日本財団 図書館


4.3 SARデータの幾何補正と波浪解析の経験

 我が国におけるSAR画像データの解析は、多くの知見が得られていない。以前、私の研究室では、SARデータの入っているMTから波のデータの部分を取り出し、画像として表現することを行い、幾何補正を、最初に理論的補正式を用いた補正処理を行った後、GCP(GROUND CONTROL POINT)を求めて、UTM座標系の地形図と比較しながら行った。またSAR画像データの検証の1つとして、ウェーブライダーを用いた船舶観測によって得られたデータとの比較を行った経験があるのでその結果について簡単に記述する。

 合成開口レーダは、プラットフォームの運動によるトップラシフトを画像合成の原理としているため、海面の運動による効果が、画像中に反映され、一般にはその解釈が難しいとされているが、油膜の検出は可能であると考えられており、ERS−1等を用いた実験で問題点が明らかになってきている。衛星搭載レーダの最大の問題は、分解能であり、油汚染域を分解能ぎりぎりで判読するために、スペックルノイズをいかに処理するかが課題になっている。しかし、大規模な汚染がある場合には、その広域な探査性能が有効であるといえる。航空機搭載SARの場合には、油一膜の大きさにくらべ分解能が十分であれば、明瞭な検出が可能である。したがって、衛星SARの利用と航空機搭載映像レーダを有機的に組み合わせた観測形態による監視体制の整備が望まれる。

1 幾何補正

 まず、図(1.1)の左に幾何補正前の全体画像を示し、右に理論的補正式を使用してアフィン変換(表1.1)によって幾何補正した全体画像を示す。このような理論的補正式による幾何補正だけでは大まかな歪みが取り除かれるだけで、実際に地形図と見比べるとまだかなりの歪みがあることがわかる。そこで、理論的補正式による幾何補正後の画像をさらに精密に補正するために、UTM座標系で表されている1/50000の地形図を用いて回転・拡大させたのが図(1.2)の右側である。この様にすることで、より精密に歪みを補正することができる。そこで、さらにパラメータを理論的補正式に代入し幾何補正を行った。そして、表(1.2)に示すようなG,C,P(Ground Control Point)を2点(静岡市大谷、駿河大橋)取得し、それから1ピクセル・1ライン当たりの緯度・経度の変化分を計算し(表(1.3))、画像上に緯線・経線の作図を行った。そして、理論的補正式の検証を行うためにG,C,Pをさらに2点(安倍川橋西側、南安倍川橋)取得し、地形図との位置誤差を測定した(表(1.4))。この補正式はセンサの機構に関するパラメータ、位置、姿勢の計測データを理論的な補正式に与え、センサの機構に関する内部歪みとセンサの位置や姿勢に関する外部歪みに対し、系統的な補正を行うものである。しかし理論以外の歪み(地球の自転、地球の曲率、地球表面の凹凸)の混入、及びセンサの位置や姿勢の計測データの誤差により、十分高い精度の補正が期待できない場合が普通である(例えば、ランドサットのMSS画像の場合約1kmの位置誤差が生じる)。SAR画像の場合、約4033mの位置誤差が生じていることが、G,C,Pの比較によって分かった。これはおそらく理論的補正式の弱点であるそれらの誤差及ぴ歪みの混入が原因であると考えられる。また、緯線・経線作図画像における位置誤差の算出のためのG,C,Pの位置を図(1.3)に、地形図上でのG,C,Pを図(1.4)に示す。
 次にUTN座標系の1/50000地形図と照らし合わせる事による精密幾何補正の評価を行うために、表(1.5)に示すように、安倍川付近における精密幾何補正後の画像からG,C,Pを3点(静岡市大谷、安倍川橋東側、駿河大橋)取得し、画像上での位置(ピクセル・ライン)と同位置のUTM座標系の地形図上における緯度・経度を求めた。それから1ピクセル・ライン当たりの変化分を計算してその平均を求め(表(1.6))、緯線・経線を作図した。また、表(1.7)に示すように、地形図との位置誤差の確認の

 

 

 

前ページ  目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION