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増加させている。燃料の揮発性が高まることで、寒冷時の始動性能の向上や燃料タンクの気相部分に引火を妨げる量の多くの蒸発ガスを発生させている。

 

通例、M100が圧縮点火方式の大型のディーゼル・エンジンに採用されている一方で、M85は火花点火方式の小型・中型のガソリン・エンジン向けの代替燃料と認識されている。M85はまた、M85と従来の無鉛ガソリンのいかなる混合物でも運行できる車両(FFV)でも使われている。

 

3.3.1.1 安全性に関する事項

 

(a)火災の危険性に影響を与える一般的特性

 

火災の危険性に影響を及ぼすメタノールの物理的要因は、その揮発性、引火点温度、爆発限界の範囲、自然発火温度、および電気伝導性を含むメタノール(あるいは、あらゆる代替燃料)による火災と関連した結果、または、潜在的な損害に影響を及ぼす他の重要な要因がいくつかある。これらには、液体プールの燃焼率、燃料、火炎温度、および火災から放出された放射熱の熱量が含まれる。

第3章第3項では、その使用と関連した安全性、健康、または環境上の効果に影響を及ぼす各代替燃料の物理的特性の相対的な比較を行う。

 

メタノールを他の燃料と区別する1つの一般的な物理的特性は、その腐食性である。メタノールに対し、アルミニウム、マグネシウム、ゴム製部品などガスケットやシーリング材料など、通常石油の貯蔵や輸送システムに使われる数種類の材料はメタノールに対する耐性がない。このためメタノールの輸送・貯蔵には特別な事前対策が必要である。

 

メタノールは他の自動車用代替燃料と違い、明らかに毒性が強いと考えられているが、メタノール蒸気の吸引に関する暴露限界はガソリンの同数値よりわずかに低いものである(ガソリン蒸気に関する許容濃度(TLV)が300ppmであるのに対し、メタノール蒸気に関する許容濃度は200ppmである)ガソリンは、メタノールより揮発性が高いため、より多くのガソリン蒸気が、メタノールと同量の流出量で発生し、その結果、被曝した人にとつてより危険性が増す。

NFPA 325M‐引火性液体、ガス、および揮発性団体の火災の危険因子、1991年版‐において、消防士に対する被曝リスクの評価を提供する、健康に対する危険性の格付けが示されている。

 

メタノールのもう1つの一般的な特性は、ニートメタノール(Ml00)の火炎輝度の低さである。明るい日中にメタノールによる火災が発生した場合、火災を発見し、その規模を推定することが難しい。M85の場合は、ガソリン部分の燃焼がある程度の明るさを生じるため、視認性が高まる。

 

また、メタノールの蒸気は空気より重い。このため、メタノール蒸気は、地表もしくは、整備場のような低い場所にたまる傾向がある。

 

メタノールに無鉛ガソリンをブレンドすることにより、寒冷時の始動性能や燃料の燃焼度を高めることができる。ガソリンを含むM85の方が、M100より腐食性を減少させることが期待できるが、一方で健康面の有害性が増す。

 

(b)輸送中の火災の危険性

 

 

 

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