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ポスターセッションでの本人参加(ほんにんさんか)
東京都知的障害者育成会(とうきょうとちてきしょうがいしゃいくせいかい) 高橋 香(たかはし かおり)
 
 今回(こんかい)で4回目(かいめ)の参加(さんか)となる世界会議(せかいかいぎ)。あまり馴染み(なじみ)のないメキシコという遠い国(とおいくに)での開催(かいさい)ということもあり東京都育成会(とうきょうといくせいかい)から参加(さんか)された方(かた)は6名(めい)でした。私自身(わたしじしん)は初めて(はじめて)の参加(さんか)で、いったいどのような流れ(ながれ)になるのか・・・不安(ふあん)を抱き(いだき)ながら説明会(せつめいかい)を始め(はじめ)ました。緊張(きんちょう)の面持ち(おももち)だった私(わたし)をよそに参加者(さんかしゃ)の皆(みな)さんは海外(かいがい)も世界会議(せかいかいぎ)も馴れて(なれて)いる方(かた)ばかりで余裕(よゆう)しゃくしゃく。今回(こんかい)はただ参加(さんか)するのではなく、自分達(じぶんたち)も何か(なにか)やりたい・・・説明会(せつめいかい)の帰り道(かえりみち)、駅(えき)までの道程(みちのり)で出て(でて)きた声(こえ)でした。「アカプルコは暑い(あつい)の?夏(なつ)なら浴衣(ゆかた)で盆踊り(ぼんおどり)もおもしろいね」「みんなで歌(うた)を歌う(うたう)のは?」「楽しい(たのしい)ことやりたいね」そんな話(はなし)で盛り上がり(もりあがり)ました。
 
カクテルパーティーでメキシコのみなさんと。気さく(きさく)に声(こえ)をかけてくださいました
 
 結局(けっきょく)全員(ぜんいん)で集まる(あつまる)機会(きかい)があまりもてないということで、一人一人(ひとりひとり)で出来る(できる)ことを考え(かんがえ)、自分(じぶん)の思い(おもい)を自分(じぶん)の言葉(ことば)で世界(せかい)の仲間(なかま)に伝える(つたえる)ことをテーマにポスターセッションでの参加(さんか)を試みる(こころみる)ことにしました。東京都育成会(とうきょうといくせいかい)からの参加(さんか)メンバーのほかにも全日本(ぜんにほん)のSさん、Kさんにもご参加(さんか)いただき、それぞれの今(いま)の生活(せいかつ)の紹介(しょうかい)、将来(しょうらい)の夢(ゆめ)、世界(せかい)の仲間(なかま)へのメッセージを出して(だして)もらいました。そして一番(いちばん)いい顔(かお)での写真(しゃしん)も。出来上がった(できあがった)ものは手作り感(てづくりかん)があふれすぎる(?)ポスターでしたが、メキシコでのお披露目(ひろめ)がちょっと楽しみ(たのしみ)な出来栄え(できばえ)になりました。
 
展示中(てんじちゅう)の嶋津(しまづ)さん(このあと転んで(ころんで)大惨事(だいさんじ))
 
展示中(てんじちゅう)のポスターの前(まえ)で、期待(きたい)にわくわく
 
 そして迎えた(むかえた)展示(てんじ)の日(ひ)は早朝(そうちょう)の集合(しゅうごう)にもかかわらず全員(ぜんいん)が手伝い(てつだい)に来て(きて)くださいました。ボードの位置(いち)や数(かず)がなかなかはっきりしなかったり、展示中(てんじちゅう)転んで(ころんで)ボードをはずしてしまったりハプニングはありましたがどうにか無事(ぶじ)に準備(じゅんび)を終え(おえ)ました。周り(まわり)には色々(いろいろ)な国(くに)の発表(はっぴょう)ブースがあり、皆(みな)さんも見学(けんがく)して資料(しりょう)を頂いたり(いただいたり)、触れたり(ふれたり)することで刺激(しげき)を受けた(うけた)様子(ようす)でした。「ゆうあい会(かい)は資金(しきん)が少ない(すくない)ので活動(かつどう)に制限(せいげん)があり難しい(むずかしい)けど、自分(じぶん)たちで何か(なにか)作って(つくって)売る(うる)とか・・・お金(かね)を待って(もって)いるだけではなく稼ぐ(かせぐ)ことも考えたい・・・来年度(らいねんど)の活動(かつどう)にサークル活動(かつどう)を提案(ていあん)し、それで何か(なにか)を作って(つくって)資金作り(しきんづくり)ができるよう提案(ていあん)してみますよ!」Tさんはそんなことを感じた(かんじた)ようでした。Mさんは仲間(なかま)の展示(てんじ)を見て(みて)、自分(じぶん)と同じ(おなじ)年頃(としごろ)の方(かた)が一人暮らし(ひとりぐらし)をしていることに驚き(おどろき)、話し(はなし)を聞いて(きいて)みたいと思った(おもった)ようです。食事(しょくじ)の場(ば)や、会場(かいじょう)でのちょっとした合間(あいま)のやりとりがご本人同士(ほんにんどうし)にとっても何か(なにか)を感じ(かんじ)られる時間(じかん)となっていました。市内(しない)の観光(かんこう)で、バスの車窓(しゃそう)の景色(けしき)からも色々(いろいろ)なことを感じ(かんじ)それを言葉(ことば)にして伝える(つたえる)ことが楽しい(たのしい)と皆さん(みなさん)の顔つき(かおつき)で感じる(かんじる)ことができました。
 
ひとりひとりの写真(しゃしん)とコメントをポスターに
 
日本(にほん)からの発表(はっぴょう)ブース
 
 会議(かいぎ)の大きな(おおきな)テーマとは離れて(はなれて)しまったかもしれませんが、世界(せかい)を感じる(かんじる)ことができたことで日本(にほん)の文化(ぶんか)や福祉(ふくし)の考え方(かんがえかた)を再確認(さいにんしき)する機会(きかい)になりました。それぞれの国(くに)のもつ文化(ぶんか)や生活習慣(せいかつしゅうかん)、宗教(しゅうきょう)の壁(かべ)はそう簡単(かんたん)に取り除ける(とりのぞける)ものではありません。しかし障害(しょうがい)や性別(せいべつ)、人種(じんしゅ)などで差別(さべつ)することなくお互い(たがい)を尊重(そんちょう)し大切(たいせつ)にする気持ち(きもち)は世界共通(せかいきょうつう)だと感じ(かんじ)ました。私(わたし)たちが日頃(ひごろ)行って(おこなって)いる支援(しえん)はこの点(てん)でとても大切(たいせつ)なことを担って(になって)いると再確認(さいかくにん)しました。今回(こんかい)みなさんが感じた(かんじた)ことで出て(でて)きたそれぞれの声(こえ)(意見(いけん))を実現(じつげん)する支援(しえん)が参加者(さんかしゃ)としてこれからの残された(のこされた)仕事(しごと)であると認識(にんしき)しています。常に(つねに)ご本人(ほんにん)の声(こえ)に耳(みみ)を傾け(かたむけ)、誰もが(だれもが)変らない(かわらない)生活(せいかつ)を営める(いとなめる)ことの重要さ(じゅうようさ)を改めて(あらためて)感じた(かんじた)大会(たいかい)でした。
 展示中(てんじちゅう)、アメリカからの参加者(さんかしゃ)が私(わたし)たちのポスターをじっとみつめ「ナイスプレゼンテーション!」と声(こえ)をかけてくれました。そのことを伝えた時(つたえたとき)、次回(じかい)はもっと多く(おおく)の人(ひと)に見て(みて)もらえるよう準備(じゅんび)して頑張り(がんばり)ましょうという声(こえ)もあがりましたし、本当(ほんとう)に良かった(よかった)という思い(おもい)がこみあげました。成田(なりた)で解散(かいさん)の時(とき)「また4年後(よねんご)、ドイツに一緒(いっしょ)に行き(いき)ましょう!」とSさんが笑顔(えがお)で声(こえ)をかけてくれましたがその時(とき)は疲れた(つかれた)顔(かお)で「そうですね・・・」と生返事(なまへんじ)をしていた私(わたし)です。しかし時間(じかん)がたつにつれ、また皆さん(みなさん)と参加(さんか)したい、次回(じかい)はもっといい発表(はっぴょう)ができるようにしたいと小さな(ちいさな)意欲(いよく)が湧いて(わいて)まいりました。今(いま)、職場(しょくば)の机(つくえ)の上(うえ)にはアカプルコで撮った(とった)みなさんの最高(さいこう)の笑顔(えがお)の写真(しゃしん)が飾られて(かざられて)います。
 
アカプルコ最後(さいご)の朝(あさ)、それぞれの思い(おもい)を胸(むね)に、いい笑顔(えがお)


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