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国際育成会連盟(こくさいいくせいかいれんめい)の組織(そしき)と方針(ほうしん)
国際育成会連盟(こくさいいくせいかいれんめい)理事(りじ)・全日本(ぜんにほん)手(て)をつなぐ育成会(いくせいかい)国際活動(こくさいかつどう)委員長(いいんちょう)
長瀬 修(ながせ おさむ)
●国際育成会連盟(こくさいいくせいかいれんめい)(インクルージョン・インターナショナル)とは?
 1960年(ねん)に設立(せつりつ)された国際育成会連盟(こくさいいくせいかいれんめい)は知的障害者(ちてきしょうがいしゃ)の人権(じんけん)を擁護(ようご)することを目的(もくてき)とした国際的(こくさいてき)な非政府組織(ひせいふそしき)(NGO)です。国際育成会連盟(こくさいいくせいかいれんめい)は、家族(かぞく)を基盤(きばん)とした組織(そしき)として、知的障害者(ちてきしょうがいしゃ)、知的障害者(ちてきしょうがいしゃ)の家族(かぞく)、知的障害分野(ちてきしょうがいぶんや)の専門家(せんもんか)の3者(しゃ)から主(おも)に構成(こうせい)されていて、115カ国(こく)の200以上(いじょう)の組織(そしき)が加入(かにゅう)しています。
 国連(こくれん)では、協議(きょうぎ)資格(しかく)を持ち(もち)、障害分野(しょうがいぶんや)の世界(せかい)の組織(そしき)の連合体(れんごうたい)である、国際障害同盟(こくさいしょうがいどうめい)(IDA)の当初(とうしょ)からの有力(ゆうりょく)なメンバーです。
 国際育成会連盟(こくさいいくせいかいれんめい)は世界(せかい)を中東(ちゅうとう)・北(きた)アフリカ・ヨーロッパ・アフリカ・インド洋(よう)・米州(べいしゅう)・アジア太平洋(たいへいよう)の5つの地域(ちいき)に分け(わけ)て活動(かつどう)しています。
 設立当初(せつりつとうしょ)は、知的障害者(ちてきしょうがいしゃ)本人(ほんにん)の参加(さんか)はありませんでしたが、現在(げんざい)は全部(ぜんぶ)で14名(めい)の理事(りじ)のうち、5名(めい)は知的障害者(ちてきしょうがいしゃ)本人(ほんにん)が理事(りじ)を務め(つとめ)ています。各地域(かくちいき)から必ず(かならず)1名(めい)ずつ、本人理事(ほんにんりじ)が出る(でる)ように、メキシコの総会(そうかい)で決まり(きまり)ました。アジア太平洋(たいへいよう)からは、ニュージーランドのロバート・マーティンさんが本人理事(ほんにんりじ)として努め(つとめ)ています。
●国連(こくれん)障害者(しょうがいしゃ)の権利条約(けんりじょうやく)
 国際育成会連盟(こくさいいくせいかいれんめい)がここ数年(すうねん)、その活動(かつどう)として力(ちから)を注いで(そそいで)きたのが、国連(こくれん)障害者(しょうがいしゃ)の権利条約(けんりじょうやく)です。
 メキシコの大会(たいかい)が終わった(おわった)翌月(よくげつ)の12月(がつ)13日(にち)に国連総会(こくれんそうかい)は、障害者(しょうがいしゃ)の権利(けんり)を採択(さいたく)しました。最初(さいしょ)に提案(ていあん)されてから20年(ねん)かかってようやく、国際社会(こくさいしゃかい)は、障害者(しょうがいしゃ)の権利(けんり)を守る(まもる)ための国際条約(こくさいじょうやく)を作った(つくった)のです。
 世界会議(せかいかいぎ)の開会式(かいかいしき)に出席(しゅっせき)されたメキシコのヴィセンテ・フォックス大統領(だいとうりょう)が2001年(ねん)の国連総会(こくれんそうかい)で提案(ていあん)をして、2002年(ねん)から条約(じょうやく)を作る(つくる)ための議論(ぎろん)が始まり(はじまり)ました。国際育成会連盟(こくさいいくせいかいれんめい)は国連(こくれん)でのその議論(ぎろん)に最初(さいしょ)から積極的(せっきょくてき)に参加(さんか)してきました。前(まえ)に述べた(のべた)ロバート・マーティンさんが国際育成会連盟(こくさいいくせいかいれんめい)を代表(だいひょう)して重要(じゅうよう)な発言(はつげん)を何度(なんど)も行い(おこない)ました。
 国際育成会連盟(こくさいいくせいかいれんめい)の観点(かんてん)からこの条約(じょうやく)で知的障害者(ちてきしょうがいしゃ)に特(とく)に重要(じゅうよう)なのは、地域社会(ちいきしゃかい)で生活(せいかつ)する権利(けんり)を認め(みとめ)た第(だい)19条(じょう)、インクルーシヴ教育(きょういく)を認め(みとめ)た第(だい)24条(じょう)、知的障害者(ちてきしょうがいしゃ)の法的権利(ほうてきけんり)を認め(みとめ)た第(だい)12条(じょう)、そして、障害者(しょうがいしゃ)の権利(けんり)を保障(ほしょう)するための家族(かぞく)への支援(しえん)を認め(みとめ)た前文(ぜんぶん)(X)です。
 
国連(こくれん)で発言(はつげん)するロバート・マーティン理事(りじ)
 
●貧困(ひんこん)と障害(しょうがい)プロジェクト
 障害者(しょうがいしゃ)の権利条約(けんりじょうやく)に加え(くわえ)て、国際育成会連盟(こくさいいくせいかいれんめい)が重要(じゅうよう)なテーマとして取り(とり)組んで(くんで)いるのが、貧困(ひんこん)と障害(しょうがい)の関係(かんけい)です。
 国連(こくれん)は、2015年(ねん)までに世界(せかい)の貧困(ひんこん)を半減(はんげん)させる試み(こころみ)をミレニアム開発目標(かいはつもくひょう)として掲げて(かかげて)います。国際育成会連盟(こくさいいくせいかいれんめい)はこの目標(もくひょう)を知的障害分野(ちてきしょうがいぶんや)でも実現(じつげん)しようと努力(どりょく)しています。
 その努力(どりょく)の一環(いっかん)として、ノルウェーの育成会(いくせいかい)(NFU)がノルウェーの政府開発援助(せいふかいはつえんじょ)の資金(しきん)を獲得(かくとく)して、世界(せかい)の知的障害(ちてきしょうがい)と貧困(ひんこん)に関する(かんする)研究(けんきゅう)とセミナーを各地域(かくちいき)で実施(じっし)しました。
 当初(とうしょ)、アジア太平洋地域(たいへいようちいき)は対象(たいしょう)になっていなかったのですが、昨年(さくねん)10月(がつ)14日(日)・15日(にち)にタイのバンコクでアジア太平洋(たいへいよう)の知的障害(ちてきしょうがい)と貧困(ひんこん)に関する(かんする)小規模(しょうきぼ)な会合(かいごう)を開く(ひらく)ことができました。
 こうした世界各地(せかいかくち)の取り組み(とりくみ)をもとに、「私(わたし)たちの声(こえ)に耳(みみ)を傾けて(かたむけて)ください」“Hear Our Voices”という世界(せかい)の知的障害(ちてきしょうがい)と貧困(ひんこん)に関する(かんする)報告書(ほうこくしょ)がメキシコ大会(たいかい)で公表(こうひょう)されています。英文(えいぶん)ですが、
 http://www.e.u-tokyo.ac.jp/~nagaseo/HearOurVoices+book.pdfからダウンロードできます。
 
国際育成会連盟(こくさいいくせいかいれんめい)I.I(インクルージョン・インターナショナル)メキシコ会議(かいぎ)の意義(いぎ)
インクルージョン社会(しゃかい)にむけて 親(おや)の会(かい)の役割(やくわり)
全日本(ぜんにほん)手(て)をつなぐ育成会(いくせいかい)
国際活動担当理事(こくさいかつどうたんとうりじ)
武居 光(たけい こう)
 
 メキシコ会議(かいぎ)の意義(いぎ)は、これからの親(おや)の会(かい)が果たす(はたす)べき課題(かだい)が示され(しめされ)たことにありました。それはインクルージョン社会(しゃかい)にむけて、
(1)貧困(ひんこん)の解決(かいけつ)
(2)親(おや)・きょうだい・本人(ほんにん)による社会変革(しゃかいへんかく)
(3)本人参加(ほんにんさんか)
の3点(てん)です。
●インクルージョン社会(しゃかい)は、貧困問題(ひんこんもんだい)の解決(かいけつ)から
 冷戦後(れいせんご)世界中(せかいじゅう)に市場経済(しじょうけいざい)の自由化(じゆうか)(グローバリゼーション)が広まり(ひろまり)ましたが、各国間(かっこくかん)(あるいは国民間(こくみんかん))の経済(けいざい)・福祉(ふくし)格差(かくさ)は広がる(ひろがる)傾向(けいこう)にあります。
 国際連合(こくさいれんごう)は「2015年(ねん)までに世界(せかい)の貧困(ひんこん)を解決(かいけつ)するための緊急(きんきゅう)プロジェクト」を開始(かいし)し、例えば(たとえば)先進諸国(せんしんしょこく)に「アフリカ諸国(しょこく)に対する(たいする)巨額(きょがく)の債務放棄(さいむほうき)」を提言(ていげん)するなど、大胆(だいたん)な政策(せいさく)勧告(かんこく)を行って(おこなって)います。
 I.Iは以前(いぜん)にも増して(まして)、こうした国連(こくれん)の取り組み(とりくみ)と歩調(ほちょう)をあわせています。
 I.Iが、声(こえ)も上げ(あげ)られぬほど過酷(かこく)な状況(じょうきょう)に置かれ(おかれ)ている知的障害者(ちてきしょうがいしゃ)とその家族(かぞく)の代弁者(だいべんしゃ)として世界各国政府(せかいかっこくせいふ)への影響力(えいきょうりょく)を強めて(つよめて)いこうとするとき、国連(こくれん)との連携(れんけい)は現実的(げんじつてき)な選択(せんたく)です。
 I.Iは、この世界会議(せかいかいぎ)に間に合わせる(まにあわせる)ため、大変(たいへん)な努力(どりょく)を払い(はらい)、世界(せかい)の5地域(ちいき)で「知的障害(ちてきしょうがい)と貧困(ひんこん)の関係(かんけい)」を調査(ちょうさ)し、膨大(ぼうだい)な数(かず)の親(おや)たちの声(こえ)を集め(あつめ)ました(このプロジェクトにノルウェーの親(おや)の会(かい)が多額(たがく)の資金提供(しきんていきょう)をしていることが、各国(かっこく)から高く(たかく)評価(ひょうか)されました)。
 
収集資料(しゅうしゅうしりょう)の中(なか)から
 
調査結果(ちょうさけっか)を要約(ようやく)すると、
 
*知的障害児者(ちてきしょうがいじしゃ)とその家族(かぞく)はどのような社会(しゃかい)においても、社会的援助(しゃかいてきえんじょ)がなければ最貧困層(さいひんこんそう)に置かれ(おかれ)る可能性(かのうせい)が高い(たかい)こと。
*介護負担(かいごふたん)を背負う(せおう)障害児家族(しょうがいじかぞく)の経済状態(けいざいじょうたい)は多く(おおく)の場合(ばあい)、イギリスにおいてもメキシコにおいても貧困層(ひんこんそう)に属し(ぞくし)ていること。
*貧困(ひんこん)は社会的排除(しゃかいてきはいじょ)(エクスクルージョン)をもたらし、社会的排除(しゃかいてきはいじょ)はさらなる貧困(ひんこん)を生む(うむ)メカニズムがあること。
*このような社会(しゃかい)では親(おや)や本人(ほんにん)はあわれみの対象(たいしょう)であって政策提案者(せいさくていあんしゃ)ではないこと。
*知的障害児者(ちてきしょうがいじしゃ)とその家族(かぞく)の社会的統合(しゃかいてきとうごう)(インクルージョン)を推進(すいしん)するとき、まず彼(かれ)らを貧困(ひんこん)から解放(かいほう)する政策(せいさく)が何(なに)より重要(じゅうよう)であること。
 
です。
 I.Iはこの世界会議(せかいかいぎ)での各国(かっこく)の親(おや)の会(かい)の合意(ごうい)を出発点(しゅっぱつてん)に、今後(こんご)、上記(じょうき)の問題解決(もんだいかいけつ)を求め(もとめ)て、各国政府(かっこくせいふ)に強い(つよい)働き(はたらき)かけを始め(はじめ)ることになりました。
●親(おや)・きょうだい・本人(ほんにん)は、施し(ほどこし)の対象(たいしょう)でなく「公正(こうせい)な社会(しゃかい)」の提案者(ていあんしゃ)である
 会議(かいぎ)には、主催国(しゅさいこく)のメキシコ大統領(だいとうりょう)、隣国(りんごく)のパナマ大統領夫妻(だいとうりょうふさい)らがそろって登壇(とうだん)しましたが、主催国(しゅさいこく)・近隣国(きんりんこく)の大統領(だいとうりょう)たちが政治的(せいじてき)なリーダーとして、以下(いか)のような重要(じゅうよう)なメッセージを発信(はっしん)したことは、世界会議(せかいかいぎ)の歴史(れきし)の中(なか)でも大きな(おおきな)出来事(できごと)です。
 
 フォックス・メキシコ大統領(だいとうりょう)「私(わたし)は、障害者(しょうがいしゃ)が不当(ふとう)に扱われ(あつかわれ)ることを受け入れ(うけいれ)ることはできません。政権中(せいけんちゅう)、私(わたし)は、家族(かぞく)の取り組み(とりくみ)、親(おや)の会(かい)のとりくみを支え(ささえ)てきました。彼(かれ)らが前進(ぜんしん)していこうという姿勢(しせい)は、我々(われわれ)の励み(はげみ)であり、手本(てほん)になるからです。本人(ほんにん)や家族(かぞく)は、人生(じんせい)の本当(ほんとう)の価値(かち)を教え(おしえ)てくれるし、隣人愛(りんじんあい)についても教え(おしえ)てくれます。みなさんこそが社会(しゃかい)を変え(かえ)る原動力(げんどうりょく)なのです」
 
メキシコ大統領(だいとうりょう)と握手(あくしゅ)をする藤原理事長(ふじわらりじちょう)
 
 ビビアン・トリフォス・パナマ大統領夫人(だいとうりょうふじん)「私(わたし)たちは、目(め)の前(まえ)の貧困(ひんこん)と戦う(たたかう)ことに熱心(ねっしん)になるばかりで、その構造的問題(こうぞうてきもんだい)に充分(じゅうぶん)迫る(せまる)ことができないできました。しかし貧困(ひんこん)は社会的排除(しゃかいてきはいじょ)の結果(けっか)なのです。現在(げんざい)の支配的(しはいてき)なスキームが続く(つづく)かぎり、これは続いて(つづいて)いきます。パナマにおいて、知的障害者(ちてきしょうがいしゃ)は目(め)に見え(みえ)ない問題(もんだい)でした。そのため彼(かれ)らは、社会的(しゃかいてき)な援助(えんじょ)を受ける(うける)ことができませんでした。大統領(だいとうりょう)は、障害者(しょうがいしゃ)との対話(たいわ)を優先(ゆうせん)するようにしてきました。そのなかで政治上(せいじじょう)の努力(どりょく)をしていくという方針(ほうしん)をもち、現在(げんざい)までにかなりの成果(せいか)をあげています。私(わたし)たちは、偏見(へんけん)、哀れみ(あわれみ)、誤解(ごかい)、施し(ほどこし)を与える(あたえる)態度(たいど)と戦って(たたかって)きました。家族(かぞく)は施し(ほどこし)を求め(もとめ)ていません。親(おや)たちは、自分(じぶん)たちの権利(けんり)を求め(もとめ)ている人(ひと)たちなのです。」
 
 この発言(はつげん)が各国(かっこく)(特(とく)に途上国(とじょうこく))の政治(せいじ)リーダーに真摯(しんし)に受け止め(うけとめ)られるなら、親(おや)の会(かい)や本人活動(ほんにんかつどう)の位置(いち)づけは、世界各地(せかいかくち)で大きく(おおきく)進展(しんてん)する可能性(かのうせい)があります。
 
ジュディー・ヒューマン(右(みぎ))と一緒(いっしょ)に
 
●本人(ほんにん)の参加(さんか)〜新た(あらた)な地域(ちいき)からの参加(さんか)、親(おや)との連帯(れんたい)
 これまでの世界会議(せかいかいぎ)に参加(さんか)する本人(ほんにん)たちは、スウェーデン、デンマーク、イギリス、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアなど、どちらかといえば先進国(せんしんこく)の本人活動(ほんにんかつどう)グループのリーダーたちでした。
 ところが今回(こんかい)はアフリカ、中南米(ちゅうなんべい)、中近東(ちゅうきんとう)、アジアなどの本人(ほんにん)たちが活発(かっぱつ)に発言(はつげん)していたことが非常(ひじょう)に印象的(いんしょうてき)でした。本人参加(ほんにんさんか)も親(おや)の会(かい)同様(どうよう)、地球規模(ちきゅうきぼ)にしていこうという方向(ほうこう)で動いて(うごいて)いることがひしひしと伝わって(つたわって)きました。
 その背景(はいけい)には、彼(かれ)らが世界(せかい)5地域(ちいき)からI.Iに理事(りじ)として迎え入れ(むかえいれ)られ、特(とく)に「障害者(しょうがいしゃ)の権利条約(けんりじょうやく)」制定作業(せいていさぎょう)に関わって(かかわって)きた経過(けいか)がありました。I.Iの本人理事(ほんにんりじ)任命(にんめい)の決断(けつだん)と、彼(かれ)らとの共同作業(きょうどうさぎょう)の丁寧(ていねい)さには、頭(あたま)が下が(さがる)る思い(おもい)がしました。見習わなくて(みならわなくて)はなりません。
 さらに、この地球規模(ちきゅうきぼ)の広がり(ひろがり)の中(なか)で、日本(にほん)の本人(ほんにん)(赤木祐子(あかきゆうこ)さん、小池美希(こいけみき)さん、支援者(しえんしゃ)花崎三千子(はなざきみちこ)さん)が初めて(はじめて)正式(せいしき)なプレゼンテーションを行い(おこない)、これが各国(かっこく)の非常(ひじょう)に高い(たかい)評価(ひょうか)を得て(えて)、会議期間中(かいぎきかんちゅう)に日本人(にほんじん)としてはじめて世界会議(せかいかいぎ)の「決議文(けつぎぶん)」作成参加(さくせいさんか)も要請(ようせい)され、その役割(やくわり)を果たす(はたす)ことができました。
 一方(いっぽう)、積極的(せっきょくてき)に親(おや)の会(かい)への本人参加(ほんにんさんか)をすすめているI.I欧州連合(おうしゅうれんごう)からは、初日(しょにち)の会議(かいぎ)の冒頭(ぼうとう)で各国(かっこく)の親(おや)の会(かい)にむけて「あらゆる場面(ばめん)での本人参加(ほんにんさんか)をすすめるにはまず親(おや)の会(かい)が努力(どりょく)しましょう」と強い(つよい)提案(ていあん)がなされました。本人同士(ほんにんどうし)の連帯(れんたい)だけでなく、親(おや)と本人(ほんにん)とが強い(つよい)連帯(れんたい)を作ろう(つくろう)ということです。会議最終日(かいぎさいしゅうび)には、
 
・入所施設(にゅうしょしせつ)をなくしていこう
・家族(かぞく)を支援(しえん)しよう
・インクルーシヴ教育(きょういく)をすすめよう
・出生前診断(しゅっせいまえしんだん)と堕胎(だたい)を禁止(きんし)しよう・・・
 
 このような大会決議(たいかいけつぎ)がされましたが、この明確(めいかく)さと力強さ(ちからづよさ)こそ、親(おや)が本人(ほんにん)との共同作業(きょうどうさぎょう)を経て(へて)達成(たっせい)したビジョンといえるでしょう。
 
●まとめ
 会議(かいぎ)で共有(きょうゆう)された基本的(きほんてき)なビジョンで、日本(にほん)の親(おや)の会(かい)や関係者(かんけいしゃ)にとって参考(さんこう)になることを以下(いか)の5点(てん)にまとめてみました。国際的(こくさいてき)な指針(ししん)として、参考(さんこう)にしていただければと思い(おもい)ます。
 
(1)当事者(とうじしゃ)には、当事者(とうじしゃ)であるがゆえに「Society for all」(みんなのための社会(しゃかい))を構想(こうそう)する力(ちから)がある。
(2)つまり親(おや)・きょうだい・本人(ほんにん)は援助(えんじょ)の対象(たいしょう)だけでなく、為政者(いせいしゃ)や専門家(せんもんか)にとって社会改革(しゃかいかいかく)のパートナーである。
(3)しかし現実(げんじつ)のさまざまな社会的排除(しゃかいてきはいじょ)が、彼(かれ)らの潜在的(せんざいてき)な力(ちから)を弱めて(よわめて)いる。
(4)したがって、あらゆる局面(きょくめん)におけるインクルージョン(排除(はいじょ)の克服(こくふく))が、解決(かいけつ)の土台(どだい)になる。
(5)社会制度(しゃかいせいど)の中(なか)で計画(けいかく)され実施(じっし)されるサービスは、単(たん)なる個人消費(こじんしょうひ)の「商品(しょうひん)」ではなく、公正(こうせい)な社会秩序(しゃかいちつじょ)を維持(いじ)・発展(はってん)させるための「社会的手段(しゃかいてきしゅだん)」と位置(いち)づける必要(ひつよう)がある。
 
最終日(さいしゅうび)の会議(かいぎ)のまとめの発表(はっぴょう)をする世界(せかい)の本人(ほんにん)たち


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