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下宿屋(げしゅくや)からの4人(にん)での体験記(たいけんき)
社会福祉法人湘南福祉(しゃかいふくしほうじんしょうなんふくし)センター 下宿屋(げしゅくや) 川瀬 悦(かわせ えつ)
 
《事前準備(じぜんじゅんび)》
 下宿屋(げしゅくや)で世界大会(せかいたいかい)の案内(あんない)がされたのは、夏(なつ)の終わり(おわり)だった。希望者(きぼうしゃ)が上がった(あがった)。希望者(きぼうしゃ)は、申込み(もうしこみ)までには、周囲(しゅうい)の了解(りょうかい)を自分(じぶん)たちで取り(とり)(自分(じぶん)ですることで行く(いく)意味(いみ)も増す(ます))、申込み(もうしこみ)を行った(おこなった)。出発前(しゅっぱつまえ)にしておくこととして、メキシコという国(くに)について、世界会議(せかいかいぎ)についてなどを話し合った(はなしあった)。また、自分(じぶん)の選択(せんたく)で行く(いく)のだから、理解(りかい)してくれた人(ひと)たちに、行った(いった)感想(かんそう)を伝え(つたえ)られるよう(報告(ほうこく)できるよう)な自分(じぶん)をめざして行こう(いこう)ということになった。下宿屋内(げしゅくやない)でも、皆(みな)からそう言われて(いわれて)出発(しゅっぱつ)の日(ひ)を迎えた(むかえた)。
 出発(しゅっぱつ)の朝(あさ)、増藤(ますとう)さんが「ブエノスディアス」と挨拶(あいさつ)。行く(いく)ことのプレッシャーでなかなか、その挨拶(あいさつ)が今(いま)まで出せ(だせ)なかった増藤(ますとう)さんであるが、出発(しゅっぱつ)の朝(あさ)は違った(ちがった)。小長谷(こながや)さんもおしゃれをして、プレッシャー顔(がお)ではない笑顔(えがお)で「おはよう」と挨拶(あいさつ)を交わした(かわした)。7時(じ)に下宿屋(げしゅくや)を出た(でた)。皆(みな)がわざわざ、見送って(みおくって)くれた。見送って(みおくって)もらったことに感激(かんげき)して、成田(なりた)までの間(あいだ)、そのことばかりに感銘(かんめい)を受けて(うけて)いた米田(よねだ)さん。
 成田(なりた)に到着(とうちゃく)、皆さん(みなさん)が着く(つく)のを待つ(まつ)。・・・出発(しゅっぱつ)!!
 
《4人(にん)の確認作業(かくにんさぎょう)(1)》
 大会会議中(たいかいかいぎちゅう)に、Aさんから「うちら(4人(にん))、日々(ひび)、何(なに)を自分(じぶん)たちが得た(えた)のか、感じた(かんじた)のか話そう(はなそう)よ」と提案(ていあん)があった。さっそく、夜(よる)に部屋(へや)で反省会(はんせいかい)(確認作業(かくにんさぎょう))を行った(おこなった)。それぞれが印象(いんしょう)に残った(のこった)ことを報告(ほうこく)しあった。
作業日(さぎょうび)(1):11月(がつ)7日(か) 夜(よる) 『感激(かんげき)の確認(かくにん)』
 ・・・びっくりしたこと(Cさん)・・・「兄弟(きょうだい)の多い(おおい)国(くに)では、兄弟全員(きょうだいぜんいん)が、学校(がっこう)に行けない(いけない)ので兄弟(きょうだい)の中(なか)から、学校(がっこう)に行く(いく)子ども(こども)をピックアップして、その子ども(こども)だけが学校(がっこう)に通う(かよう)現実(げんじつ)があること」。その議題(ぎだい)について、それぞれ思った(おもった)ことを話した(はなした)。「子ども(こども)をつくらなければいい」というCさんの意見(いけん)に対して(たいして)、出生前診断(しゅっせいまえしんだん)の話(はなし)に広がった(ひろがった)。Cさんは出生前診断(しゅっせいまえしんだん)の話(はなし)を始めて(はじめて)聞き(きき)、また驚いて(おどろいて)いた。お金(かね)がないから学校(がっこう)に行けない(いけない)。その地域(ちいき)は、貧乏(びんぼう)であること、なぜ、貧困状態(ひんこんじょうたい)なのか。日本(にほん)が貧乏(びんぼう)だったのは、なぜかと、自分(じぶん)たちの国(くに)と照らして(てらして)考えて(かんがえて)みることにした。「それは戦争(せんそう)だね」と。世界(せかい)でもまだ戦争(せんそう)がある。血(ち)が流れる(ながれる)のに、お金(かね)が飛んで(とんで)いく。それで学校(がっこう)に行けなく(いけなく)なる場合(ばあい)もある。みんなが通える(かよえる)ような社会(しゃかい)がいい。Cさんの感想(かんそう)から色々(いろいろ)なことに広がった(ひろがった)。
 他(ほか)にも、日本(にほん)の義務教育(ぎむきょういく)、海外(かいがい)の人(ひと)との接し方(せっしかた)や、仲間(なかま)との平等(びょうどう)とは何(なに)だろう、日本(にほん)の平等(びょうどう)って何だろう(なんだろう)といった話題(わだい)があがった。
 今日(きょう)の反省会(はんせいかい)では、自分(じぶん)たちの感じた(かんじた)ことの表現(ひょうげん)をする大切さ(たいせつさ)も確認(かくにん)しあった。出発前(しゅっぱつまえ)から、4人(にん)で議題(ぎだい)になっていた、「自分(じぶん)のことをどう表現(ひょうげん)するのか(人(ひと)へ報告(ほうこく)する方法(ほうほう)や気持ち(きもち))を学ぼう(まなぼう)」を行えた(おこなえた)日(ひ)であった。そして、明日(あした)からは、自分(じぶん)の表現方法(ひょうげんほうほう)を学ぶ(まなぶ)ためにも、一緒(いっしょ)に行動(こうどう)しない、自分(じぶん)だけの何か(なにか)を得る(える)ために、別々(べつべつ)の行動(こうどう)をとることを決めた(きめた)。
 
日本(にほん)のインフォメーション・センター
 
下宿屋(げしゅくや)のメンバー
 
作業日(さぎょうび)(2):11月(がつ)8日(か) 夜 『もう眠い(ねむい)』
 本日(ほんじつ)は、別行動(べつこうどう)の4人(にん)であった。アジアブース(今日(きょう)から3日間(みっかかん)、資料(しりょう)が展示(てんじ)される)にいた者(もの)、インフォメーション(全日本育成会(ぜんにほんいくせいかい))にいた者(もの)、会議(かいぎ)を聞いて(きいて)いた者(もの)、それぞれが自分(じぶん)の行きたい(いきたい)場所(ばしょ)にいた。今夜(こんや)の反省会(はんせいかい)(確認作業(かくにんさぎょう))では、それぞれがいた場所(ばしょ)で何(なに)があったか、何(なに)を得た(えた)のか報告(ほうこく)しあった。会議(かいぎ)に出て(でて)いたAさんとBさんは、聞いた(きいた)ことを、一生懸命(いっしょうけんめい)思い出して(おもいだして)、報告(ほうこく)しあった。
 ・・・AさんとBさんが会議(かいぎ)で聞いた(きいた)言葉(ことば)を言い合って(いいあって)、思い出した(おもいだした)こと(言葉(ことば))・・・貧困(ひんこん)(貧乏(びんぼう))。家族(かぞく)から見捨てられた(みすてられた)子ども(こども)。倉庫(そうこ)に入れられた(いれられた)子ども(こども)、話せない(はなせない)子ども(こども)は人間(にんげん)じゃない。死亡率(しぼうりつ)。エイズがある。一日(いちにち)1ドル以下(いか)の生活(せいかつ)。誰(だれ)からも排除(はいじょ)の状態(じょうたい)。80カ国(かこく)の障害者(しょうがいしゃ)の写真(しゃしん)。
 ひとつだけの会議(かいぎ)にしか出なかった(でなかった)Cさんは、出なかった(でなかった)ことに後ろ(うしろ)めたさがあるようで、なかなか言葉(ことば)が出なかった(でなかった)。しかし、なぜそれ(出なかった(でなかった)こと)を選択(せんたく)したのか問われ(とわれ)、答え(こたえ)を皆(みな)に伝えた(つたえた)。Cさんは、Aさんに「いいことだったんじゃないのかな」と言われ(いわれ)、にこやかに一日(いちにち)を振り(ふり)かえっていた。
 そんななか、この二日間(ふつかかん)、感激(かんげき)を大いに(おおいに)表して(あらわして)いるDさんは、何も(なにも)言わない(いわない)、と思ったら(おもったら)、ウトウトしていた。「Dさん、この会(かい)の言い(いい)だしっぺじゃん」と言われ(いわれ)ながら、少し(すこし)、攻められ(せめられ)、「発した(はっした)言葉(ことば)の自己責任(じこせきにん)ですね」と・・・かっこよく言う(いう)が・・・、そう言った(いった)だけのようで、すぐにウトウト・・・。「オレ、会議(かいぎ)寝てた(ねてた)から、分からない(わからない)」「オレ、寝坊(ねぼう)しました」「私(わたし)も眠い(ねむい)」と4人(にん)とも、眠い(ねむい)・・・。
 4人(にん)は、優等生(ゆうとうせい)をめざし、夜(よる)の会合(かいごう)を企画(きかく)したが、ここはメキシコ・・・のんびりいこうといった気持ち(きもち)の様子(ようす)の4人(にん)であった。
 その他(ほか)、話した(はなした)こと・・・
 分科会(ぶんかかい)で日本(にほん)の「ステージ」の報告(ほうこく)があった。わかりやすかった。
 夜(よる)に、メキシコの人(ひと)と交流(こうりゅう)した。賑やか(にぎやか)だった。日本(にほん)から持って(もって)いった梅干(うめぼし)をあげたら、辛そう(つらそう)だった。
 通訳(つうやく)が早くて(はやくて)聞き取る(ききとる)のが大変(たいへん)だった。
 白米(はくまい)が食べたい(たべたい)。
 自分(じぶん)たちが感じた(かんじた)こと何でも(なんでも)いいから話(はなし)をしよう。
 お金(かね)はないけど、必ず(かならず)必要(ひつよう)なことが人(ひと)にはある。それって「愛(あい)だ」って話(はなし)があった。愛(あい)がないから排除(はいじょ)があるって。
 日本(にほん)の人(ひと)が、車椅子(くるまいす)のメキシコ人(じん)にバイキングの食事(しょくじ)をよそっていた。言葉(ことば)は通じない(つうじない)けど、そういう助ける(たすける)のって偉い(えらい)と思った(おもった)。僕(ぼく)もそういうことをしたいと思った(おもった)。
 朝食(ちょうしょく)バイキングで、食べ物(たべもの)を多く(おおく)とったはいいが、食べられず(たべられず)に、この国(くに)のことを考えて(かんがえて)反省(はんせい)した。
 
マーティンと
 
確認作業中(かくにんさぎょうちゅう)
 
《4人(にん)のちょこっとエピソードのいくつか》
 行き(いき)の機内(きない)で、ウキウキの嬉しい(うれしい)足跡(あしあと)のようにスチュワーデスに名刺配り(めいしくばり)。時差(じさ)ぼけのせいか、コーヒーに塩(しお)を入れる(いれる)。カードキーを何度(なんど)も部屋(へや)に入れた(いれた)ままでオートロック。会議中(かいぎちゅう)のウトウト。ホテルの海(うみ)にラクダがいた。メキシコ交流会(こうりゅうかい)で自分(じぶん)の土産(みやげ)が人気(にんき)で、本来(ほんらい)のものでないものも欲しがられ(ほしがられ)、プレゼント。突然(とつぜん)、ホテルの従業員(じゅうぎょういん)が部屋(へや)に来て(きて)、朝食券(ちょうしょくけん)を捨てられそう(すてられそう)になった。深夜(しんや)に、眠い(ねむい)のに、バーに行き(いき)、現地(げんち)の人(ひと)たちと踊り(おどり)まくる。興奮(こうふん)して鼻血(はなぢ)。レストランのピアノで演奏(えんそう)。会議(かいぎ)で、貧困(ひんこん)について話(はなし)を聞いて(きいて)、想像(そうぞう)していたが、後半(こうはん)の観光地域(かんこうちいき)で、物乞い(ものごい)が居た(いた)ので貧しさ(まずしさ)を実感(じっかん)した。
 
ピラミッド観光(かんこう)
 
会議中の本人参加への配慮(2)
「3色カード」(プラスティック製・10cm×10cmの正方形)の配布と活用
使い方:参加者は、1枚を選んで手に持ち、発表者に見えるように見せることで、発表者とコミュニケーションをする。
 
赤カード 話す人が、難しい言葉を使った時
赤いカードを出されたら話す人は、より優しい言葉を探したり、本人が支援者から説明する時間を持てるように、発現を少しの間控えるようにする。
黄カード 早口でついていけない時。
話す人はスピードを落として話すことになる。
緑カード その話に同意できる、よく理解できる時。
緑のカードを出されたら、話す人はうれしい。ほかの人が見習うことができる。


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