日本財団 図書館


の職員が部屋の隅で困り果てた表情で座り込んでいる。さて何をすればいいんだろう?。どう行動すればいいんだろう?。まったくわからない???。それからは、訳がわからぬままに1年間があっという間に過ぎてしまった。あまりにいろんなことがありすぎて、記憶も混乱している。随分と大勢の人達に出会った。いろんな人に助けてもらった。あちこちで迷惑もかけた。まるで夢を見ているかのような1年間であった。Nさん、あなたは率先してまず自立が大切だと実践されましたね。Yさん、あなたはお父さんが寝たきりだというのに頑張っておられましたね。Aさん、あなたは地震で失業し、明日からの自分の生活について大きな不安があったでしょう。Nさん、Yさん、Aさんそれぞれに私的な苦労があるのにもかかわらず、他の避難者のためにと、必死になって頑張ってこられたその姿はいつまでも忘れられません。あっ!そうだ。『鍋』のことも一生忘れることのない出来事の一つです。みなさんありがとうございました。「神戸の復興」はこれからです。

 

5  阪神・淡路大震災の課題

 

神戸市が,阪神・淡路大震災の経験から,何を今後の地震防災対策の課題と考えている

か見てみよう。

(神戸市防災会議「神戸市地域防災計画総括 地震対策編」平成9年6月策定)

 

2-2 阪神淡路大震災の課題

1.災害に強いまちづくり

阪神淡路大震災では、神戸市において最大震度7を記録し、死者・行方不明者4,564人、負傷者14,679人、最多避難者数23万7千人、全半壊建物112,925棟,火災発生件数175件等、戦後最大級の激甚災害となった。

死者の89%以上が圧死及び窒息死となったことから住宅構造の耐震力が問題となり、また延焼火災の多くが老朽木造家屋密集地域・住工混在地域で発生したことから住環境整備上の問題、さらに避難空間の不足、道路交通上の問題、災害情報の収集・伝達の問題等、災害に対する都市構造上の問題点が指摘された。

今回の大震災を踏まえ、災害に強いまちづくりの課題として、防災力の強い都市構造の構築、自然と共生した災害対策の推進、市街地域における地震対策の推進、防災空間の確保、都市空間の耐火性の向上、安全な避難路・避難空間の体系的整備、拠点構造物の防災力強化、交通ネットワークの防災性能の強化、災害に強いライフラインシステムの構築、災害に強い情報システムの構築等があげられる。

 

2.防災訓練・市民啓発

阪神淡路大震災における犠牲者の多くが家具の下敷きになる等自宅内で死亡していることから、平常時からの家庭内防災の重要さが浮き彫りになった。また、市民レベルの非常用飲料水や食糧等の備蓄の必要性も認識された。

今回の大震災をふまえ、平常時における防災訓練、市民の防災意識の啓発が課題としてあげられる。

 

3.防災活動

阪神淡路大震災においては、被災した地方自治体レベルや、政府における初動体制の遅れが問題となった。これは、被災自治体の職員動員基準の一部不徹底がみられた上に、職員自身が被災するという現象が発生したこと、また、市役所庁舎自体が被災し機能に障害が生じたり、交通途絶による職員の登庁の遅れや初期情報の不足による状況把握の遅れ等の要因が重なったことが原因としてあげられる。

また、被災地を目指して大勢のボランティアが駆けつけたが、被災自治体はボ

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION