日本財団 図書館


4.5 本研究事業への期待

 現在人工衛星による海洋のリモートセンシングは、色々なセンサーによって行われているが、その中でも昼夜を問わず、雲などの天候に左右されないものとして合成開口レーダー(SAR)を上げることができる。このSARセンサーを搭載した日本独自の衛星としては、JERS−1があるが、おもに地表を対象に研究が進んでいるのが現状である。海洋をターゲットとしたものでは、アメリカのSEASATが1978年に打ち上げられデータが収集されたが、故障により途中で予定していた計画よりも早く研究が終了してしまった。その後1991年に、ヨーロッパでERS−1が、最近になってカナダで同じ海域を1日〜2日に1回の割合で観測可能なRADARSATが打ち上げられた。これらの衛星データを用いて海洋についても研究が進められている。
 この様な経過の中でSARデータが、広範囲にわたる波浪分布や海流、海洋フロント、内部波、中規模流などの海洋現象や油汚染の把握などに利用できる可能性があることを、多くの研究の中で指摘されてきている。しかし、具体的な利用のためにはSARデータを定量的に示すことが必要であり、そのためには、観測海域における実際の海洋データと衛星データすなわち、海洋現象と衛星画像の比較検討により十分考察し、その関係を明かにして行かなければならない。
 当庁にとって、地球環境とくに海洋の保全と航海の安全確保のための海洋観測並びに海洋研究は、重要な業務のひとつである。現在の海洋観測は、船舶等で毎年実施されている定点観測などの点の観測が殆どであり、海洋の現象を面的にグローバルに観測することが難しく、これを補うものとして衛星観測データを利用しているが、おもにNOAAの画像であり、これは悪天侯時は観測できず気象の影響を受けやすい。しかし、SARデータは、前述したとおり昼夜に関係なく天候に影響されず、広範囲な海洋現象をとらえることができる。当庁の業務の中では、北太平洋域の波浪の把握や黒潮流軸の把握、沿岸域の内部波の把握など、また、時期的なものであるがオホーツク海における海氷移動の把握にも利用できる可能性があるものと考える。
 当庁業務において現実的に利用していくには、まだ多くの課題を残しており、今後のさらなる研究考察が必要であるが、衛星の力を利用することは、海洋現象を把握するうえで非常に有意義なことであり、SAR以外の衛星データと合わせて利用することにより効果的に利用することもできるものと考える。また、前述した海氷の把握では、一部の外国において、SARデータが利用されており、実利用の可能性も高いものと考えている。
 以上のことから本事業の研究が、当庁の今後の施策に大いに反映されるものと期待している。

(水路部海洋研究室)

 

 

 

前ページ  目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION