(3)のリモネンリサイクル法はソニー(名古屋一宮プラント)が開発したもので、三井グループと提携してプラント化が進められている。
(株)エコライフ土佐では、平成13年から天然溶剤(リモネン)による廃発泡スチロールの減容リサイクルに取り組んでいる。以前は、高知市中央卸売市場から排出される発泡スチロールの魚箱を熱溶融方式によりマテリアルリサイクル(インゴッド化)し、中国に輸出していた(約55円/kg)が、周辺の住民から騒音、臭気のクレームが発生していた。平成12年度に旧通産省の環境に優しいエコタウン・ゼロエミッション構想化による助成を受け、エコライフ土佐では新たに環境にやさしい天然溶剤(リモネン)を使ったリサイクルシステムに切り替え、現在に至っている。
平成13年11月から稼働。従業員11名、月22日稼働している。発泡スチロールの処理量は300kg/h。設立当初から高知の中央卸売市場の魚箱を中心に処理を行っている(魚箱が全体の95%を占めている)。魚箱は北海道等から高知市魚市場に移送されて来るものが多い。魚箱のほかに緩衝材等もリサイクルしているが、現在は高知市内のものだけを扱っている。搬入される魚箱は、数回程度は再利用が可能であるが、現場(搬入される魚市場等)ではリユースよりもワンウエーという考え方が強い、1回程度の使用でリサイクル化されているのが現状である。
魚箱の場合、減容しないで(発泡体のまま)中央卸売市場から4トントラックで運ばれてくる(1台で運送できる量は約150kg)。運ばれてきた魚箱は工場内で破砕され、リモネンに溶解される。破砕、溶解の前に魚箱に貼り付けてあるラベルやテープははがす必要がある。
フロートについては処理実績はないが、基本的に魚箱や緩衝材と同じように処理が可能と考えている。フロートに含まれる塩分や水分及び付着物は処理上問題にはならないと考えている。
フロートの場合、運送費削減のため現地での減容化が必要であり、そのため現地でリモネン溶剤減容機による処理が必要となる。リモネン溶剤減容機は280万円/機(リモネン液300L入り)、リモネン輸送箱に2.5万円/箱(500L入り)かかる。エコライフ土佐では、減容機一式を10万円で排出者(養殖漁業者あるいは漁協)に貸与し、現地でフロートを溶解後、溶解液を7〜8万円で引き取り、工場内のプラントでリサイクル処理を行う。このリサイクル費用には運送費も含まれており、実際に漁業者が負担する費用は2〜3万円となる。
リモネン溶液はプラントで蒸留され、溶剤のリモネンは回収(回収率98%)され再使用される。ポリスチレンはペレットとして再生利用される。発泡スチロールからの再生ペレットの生産量は年間350トンであり、再生ペレットは約80円/kgで販売され、緩衝材やテレビの部品等に再生されている。
フロートのマテリアルリサイクルの上記三つの方式について、実際の取り組みの実例及びそれぞれのリサイクル方式の特徴を表5-3に示した。表には併せて現在リサイクルシステム化の開発試験が行われている固形燃料(RPF)として利用するサーマルリサイクル方式についても示した。
各リサイクル方式の特徴及び問題点を整理すると以下のようになる。
マテリアルリサイクルの三つの方式のうち、加熱減容方式は運送費等を考えなければ特殊な溶剤を使う必要がないため、リサイクルコストは比較的安価であると考えられる。
(1)の九州化成工業の場合は加熱減容によるマテリアルリサイクルといっても少し特殊なケースである。九州化成工業では廃フロートリサイクル処理だけを行っているのではなく、新しいフロートの販売と廃フロートの回収・リサイクルをセットで行っている点に特徴がある。この場合、現地での減容処理は必ずしも必要がない(新フロートを運送したトラックに廃フロートを積み込んで自社に持ち帰る)。廃フロートの処理にかかる運送費やリサイクル費用は新しいフロートの購入価格に上乗せされて販売されている。
廃フロートの回収・リサイクルだけを行う場合には、九州化成工業の方式は適用されず、フロートの運送費を別途負担するか、あるいは運送費軽減のため別の減容化法を考える必要がある。
加熱減容法で得られるポリスチレン樹脂はインゴッドあるいはペレットとして再生され、文具やハンガーなどの再生品として利用されるが、得られるペレットは高温の熱劣化により分子量低下が起こっているため、価格は安い。
一方、溶剤減容方式は運送費の削減には効果的であるが、使用する溶剤が危険物(第四類第二石油類)であるため危険物取り扱い責任者が必要であり、現地での取り扱いに際しては臭気等の問題が懸念された。ただし、溶剤減容方式で得られる再生ペレットは分子量低下が少なく、価格が高いという利点もある。
現在、開発が進められている固形燃料(RPF)として利用するサーマルリサイクルでは、現地での減容には溶剤を使用しないので、危険物取り扱い責任者の必要性や臭気の問題はほとんどないと思われるが、減容機の運転・維持管理者が必要とされる。
各リサイクル方式の処理費用(運送費、減容機費用、リサイクル費用など)は異なっており、それぞれの方式に利点と問題点があるため、どの方式が廃フロートのリサイクル方式として最適であるかを決めるのは難しい。廃フロートの発生地区、発生量や発生地域周辺のリサイクル工場などの状況を見極めながら地域にあわせたリサイクル方式を検討していく必要がある。
表5-3 |
発泡スチロールのリサイクル方式(マテリアル及びサーマル)による対比 |
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参考資料:
1)合成繊維リサイクルの総合的検討. 調査報告書、日本化学繊維協会、1997;32-37.
2)発泡スチロール再資源化段階のLCI調査結果:発泡スチロール再資源化協会、2003
3)発泡スチロールのマテリアルリサイクル技術:鋼パンテック技術報告、1999
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