日本財団 図書館


日本財団 知的障害者海外研修(にっぽんざいだん ちてきしょうがいしゃかいがいけんしゅう)サポート事業(じぎょう)
第(だい)14回(かい)国際育成会連盟世界会議(こくさいいくせいかいれんめいせかいかいぎ)メキシコ大会(たいかい)
ともに生きる(いきる)未来(みらい)を創ろう(つくろう)!
―公平(こうへい)な世界(せかい)をめざして―
社会福祉法人(しゃかいふくしほうじん)全日本(ぜんにほん)手(て)をつなぐ育成会(いくせいかい)
 
1. はじめに
世界(せかい)に翔け(はばたけ)!
全日本(ぜんにほん)手(て)をつなぐ育成会(いくせいかい)
理事長(りじちょう) 藤原 治(ふじわら おさむ)
 2006年(ねん)11月(がつ)6日(か)から13日(にち)にかけて国際育成会連盟世界会議(こくさいいくせいかいれんめいせかいかいぎ)メキシコ大会(たいかい)(アカプルコ)に本人(ほんにん)20人(にん)を含む(ふくむ)総勢(そうぜい)74人(にん)で参加(さんか)してきました。今回(こんかい)の参加国(さんかこく)は57ヵ国(こく)で中南米(ちゅうなんべい)が中心(ちゅうしん)でした。
 私(わたし)の心(こころ)に残った(のこった)ことはメキシコ大統領夫妻(だいとうりょうふさい)とパナマ大統領夫妻(だいとうりょうふさい)の出席(しゅっせき)でした。そして4人(にん)の登場(とうじょう)には会場(かいじょう)から熱狂的(ねっきょうてき)な拍手(はくしゅ)と歓声(かんせい)が上がった(あがった)ことです。メキシコ大統領(だいとうりょう)のあいさつではメキシコが国連(こくれん)の障害者(しょうがいしゃ)の権利条約(けんりじょうやく)の提案国(ていあんこく)であり、“障害者福祉(しょうがいしゃふくし)に大変(たいへん)関心(かんしん)が深く(ふかく)、自ら(みずから)の政策(せいさく)の基本(きほん)である”と述べ(のべ)られました。パナマ大統領(だいとうりょう)にはびっくりしました。“知的障害者(ちてきしょうがいしゃ)の親(おや)である”と自分(じぶん)の口(くち)から述べ(のべ)られ、“私(わたし)は大統領(だいとうりょう)になる前(まえ)から育成会運動(いくせいかいうんどう)に参加(さんか)していた”と。そして夫人(ふじん)はオープニングの基調講演(きちょうこうえん)をされ“貧困(ひんこん)の撲滅(ぼくめつ)と社会(しゃかい)からの排除(はいじょ)への挑戦(ちょうせん)こそ障害者問題(しょうがいしゃもんだい)の重要課題(じゅうようかだい)である。そして乳幼児期(にゅうようじき)の栄養不良(えいようふりょう)が脳(のう)の発達(はったつ)を阻害(そがい)している。貧困(ひんこん)の撲滅(ぼくめつ)と社会(しゃかい)が私(わたし)たちを排除(はいじょ)していることに挑戦(ちょうせん)する”と力強く(つからづよく)発表(はっぴょう)されました。
 日本(にほん)の本人(ほんにん)の発表(はっぴょう)はパワーポイントを使って(つかって)の本人活動(ほんにんかつどう)と情報発信(じょうほうはっしん)(ステージ)で、これは各国(かっこく)の参加者(さんかしゃ)に大きな(おおきな)衝撃(しょうげき)と感動(かんどう)を与え(あたえ)、発表後(はっぴょうご)も多く(おおく)の質問(しつもん)を受け(うけ)我国(わがくに)の面目(めんぼく)を施し(ほどこし)ました。
 楽しい(たのしい)こともありました。その第一(だいいち)は11月(がつ)8日(か)のメキシコの親(おや)と本人(ほんにん)たちとの交流会(こうりゅうかい)です。日本(にほん)の育成会(いくせいかい)の本人活動(ほんにんかつどう)、そして夢(ゆめ)などに質問(しつもん)が集中(しゅうちゅう)しました。今回(こんかい)の世界会議(せかいかいぎ)では我国(わがくに)の進み(すすみ)具合(ぐあい)が評価(ひょうか)されたようです。第二(だいに)は11月(がつ)9日(か)に副島(そえじま)副理事長(ふくりじちょう)と松友(まつとも)常務理事(じょうむりじ)と3人(にん)でアカプルコの街(まち)を散策(さんさく)しました。堅固(けんご)な壁(かべ)の中(なか)から元気(げんき)のよい子(こ)どもたちの声(こえ)が聞こえ(きこえ)ます。興味深く(きょうみぶかく)門(もん)から恐る(おそる)恐る(おそる)入って(はいって)みると、そこは万国(ばんこく)共通(きょうつう)で子(こ)どもたちは初めて(はじめて)見る(みる)日本人(にほんじん)に興味(きょうみ)を持って(もって)集まって(あつまって)きました。その中(なか)の勇気(ゆうき)ある子(こ)どもが話(はなし)かけたり握手(あくしゅ)を求め(もとめ)てきました。ここは国際通(こくさいつう)の松友(まつとも)常務(じょうむ)のすばらしい英語(えいご)で愉快(ゆかい)な会話(かいわ)で花(はな)が咲き(さき)ました。街中(まちなか)の侘びしい(わびしい)喫茶店(きっさてん)に入り(はいり)コーヒーを楽しみ(たのしみ)ながら女店主(おんなてんしゅ)と話(はなし)をする中(なか)でメキシコの市民生活(しみんせいかつ)を感じ(かんじ)ました。その夜(よる)はアジア会議(かいぎ)をしました。来年(らいねん)(2007)台湾(たいわん)大会(たいかい)を成功(せいこう)させようと決議(けつぎ)しましたが参加国(さんかこく)は少なく(すくなく)淋しい(さびしい)思い(おもい)でした。10日(か)朝(あさ)は国際育成会連盟(こくさいいくせいかいれんめい)のダイアン・リッチラー会長(かいちょう)(カナダ)との朝食会(ちょうしょくかい)に日本(にほん)のスタッフ(副島(そえじま)・金子(かねこ)・松友(まつとも)・長瀬(ながせ)・武居(たけい)・吉川(よしかわ)・袖山(そでやま))と共(とも)に参加(さんか)し、国際育成会連盟(こくさいいくせいかいれんめい)のことを勉強(べんきょう)すると同時(どうじ)に全日本育成会(ぜんにほんいくせいかい)に対する(たいする)期待(きたい)の大きさ(おおきさ)を実感(じっかん)しました。研修(けんしゅう)と交流(こうりゅう)の4日(か)間(かん)を終え(おえ)最後(さいご)の一日(いちにち)は世界遺産(せかいいさん)のテォティワカン遺跡(いせき)(石(いし)のピラミッドと死者(ししゃ)の道(みち))を見学(けんがく)して、都合(つごう)8日(か)間(かん)の世界会議(せかいかいぎ)を終え(おえ)ました。
 最後(さいご)に私(わたし)の感想(かんそう)ですが、障害者自立支援法(しょうがいしゃじりつしえんほう)の施行(しこう)に伴い(ともない)利用者(りようしゃ)として大変(たいへん)であり、もっともっと福祉(ふくし)をと言う(いう)声(こえ)を認め(みとめ)ながら世界(せかい)を見れば(みれば)貧しい(まずしい)国(くに)が多い(おおい)ことに気(き)づきます。我国(わがくに)も第(だい)2次(じ)世界大戦(せかいたいせん)の敗戦後(はいせんご)、餓死者(がししゃ)が何万人(なんまんにん)と出る(でる)と言われ(いわれ)ながら救援物資(きゅうえんぶっし)その他(ほか)の援助(えんじょ)を受け(うけ)、餓死者(がししゃ)も出ず(でず)復旧(ふっきゅう)・復興(ふっこう)し現在(げんざい)があります。救い(すくい)の手(て)を待つ(まつ)国(くに)があるならば我国(わがくに)として応分(おうぶん)の手(て)を差し(さし)伸べる(のべる)ときにあると感じ(かんじ)ます。全日本育成会(ぜんにほんいくせいかい)としても国際連盟(こくさいれんめい)の理事(りじ)として長瀬氏(ながせし)を派遣(はけん)しており応分(おうぶん)の貢献(こうけん)をしたいものと考え(かんがえ)ています。2007年(ねん)11月(がつ)18日(にち)より台湾(たいわん)でアジア会議(かいぎ)が開かれ(ひらかれ)ます。育成会(いくせいかい)としても大勢(おおぜい)の参加(さんか)をしたいものです。
 終わり(おわり)に、ご支援(しえん)いただいた日本財団(にっぽんざいだん)や関係者(かんけいしゃ)の皆様(みなさま)にお礼(れい)申し(もうし)あげます。
 
藤原(ふじわら)理事長(りじちょう)(右(みぎ))と副島(そえじま)副理事長(ふくりじちょう)(左(ひだり))
 
リッチラー会長(かいちょう)(中央)(ちゅうおう)との朝食会(ちょうしょくかい)
 
知的障害者(ちてきしょうがいしゃ)のおかれている現状(げんじょう)!
全日本(ぜんにほん)手(て)をつなぐ育成会(いくせいかい)
 副理事長(ふくりじちょう) 副島宏克(そえじまひろかつ)
 国際育成会連盟(こくさいいくせいかいれんめい)の第(だい)14回(かい)世界会議(せかいかいぎ)がメキシコ(アカプルコ)で、2006年(ねん)11月(がつ)7日(か)から10日(か)の4日間(かかん)開かれ(ひらかれ)ました。
 テーマは、「共生社会(きょうせいしゃかい)を築く(きずく);グローバリゼーションへの挑戦(ちょうせん)」です。
 知的障害(ちてきしょうがい)の親(おや)の会(かい)は世界各国(せかいかっこく)にあり、目標(もくひょう)は国境(こっきょう)と文化(ぶんか)を超え(こえ)て、知的障害(ちてきしょうがい)のある息子(むすこ)・娘(むすめ)たちが、社会(しゃかい)から排除(はいじょ)されることなく人生(じんせい)を歩いて(あるいて)いくことです。
 その国際組織(こくさいそしき)がインクルージョン・インターナショナル(国際育成会連盟)(こくさいいくせいかいれんめい)です。
 今回(こんかい)の世界会議(せかいかいぎ)がメキシコで行われ(おこなわれ)たというのも意義(いぎ)あることで、昨年(さくねん)国連総会(こくれんそうかい)で採択(さいたく)された「障害者権利条約」(しょうがいしゃけんりじょうやく)を提案(ていあん)した国(くに)、それがメキシコなのです。
 この会議(かいぎ)には、メキシコ大統領夫妻(だいとうりょうふさい)、パナマ大統領夫妻(だいとうりょうふさい)(障害(しょうがい)のある子(こ)の親(おや))を迎え(むかえ)て開催(かいさい)されました。
 参加者(さんかしゃ)は、世界(せかい)57カ国(こく)から約(やく)1,400名(めい)。日本(にほん)からは藤原(ふじわら)理事長(りじちょう)を含め(ふくめ)73名(めい)(登録数)(とうろくすう)が参加(さんか)し、開催国(かいさいこく)メキシコにつぐ参加数(さんかすう)でした。
 会議(かいぎ)の冒頭(ぼうとう)、国際育成会連盟会長(こくさいいくせいかいれんめいかいちょう)ダイアン・リッチラー氏(し)(カナダ、母親(ははおや))の挨拶(あいさつ)では、「社会(しゃかい)は知的障害者(ちてきしょうがいしゃ)のことを忘れ(わすれ)ています。ここに集まった(あつまった)人(ひと)は生き(いき)やすい社会(しゃかい)を作り(つくり)たいと思って(おもって)いるのに、私達(わたしたち)は貧困(ひんこん)と排除(はいじょ)の中(なか)で暮らし(くらし)ています。その貧困(ひんこん)を撲滅(ぼくめつ)するために、知的障害者(ちてきしょうがいしゃ)とその家族(かぞく)がしている挑戦(ちょうせん)を、世界(せかい)のすべての人(ひと)が知って(しって)欲しい(ほしい)のです」と話され(はなされ)ました。
 障害(しょうがい)を抱える(かかえる)人(ひと)は世界中(せかいじゅう)で6.5億(おく)人(にん)いて、そのうち30%の人(ひと)が産業化(さんぎょうか)した国(くに)に暮らし(くらし)、残り(のこり)の70%は途上国(とじょうこく)で暮らし(くらし)ています。
 また、6.5億(おく)人(にん)の障害者(しょうがいしゃ)のうち、43%の人(ひと)が1日(にち)1ドル以下(いか)で生活(せいかつ)しているのが、世界(せかい)の中(なか)の障害者(しょうがいしゃ)の実情(じつじょう)なのです。
 
ダイアン・リッチラー氏(し)
 
本会場(ほんかいじょう)から出て(でて)きたところの、藤原(ふじわら)理事長(りじちょう)と副島(そえじま)副理事長(ふくりじちょう)
 
ダイアン・リッチラー会長(かいちょう)の挨拶(あいさつ)に耳(みみ)を傾ける(かたむけ)る、ヴィセンテ・フォックス メキシコ大統領夫妻(だいとうりょうふさい)(右)(みぎ)とマルティン・トリフォス パナマ大統領夫妻(だいとうりょうふさい)(左)(ひだり)
 
メキシコと日本(にほん)の参加者(さんかしゃ)の交流会(こうりゅうかい)風景(ふうけい)
 
アステカ帝国(ていこく)の遺跡(いせき)
月(つき)のピラミッド頂上(ちょうじょう)から太陽(たいよう)のピラミッドを望む(のぞむ)
 
 次(つぎ)の分科会(ぶんかかい)では、日本(にほん)から「兄弟(きょうだい)姉妹(しまい)の会(かい)について」「大学(だいがく)と障害者(しょうがいしゃ)雇用(こよう)」「わかりやすい新聞(しんぶん)ステージ」の3つを、それぞれ異なった(ことなった)分科会(ぶんかかい)で発表(はっぴょう)しました。
 私(わたし)はこの会議(かいぎ)で世界(せかい)の大多数(だいたすう)の知的障害(ちてきしょうがい)のある人(ひと)たちは、貧困(ひんこん)と排除(はいじょ)の社会(しゃかい)の中(なか)にいる実態(じったい)を知り(しり)ました。日本(にほん)の何年前(なんねんまえ)の姿(すがた)でしょう。確か(たしか)に日本(にほん)にも存在(そんざい)した姿(すがた)です。
 日本(にほん)の現状(げんじょう)だけを見て(みて)知的障害福祉(ちてきしょうがいふくし)を論じ(ろんじ)ていいのだろうか?という気持ち(きもち)になったのは、私(わたし)だけでしょうか?
 また、今回(こんかい)は予定(よてい)されたプログラム以外(いがい)に、「メキシコと日本(にほん)の交流会(こうりゅうかい)」「アジア太平洋(たいへいよう)地区(ちく)ネットワーク交換会(こうかんかい)」を行い(おこない)ました。
 メキシコとの交流会(こうりゅうかい)では150名(めい)以上(いじょう)の参加者(さんかしゃ)があり、本人(ほんにん)の微笑ましい(ほほえましい)発言(はつげん)を含め(ふくめ)、熱気(ねっき)あふれる楽しい(たのしい)時間(じかん)を共有(きょうゆう)できました。
 次回(じかい)は4年(ねん)後(ご)(2010年(ねん))にドイツ(ベルリン市(し))で開催(かいさい)されます。
 日本(にほん)からも大勢(おおぜい)の参加者(さんかしゃ)を期待(きたい)したいと思い(おもい)ますし、日本(にほん)でもこの会議(かいぎ)を開催(かいさい)することが必要(ひつよう)であるとも感じ(かんじ)て帰って(かえって)来(き)ました。


目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION