そうか、電車が止まっているならあわてて出勤しなくともよかろう、やれやれ。────ああーなんとものんきな。────3時間ほどかけてやっと修理工事完了。さて、朝から飯も食ってない。食事をして一休みしてから出勤することにしよう。────市街地での地震被害状況のことは全く考えていない。気楽な職員である。────わが家へ戻り、食事をしていたら、電話が鳴った。「もしもし」、「ああーやっとつながった。あちこち電話しようとするけど、どこもつながらへん。初めてですわ。まだ家におったんですか。テレビ見てませんの?。市役所つぶれてまっせ。明治生命ビルも、交通センタービルも。あちこちで火災が発生してまっせ。はよテレビつけなはれ。区役所もきっとつぶれてまっせ。」とM職員の声。このとき初めてテレビをつけた。いや実は電気がついた直後に地震速報等は少し見た。そんなに被害があるようには報道してなかったので、そのまま水道工事をしていたので、その後の報道内容はわからない。まだまだのんびりしたものであった。「うわー、こりゃいかん。」区役所へ電話を入れようとするが、つながらない。しかたがないので課長の自宅へ電話してみた。課長の奥さん曰く「ええっ!うちの主人まだ着いてませんか?。早くに徒歩で出かけたんですが。」「いやいや私まだ自宅にいるんです。区役所にいるわけではありません。」恐縮するばかり。なんとか奥さんが課長に連絡する努力をしてくれると言う。直後に課長から電話が入った。「自転車ででも今すぐに来てくれ。人手がいくらあっても足りない状態だ。」。さあーこうしちゃおれない、すぐ飛び出そうとは思ったものの、まだ気持ちの上では全く緊迫感がない。さてどうして行こうか。自動車で行くと駐車場所に困るだろうな、駐車場料金が高くつくだろうなと考えた。(まだまだのんきに考えている。道路の渋滞状況なんて、とんと頭に浮かんでいない。街中では有料駐車場は営業しているものと考えていた。)まあー寒いけどバイクで行くことにしよう。

ひとまず当日は状況把握をして明日から本格的な業務をすることになるだろうな。着替えを持つわけでなく、食べ物を持つわけでなく、てぶらで家を飛び出している。家族には「夜には帰ってくるからな。」と言い残して。────ああーのんきな。────「家の中をまったく片づけてないんだから。ひとまず片づけてよ。」と妻から指示されたが、「ひとまず区役所の状況を見に行くだけだから、夜帰ってきてから片づけるわ」と言って飛び出している。まったく気楽な職員である。────ああーやれやれ、なさけない。────有馬街道を下る。市街地が近づいてきた。空を見ると、黒くなっている。煙だ。テレビ報道のとおりだ。あちこちで火災が発生しているんだろう。まだ緊迫感はそれほどない。県庁近くまできた。なんと大きなビルが横倒しになっている。小さな木造建物がグシャグシャになっている。うわー大変なことになっているではないか。事の重大さに初めて気づいた。区役所にやっと着いた、事務室はゴチャゴチャ。数人

 

 

 

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