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2006年世界観光の速報値
(UNWTO世界観光指標より抜粋)
世界観光、またも記録の年
 2006年通年の速報値では、業界が依然として約4.5%と平均を上回る国際観光客到着数の伸び率に恵まれて、観光需要が引き続き力強い回復を続けていることを裏づけている。速報値は地域平均であるため、確かに小地域区分や個々の国ごとのプラスマイナス様々の成果は覆い隠されている。とはいえ、2006年初めに世界の観光業が直面していたあらゆるマイナスのリスク要因(特に、テロリズム、鳥インフルエンザによる保健衛生上の不安、原油価格高謄)にもかかわらず、長期的に継続している経済発展に支えられて観光産業もまた、長期予測伸び率4.1%を超す申し分ない成長の一年を終えたということである。
 
世界:インバウンド・ツーリズム
国際観光客到着数
出典:世界観光機関(UNWTO)
 
 2006年1月になされた予測伸び率は4.6%であり、現在の推定値を0.1%上回るものであった。現在の推定観光客到着数は8億4,200万人であり、これは2005年の数値に3,600万人(イタリアの総到着客数とほぼ同数)を上乗せした規模で、新記録であった。増加した3,600万人の内訳は、1,700万人がヨーロッパ、1,200万人がアジア・太平洋地域、アフリカと米州が各300万人、中東が200万人である。
 
UNWTO観光専門委員会
さらに伸びる余地あり。しかし陰りも見え始めている。
 このUNWTO世界観光指標の発行に携わった世界250余名の専門家委員によると、2006年の評価値は135であり、最近の動向について全般的に肯定的な見方がされている。評価値135は同委員会の2005年の評価値より5ポイント低く、国際観光客到着数が世界中で10%超も増加した2004年の並外れた評価値に比べると9ポイント低いものである。2007年の見通しは137であり、2006年初頭に出された2006年の見通しから3ポイント下回る評価値となっている。
 
UNWTO観光専門委員会の評価
出典:世界観光機関(UNWTO)
 
短期の観光データ
<世界>
インバウンド・ツーリズム実績
 例年のことであるが、速報値は仮集計値であり、個々の国の数値が9〜10ヵ月の集計値である場合や、アフリカや中東などの地域では、限られた数カ国のデータに基づいた集計値である場合がある点を指摘しておかなければならないだろう。それゆえ、大勢が大きく変わることはないであろうが、最終的な個々の数値や伸び率はここから変動があると思われる。
 アフリカは2006年の観光客到着数の年間伸び率が引き続き8%を超え、前年に続くスター選手となった。この伸びに大きく貢献したのは、サハラ以南地域の各国であった。アジア・太平洋地域は前年レベルを維持したが、これは、タイとモルジブが2004年12月の津波の影響から回復したことに負うところが大きい。加えて、同地域の新興旅行目的地国が好調な伸びを見せ、中国、台湾(中国)、韓国などへの到着客数の減速を補うことができた。ヨーロッパでは、一部の旅行目的地国ではあまり増加が見られなかったものの、目標にしていた前年の増加率(4%増)を何とか達成した。中東では、地政学的な状況、特にイスラエル・レバノン危機という情勢の中、多数の旅行目的地国が好業績を報じており、2006年の国際観光客到着数は4%増と推定される。最も伸びの見られなかった地域は米州で、推定伸び率2%と目標をかなり下回る見込みとなった。これは、カリブ海の堅調な業績や中央・南アメリカの大部分の好調にもかかわらず、主に北アメリカヘの到着客数の不振による。この不振の原因については米州の部に詳しく論じている。
 
地域別国際観光客到着数
2005 2006* 05/04 06/05 2006*
(単位:100万人) (%) (%) (%)
世界 World 806 842 5.4 4.5 100
ヨーロッパ Europe 441.0 458.0 4.0 3.9 54.4
北ヨーロッパ Northern Europe 52.9 56.3 6.5 6.6 6.7
西ヨーロッパ Western Europe 142.6 148.7 2.6 4.3 17.6
中央・東ヨーロッパ Central/Eastern Europe 87.1 88.0 1.4 1.0 10.4
南・地中海ヨーロッパ Southern/Mediterranean Europe 158.4 165.0 6.0 4.2 19.6
アジア・太平洋地域 Asia and the Pacific 155.4 167.1 7.7 7.6 19.8
北東アジア North-East Asia 87.6 94.0 10.3 7.4 11.2
東南アジア South-East Asia 49.3 53.8 4.8 9.0 6.4
オセアニア Oceania 10.5 10.5 3.7 0.3 1.2
南アジア South Asia 8.0 8.8 4.8 10.1 1.0
米州 Americas 133.5 136.3 6.0 2.1 16.2
北アメリカ North America 89.9 90.3 4.7 0.5 10.7
カリブ海 Caribbean 18.9 19.5 4.4 3.2 2.3
中央アメリカ Central America 6.5 6.9 13.4 6.1 0.8
南アメリカ South America 18.3 19.6 12.2 7.2 2.3
アフリカ Africa 37.3 40.3 8.5 8.1 4.8
北アフリカ North Africa 13.9 14.7 8.9 5.8 1.7
サハラ以南地域 Subsaharan Africa 23.4 25.6 8.2 9.4 3.0
中東 Middle East 39.2 40.8 8.4 3.9 4.8
出典:世界観光機関(UNWTO)  (UNWTOが2007年1月までに収集したデータ)
 
2007年の予想
国際観光客到着数
出典:世界観光機関(UNWTO)
 
2007年観光客到着数の伸びは4%の見込み
 UNWTO世界観光指標10月号で述べたように、伸び率が徐々に低下している目下の傾向は2007年も続くと予想される。国際観光客到着数の伸びは2006年を0.5%下回り4%となる見込みで、これは2020年末までの長期年間伸び率予測41%とほぼ一致する。
 大部分の地域は2006年の業績をやや下回るものの、現在の成長ペースを維持するであろうと予測される。2007年、アフリカが9%増となり最高の伸びを記録し、アジア・太平洋地域が8%増でそれに続くと見込まれる。米州の伸びは2%増と世界平均以下の見込みとされている。これは、米州地域南部の旅行目的地国は好調を見せるであろうという見込みにもかかわらず、同地域の観光客到着数の2/3を占める北アメリカの不振が依然続くと思われるためである。この状況は地域内の目的地国間の国境交通の展開、要するに、米加ドル間の為替レート、燃料価格、西半球渡航イニシアチブ(WHTI)の影響といった因子に大きく依存するため、年内に好転する可能性もある。WHTIでは、2007年1月23日以降、空路でカナダ、メキシコ、バミューダ、カリブ海に入る全アメリカ国民に対して、再入国のためにパスポートを所持することが課せられる。中東への到着数は4%程度で伸び続けると予測され、ヨーロッパの伸び率は3%に減速する見込みである。
 
アウトバウンド・ツーリズム 伸び率はやや低下するも、引き続き国際観光支出は増加する見込み
観光支出と観光旅行者数
 観光旅行者数の比較には異なる方法論が数多く存在し、かつそれらは必ずしも厳密に比較可能な手段とはいえないため、異なる市場からの外国旅行者数の比較も、市場の相対的業績を測定する確実な手段ではない。とはいえ、そこからいくつかの興味深い所見を述べることはできる。データが入手できる市場に関しては、例えば2006年は、全般に国際観光支出の伸び率が観光送客数より大きな増加を見せたと言える。
 中国は、公安部発行の報告書によると2006年には3,450万人の国民が海外旅行し、アジア最大の観光送客市場としての地位を固めつつある。2005年比11%増であり、これはここ数年のうちではやや控えめな数値であったが、支出の前年比は16%増であった。また、米州とアフリカは比較する数値が小さいとはいえ、20〜30%の増加となった。アジア・太平洋地域は中国からの送客数の増加から10%増、ヨーロッパの増加率は4〜5%に留まった。中国本土からの旅行者の観光目的地は2001年の18ヶ国から、今や香港・マカオといった中国特別行政地域を含む132ヶ国・地域へと広がり、旅行目的地国地域間の競争が激化していることを特筆する必要があろう。
 中国を除くアジア・太平洋地域市場の中では、韓国が国際観光支出で19%の増加を見せ、昨年の推定送客数の増加率(13%増)とほぼ同水準であった。また、日本は、国際観光支出が4%増、送客数が1%増であった。速報値では、オーストラリアの国際観光支出の増加率(7%)が送客数(3%)の2倍となっている。しかし台湾(中国)は、こういった市場全体の傾向と逆行し、送客数は6%増となったものの、国際観光支出はほぼ横ばいであった。
 ヨーロッパの二大送客市場、ドイツとイギリスに見られる傾向は異なったものである。ドイツの観光支出は11月末までで4%の増加であったが、送客数は、前年比はほぼ横ばいの見込みである。イギリス市場に関しては、支出(10月末までで3.5%増)、送客数(通年、3%増)ともほぼ同レベルの伸びとなる見込みである。また、ロシアの速報値では、支出に比べ、送客数が大きな伸びを示している。
 最後に北アメリカは、米商務省の報告によると、2006年第3四半期末までの送客数はアメリカ合衆国において4%増(カナダとメキシコヘの旅行を除くと5%超)となり、支出は11月末までで6%増である。カナダの速報値は1月から7月までしか入手できていないが、この期間、旅行者数の増加は7%で、支出は5.5%増であった。
 
ホスピタリティ ホテル業界、二桁の販売可能客室当り収入(revPAR)の増加
 デロイトによるホテルベンチマーク(HotelBenchmarkTM)調査の年末データによると、2006年はホテル業界にとってすばらしい年であった。好況な経済と注目の国際イベント、新興観光目的地国の人気上昇、それらが、知らない場所へ旅行したい、したことのないことを体験したいと思う人々の欲求と結びついて、全てが大きく業績を伸ばす牽引材となった。
 中東各地のホテルでは、販売可能客室当り収入(revPAR)の増加率は17%で、この3年間、二桁成長を続けている。2005年の伸びよりは落ちるものの、この1年間の政治不安やテロ攻撃を考えると、堂々たる実績である。中東地域のホテル営業実績には、平均客室料金が大きく影響するが、これは18%増の143米ドルに達した。
 ヨーロッパのホテルは2006年、前年達成した伸びを倍増する勢いで、目覚しい伸びを見せた(revPAR 11%増の97米ドル)。経済状況の好転に加え、イタリアでの冬季オリンピックドイツでのサッカー・ワールドカップなどいくつもの集客力の大きいスポーツ・イベントの開催がその要因である。音楽・芸術愛好家もまた多く同地域を訪れ、レンブラント、ピカソ、モーツァルトの作品を堪能した。
 2006年は、中央・南アメリカのホテルにとっても好況な1年となった。同地域は同年、観光客到着数で世界平均を超え、その余波がホテル産業にも及んだ。中央・南アメリカ全体の平均客室料金は9%もの急上昇を見せ118米ドルに達し、revPARも10%増という結果を達成した。ホテルの好業績にともない国際的なチェーンを持つホテルが地域各地に進出し、市場への投資は上向いている。ブエノスアイレス、カラカス、サンチアゴといった都市では、ホテル供給量が増加した。
 アジア・太平洋地域の2006年は、やや不運なものであった。ジョグジャカルタの地震、ムンバイの通勤列車へのテロ攻撃、そして最近起きた、バンコクでの新年祝賀を襲った一連の爆破事件。にもかかわらずrevPARは10%増という好調な伸びを見せた。地域全体の伸びの圧倒的な牽引力となったのは南部の市場、とりわけインドであり、同国ではrevPARが30%も増加した。
 伸び率はやや低下するものの、2007年のホテル市場の見通しは良好である。この根拠となっているのは同年の世界経済指標と観光指標であり、これらの指標はやや翳りを見せ始めている。また2007年は、たとえばヨーロッパ市場に、昨年ほどの注目イベントの開催がないことも一因となろう。
 デロイトによるホテル・ベンチマーク(The HotelBenchmarkTM)調査とは、140ヶ国420市場にある7,000以上のホテルの実績を日単位、月単位で追跡して、全世界のホテル販売実績をモニターするマーケット・リーダーである。詳しい情報は、電話+44(0)207007 3974、又はwww.HotelBenchmark.comで得られる。
 
地域別ホテル営業実績
客室稼動率(%) 平均客室料金
(米ドル)
販売可能客室当り収入(revPAR)(米ドル)
2006 2005 伸び率
(%)
2006 2005 伸び率
(%)
2006 2005 伸び率(%)
ヨーロッパ 69.2 67.4 2.8 139 129 8.4 97 87 11.4
ヨーロッパ(ユーロ) 69.2 67.4 2.8 110 104 5.6 76 70 8.5
中東 68.8 69.5 -1.0 143 121 17.8 98 84 16.7
アジア・太平洋 71.8 71.8 0.0 121 110 10.0 87 79 10.1
中央・南アメリカ 64.4 64.0 0.6 118 108 9.3 76 69 10.0
出典:デロイトによるホテル・ベンチマーク(The HotelBenchmarkTM)調査
2007年 デロイト&トウシュ社 無断複写・転載禁止
 
ホテル営業実績(一部都市抜粋)
客室稼働率(%)
2006 2005 伸び率
中東・アフリカ
エジブト アレキサンドリア 72.8 73.4 -0.8
カイロ 73.7 71.4 3.3
ルクソール 58.5 57.1 2.4
シャムエルシェイク 65.1 70.9 -8.3
ヨルダン アンマン 57.4 70.6 -18.7
レバノン ベイルート 48.6 49.2 -1.2
シリア ダマスカス 51.5 55.4 -7.1
カタール ドーハ 73.7 74.6 -1.2
アラブ首長国連邦 ドバイ 83.1 83.5 -0.6
サウジアラビア リヤド 71.9 65.4 9.9
オマーン マスカット 63.5 72.3 -12.3
ケニヤ ナイロビ 70.5 75.3 -6.5
南アフリカ ケープタウン 71.2 69.5 2.4
ヨハネスブルグ 73.4 69.6 5.5
中央・南アメリカ
コスタリカ サンホセ 69.4 70.3 -1.3
ペルー リマ 66.0 65.1 1.4
ブラジル リオデジャネイロ 64.4 62.3 3.4
サンパウロ 57.8 51.9 11.3
アルゼンチン ブエノスアイレス 73.8 73.5 0.3
チリ サンチアゴ 70.7 63.5 11.3
ヨーロッパ
アイスランド レイキャビク 68.1 64.3 5.9
ノルウェー オスロ 73.5 69.8 5.3
スウェーデン ストックホルム 73.3 70.7 3.7
デンマーク コペンハーゲン 74.9 72.6 3.1
アイルランド ダブリン 78.1 74.1 5.3
イギリス ロンドン 82.4 76.2 8.2
オランダ アムステルダム 76.9 76.6 3.0
ベルギー ブリュッセル 70.9 67.6 4.9
ルクセンブルグ ルクセンブルグ 69.4 68.9 0.7
ドイツ フランクフルト 60.6 62.2 -2.5
ベルリン 67.6 63.6 6.3
フランス パリ 74.4 70.7 5.1
オーストリア ウィーン 75.6 72.6 4.1
スイス ジュネーブ 63.5 60.2 5.5
チューリッヒ 76.1 71.3 6.7
チェコ プラハ 72.1 74.2 -2.9
スロバキア ブラチスラバ 65.5 72.2 -9.3
ハンガリー ブダペスト 67.6 72.2 -6.3
ポーランド ワルシャワ 63.7 56.7 12.2
ロシア モスクワ 71.2 71.9 -1.0
ポルトガル リスボン 63.1 55.1 14.6
スペイン マドリード 70.1 67.9 3.2
バルセロナ 69.9 70.4 -0.7
イタリア ミラノ 67.5 63.9 5.5
ローマ 77.1 73.7 4.7
ギリシャ アテネ 65.9 61.3 7.4
トルコ イスタンブール 71.2 74.6 -4.6
イスラエル テルアビブ 67.5 68.5 -1.4
アジア・太平洋
中国 北京 74.1 75.9 -2.4
上海 69.5 72.6 -4.3
香港(中国) 香港 83.2 81.3 2.4
台湾(中国) 台北 75.7 78.0 -3.0
日本 大阪 78.9 78.0 1.1
東京 77.8 78.4 -0.7
韓国 ソウル 69.5 71.5 -2.8
ベトナム ハノイ 79.2 79.3 -0.1
タイ バンコク 73.7 76.0 -3.0
プーケット 63.4 47.7 33.1
マレーシア クアラルンプール 72.6 73.1 -0.7
シンガポール シンガポール 81.5 79.4 2.6
インドネシア ジャカルタ 57.3 54.8 4.6
バリ島 54.6 57.9 -5.7
フィリピン マニラ 72.3 74.5 -2.9
インド ムンバイ 75.5 71.8 5.1
ニューデリー 73.8 77.9 -5.3
オーストラリア シドニー 78.1 76.7 1.8
ニュージーランド オークランド 74.5 74.3 0.4
出典:デロイトによるホテル・ベンチマーク(The HotelBenchmarkTM)調査
2007年 テロイト&トウシュ社 無断複写・転載禁止
 
旅行商品の流通
 多くの国で旅行会社の手数料がゼロになるなど、旅行・観光産業の経営環境が新しいものへと変化しつつあり、旅行業者はその環境への順応に追われている。しかしこの新しい環境に適応しあらゆる販売形態に応じることができる旅行目的地国ならびに観光業界関係者こそが、今後の成功者となるであろう、というのは明らかである。情報通信技術(ICT)がカギとなるだろう。
 UNWTO準加盟員であるIPKインターナショナル(ワールド・トラベル・モニター・サーベイの創設者)は、ITBの年次ピサ・フォーラム(Pisa Forum)の結果に基づいた2006年11月のITBベルリンレポートの中で、2006年にダイナミック・パッケージを含めたオンライン・トラベルが広く普及し、ますます多くの旅行者がインターネットで旅行予約を行い、パック旅行を自ら誂えるようになっていると報告を行なっている。消費者はまた、特にレジャー旅行では、旅行の企画をする中でもっとコントロールをしたいと思うようになっており、テクノロジーの発達によって消費者がコントロールし、独自の旅行計画を立てることが可能となってきた。この傾向は、中国で非常に顕著であり、同国では教育のある若者が融通の利かない既成のパック旅行を毛嫌いしているという報告もある。業界専門家によって書かれた旅行目的地国の「誇大マーケティングやPR」を信じるような人は少なくなっており、テクノロジーの民主化とWeb2.0の普及のお蔭で、もはや信じる必要もなくなっている。全米旅行産業協会(TIA)によると、アメリカ人旅行者のうち、専門家によって書かれたレビューを読んでいるのは38%程度で、3人に1人は旅行者のレビューを、3人に2人が旅行者が書いたホテル・レビューを読んでいる。
 IPKインターナショナルの報告によると、ブロードバンドやモバイル機器の発達もまた、旅行目的地国や旅行業者についての自身の体験を他のインターネット・ユーザーと共有するといった、消費者同士の新しい形の交流を助長している。この傾向は、PhoCus Wrightなどの世界的な旅行関連調査会社でも確認されており、同社はインターネットによる取引が今年の全米旅行予約の過半数(54%)を占めるだろうと予想している。これに比してヨーロッパでのオンライン旅行予約の割合は、ここ数年大きく増加しているとはいえ、2008年までは40%以下であるだろうと推定されている。旅行供給業者(航空会社、ホテル、レンタカー代理店等)の業績は2000年来、オンライン旅行代理店(Expedia、Travelocity、Orbitz、Priceline等)をしのいできたが、この2ルートの伸び率は2008年までに並ぶであろうとPhoCus Wrightは予測している。
 旅行供給業者は長い間、その自社商品在庫管理と、独自の流通からの比較的安価な調達でオンライン顧客の獲得ができてきたために、オンライン旅行会社より優位に立ってきた。事実、旅行供給業者が中間業者にかけた圧力によって、ほかに理由はあるものの、業界最大手3社間の所有権交代劇を引き起こすことになった。すなわちCendant社(TravelPortに社名変更)、ならびにSabre Holdings社の未公開株買収、加えてTravelPort社によるWorldspan社の買収である。しかし、旅行取引の大半がウェブに移行するにつれ、旅行供給業者が持つオンライン取引の優位性は消えつつある。非常に進んでいる米国のオンライン旅行市場は、ダイナミック・パッケージ、メタ検索、ユーザー発信コンテンツといった革新を行い、世界の市場に広がる前にアメリカ合衆国で育てるような状況を作り出している。こういった革新技術のひとつとして、Pho Cus WrightがTravel 2.0と呼ぶ新オンライン機能(オンライン消費者向けの機能でWeb2.0プラクティスの旅行業界用アプリケーション)がある。
 
情報通信技術(ICT)旅行業界を変えゆく、静かな革命
 情報通信技術(ICT)の絶え間ない進歩によって、世界は着実にデジタル化へと向かっている。国際電気通信組合によると、通信は益々デジタル化、モバイル化、ブロード化している。そして、こういった革新によって、観光・旅行産業は大きく変わろうとしている。インターネットはいまや、旅行業界がなす鎖(情報検索から予約を経て「トラベル・レビュー」まで)の一部を確実に構成し、消費者の行動様式を変えつつある。インターネット広告局によると、検索エンジンは、家族や友人からの情報よりも信頼のおける情報源として利用されるようになってきている。同時に、Web2.0はますますバーチャルな「口コミ」を呈し、旅行予約は増加している。アメリカ合衆国を例にとると、Pho Cus Wrightが、昨年の全米ホテル・宿泊施設収入の46%はオンライン(25%がオンライン代理店、21%がブランドのウェブサイト)によるものと推定する。これは、今日の世界のメディア消費がデジタル形態であり、55才未満の人々がほかの形態のメディア(従来のテレビ、ラジオ等)よりもデジタル・メディアの消費に多くの時間を費やしているという事実を鑑みればもっともなことである。
 デジタル技術はビジネス・スタイルと個人の生活スタイルとを劇的に変化させた。今日の個人は、メールの送受信、携帯電話での会話、ソーシャル・ネットワーキング・サイトヘの参加、音楽のダウンロード、ネットでの旅行予約等々、通信や取引のためにますますデジタル手段を利用するようになっている。現在進行中のデジタル革命は、低速ネットワークから高速ネットワークヘの移行段階である。ブロードバンド・ネットワークは固定回線の世界で発達しており、2005年末時点、166もの経済主体で、約2億1,600万人のブロードバンド加入者がおり、これはインターネット加入者総数の半数超であり、固定回線総数のおよそ1/5にあたる。この移行は、モバイル・ブロードバンド(第三世代モバイル・システム(3G)等)の出現によって、ゆっくりだが確実にモバイル・ネットワークにも起きつつある。2005年末時点で、約60の経済主体でサービスが提供されており、約6200万人のモバイル・ブロードバンド・ユーザーがいる。さらに、地方や都市部の無線エリア・ネットワーク(Wi-Fi、WiMax等)からの影響もある。
 ICT関連の価格は下落しているにもかかわらず、経済に対するICTの貢献度合いは急速に伸びている。ICT市場は2005年、全世界で3兆米ドルを超す規模であった。
 
インターネット広告の急成長
 世界がますますデジタル化するにつれ、インターネット広告支出は急成長している。メディア専門家のネットワークであるZenith Optimediaによると、インターネット広告費は大幅に増加すると見られている。長い間広告媒体としてある程度の地位を占めていた二つの媒体をわずか11年で追い越してしまった(映画を1997年に越し、屋外広告を昨年に越す)。また、2009年までにインターネット広告費はラジオより大きくなると予想されており、さらに大きな潜在性を秘めている。インターネット普及率の世界平均は17%であるが、最も成熟した市場では約70%となり、飽和状態に達しつつある。しかし、先進市場においてさえ、消費者がインターネットに充てる時間に比べ、インターネット広告に充てる予算の割合ははるかに低く、今後さらに多くの広告がなされるだろうということが予想される。2005年、アメリカ合衆国、日本、イギリス(三大広告市場)の消費者はメディアに費やす時間のうち、22%をインターネット利用に費やしているにもかかわらず、この3市場の広告主が使用するオンライン広告費は予算の6.8%に過ぎない。つまり、消費の対支出比率は3:1を超えている。Zenith Optimediaは、2009年までに全世界のインターネット広告費が9%近くを占めるようになるであろうと予想している。インターネットがすでに総広告費の10%超を占めている3市場は、ノルウェー、スウェーデンとイギリスである。
 
総加入者数上位20カ国・地域(2005年12月末現在)
固定回線ブロードバンド加入者数
(百万人)
普及率
(住民100人に対し)
インターネット加入者に
占める割合(%)
順位
世界 215 3.3 56.2
1 アメリカ合衆国 49.4 16.6 73.9
2 中国 37.5 2.9 51.2
3 日本 22.4 17.5 55.0
4 韓国 12.2 25.2 100.0
5 ドイツ 10.7 12.9 53.4
6 イギリス 9.5 16.0 63.1
7 フランス 9.5 15.6 75.3
8 イタリア 6.8 11.7 38.5
9 カナダ 6.7 20.8 90.1
10 スペイン 5.0 11.7 90.0
11 台湾(中国) 4.6 20.1 61.2
12 オランタ 4.1 25.2 58.6
13 ブラジル 3.3 1.8 41.8
14 メキシコ 2.3 2.2 58.0
15 オーストラリア 2.1 10.4 35.2
16 ベルギー 2.0 19.1 90.3
17 スウェーデン 1.8 20.3 55.8
18 スイス 1.7 23.1 71.6
19 香港(中国) 1.7 23.6 62.8
20 トルコ 1.6 2.2 70.6
 
携帯電話加入者総数
(百万人)
内、モバイル・ブロードバンド加入者数
(百万人)
普及率
(百万人に対し)
順位
世界 2,168 60.25 33.5
1 中国 393.4 * 29.9
2 アメリカ合衆国 201.7 4.36 67.6
3 ロシア 120.0 * 83.6
4 日本 94.7 17.8 74.0
5 インド 90.0 * 8.2
6 ブラジル 86.2 0.18 46.3
7 ドイツ 79.2 2.29 95.8
8 イタリア 72.2 10.26 124.3
9 イギリス 61.1 4.54 102.2
10 フランス 48.1 1.58 79.4
11 メキシコ 47.5 - 44.3
12 インドネア 46.9 - 21.1
13 トルコ 43.6 * 59.6
14 スペイン 41.3 0.94 96.8
15 韓国 38.3 12.53 79.4
16 南アフリカ 34.0 0.22 71.6
17 フィリピン 32.8 * 39.5
18 ポーランド 29.2 0.13 75.7
19 タイ 27.4 * 43.0
20 台湾(中国) 22.2 0.11 97.4
出典:「テジタルライフ2006(digital.life2006)」 国際電気通信連合
 「ブロードバンド」と「モバイル・ブロードバンド」は、一方向あるいは双方向に256kbit/秒以上のものを指す。
* 3Gは、2005年12月未現在未販売


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