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メタノールの大量輸送は、通常約10,000ガロンの燃料を積載する標準の石油製品タンクローリーによって行われる。ガソリンおよびディーゼルの大量輸送とメタノールの大量輸送では火災の危険性にほとんど差はない。しかしながら、タンクローリーにメタノールに対する耐性がない材料が使用されている可能性があることから、劣化と燃料漏れの原因となるシールやガスケットが、長期間メタノールにさらされる場合に問題が出るであろう。

 

メタノールについては、輸送中と貯蔵中の両方を通じ、蒸気圧が可燃範囲内にはいった場合に火災の危険性があることを考慮する必要がある。M100については、メタノール/空気の混合比は、6.7〜36パーセントの可燃範囲をもつ。燃料あるいは貯蔵タンクの中で、メタノールの温度が摂氏10度から43度(華氏で約50度から110度)の場合、通常の気圧のもとで引火可能なメタノール/空気の混合気となる。このため、外気に通じた容器や貯蔵タンクの空気部分には、輸送や貯蔵の過程で引火の可能性があるメタノール/空気の混合気が存在する。

 

この状況は、蒸気の体積濃度が通常温度および圧力では爆発限界を越えている。(すなわち、非常に「濃い」)ガソリン容器や貯蔵タンクにおける空きスペースとは事情が違っている。メタノールより揮発性の低いディーゼル燃料の場合は、空気部分における蒸気/空気の混合気は、一般に通常の周囲の温度での爆発限界を下回っているであろう(すなわち、非常に「薄い」)。

 

このため、メタノールに関しては、タンク内のあらゆる点火源に対する万全の対策を施し、あらゆる排出パイプに防火装置が設置されていることを検証することが非常に重要である全ての注入ラインは、あらゆる外部の点火源とメタノール/空気の蒸気の間にシールを作るために、液体メタノール表面の下方に伸ばさなければならない。

 

一般的にM85は、燃料蒸気が主としてガソリンの成分から構成されているため、引火性の特質がガソリンのそれと極めて類似している―通常の状況において、容器や貯蔵タンクの空気部分は爆発限界を超えた燃料/空気の混合気を含んでおり、燃焼にはつながらない。

 

(c) 貯蔵所への荷下ろし中の火災の危険性

 

大量輸送タンクローリーから貯蔵所へのメタノールの輸送では、輸送中に漏れるメタノール/空気の混合気が引火性となる可能性について考慮しなければならない。 更に、流出したメタノールは急速に気化し、引火性のメタノール/空気の混合気を形成するであろう。

この理由のために、全てのホースの継ぎ目が機械的にロックされるものであること、蒸気還元装置がタンクローリーと燃料貯蔵タンクの間に設置されること、およびタンクの場所から静電気が発生することを防止するための放電設備が設置されることが重要である。先に述べた通り、あらゆる通気部分に防火装置が装備され、注入部分を貯蔵タンクの底部にもってくる必要がある。

 

(d) 貯蔵中の火災の危険性

 

メタノール燃料は通常、運輸事業者の運行ニーズを反映して、容量の決められた地下タンクに貯蔵される。設置に際しては、長期にわたる劣化および漏出を防止するためにメタノールに耐性がある材料を使うように設計されなければならない。ディーゼルあるいはガソリン用に設計されている燃料貯蔵タンクは、メタノールに対して耐性がない。

 

M100は揮発性が高いことから、貯蔵に伴う火災の危険性がディーゼル燃料のそれよりも

 

 

 

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