第2章 船舶のトン数の測度に関する法律
1.「船舶のトン数の測度に関する法律」(以下「トン数法」という。) 制定の経緯
船舶のトン数は、船舶の大きさを表すものとして、明治時代以前から使用
されており、徳川時代には、船舶の容積を石数で表していた。明治時代以降に
おいては、明治4年12月に船舶嘲数改法則及石数改方法則が制定され、ついで
明治17年4月に、当時英国の商船法(トン数測度規則が定められている。)
において実施されたモールソン方式を取り入れた船舶積量測度規則が新たに
太政官布告台10号をもって交付された。
その後、英国の商船法の改正とともに各国は英国の法規にならい時刻の法規の
改正を行ったが、我が国においてもこれに対応して大正3年太政官布告第10号を
廃止し、新たに、船舶積量測度法が制定され(大正3年法律第34号)、その後
3回の改正を行い今日に至っていた。
船舶のトン数の測度は、主要国においては、前述の英国商船法の規定に
採用されたモールソン方式(シンプソンの第一法則により船舶の内法容積を
算定する方式)を基礎とし、基本的に測度方法は同じであるものの、各国の船舶
のトン数の測度基準の歴史的経緯の相違から、船舶のトン数に参入するか否か等の
測度基準が異なったものとなり、また、船舶の用途の多様化に伴い、多少の
変更が行われているので各国の運用において、多少の相違が生じることとなった。
「船舶のトン数は、船舶の個性及び、同一性の識別の上で重要な要素であり
また、諸外国においても港湾税、燈台税、衛生税の賦課、水先案内料、通行料、
卑船料等の徴収基準あるいは多くの海事法規の適用などの基準として利用されており、国内的にも、国際的にも、きわめて重要な基準である。そのため、過去において
幾度も船舶のトン数の基準を統一しようという試みがなされたが、実現するに
至らなかったため、必要な国ごとに船舶のトン数の互認協定を結んでこれらの
欠点を補っていた。
しかし、昭和57年7月18日から「1969年の船舶のトン数の測度に関する国際条約」
が発効したしたことにより、現在は同じ基準により測度されている。{スエズ運河、パナマ運河では、運河の通航量を公平に課するために、独自のトン数測度規則を
定めている。(基準となっている測度方式はモールソン方式である。)}
ここで船舶のトン数の測度に関する国際条約の成立について述べる
第二次世界大戦後組織された国際連合では、国際連盟時代に行われていた
「船舶のトン数測度統一のための事務」の継承を決定し、1958年にIMCO(政府海事
協議機関。現在のIMO(国際海事機関))にこの事務を移管し、約10年間の審議を
経て、1969年(昭和44年)5月27日から6月23日まで「トン数測度に関する国際会議が
開催され、「1969年の船舶のトン数測度に関する国際条約」(以下トン数条約という)が採択された。