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(4)コークス炉化学原料化技術
 コークス炉化学原料化技術とは、廃プラスチックから高炉還元剤であるコークスを製造する方法(技術)のことをいい、塩化ビニル以外なら、熱可塑性、熱硬化性を問わず、幅広い種類のプラスチックを対象として処理することができる(現在は塩化ビニルを除くプラスチックにその対象が限られている)。
 コークス炉化学原料化のプロセスは図3.2-6に示すとおりで、家庭などから排出・回収された廃プラスチックはまず、粗破砕、異物除去の後、塩化ビニルを取り除いて粒状化される。次いで、石炭と混合してコークス炉の炭化室に投入され、高温、無酸素条件下で熱分解される。コークス炉に投入されたプラスチックは200〜450℃で熱分解し、高温ガスを発生しながら500℃でほぼ完全に炭化し、コークスとなって回収される。また、熱分解により発生した高温ガスからは、炭化水素油(軽質油、タール)とコークス炉ガスが得られる。このうち、回収された油については容器包装樹脂、電子材料や塗料等の化学原料として再利用が可能となっており、コークス炉ガスについても製鉄所内の発電燃料等として再利用が可能となっている。なお、これらの再商品化率は概ね、コークス20%、炭化水素油40%、コークス炉ガス40%となっており、コークス炉化学原料化では、廃プラスチックのほぼ全量を有効利用することが可能となっている。また、高温で乾留するので、ダイオキシン類の発生が無いのもコークス炉化学原料化技術の特長となっている。
 「即効的・革新的エネルギー環境技術研究開発/可燃ごみ再資源燃料化技術開発」事後評価報告書(案)によれば、コークス炉化学原料化技術は、生成物の利用施設がプラント近傍にあることが事業化の条件であり、原料収集コストが大きい廃プラスチックの場合、遠隔地になると経済的に見合わないとされている。
 
図3.2-6 コークス炉化学原料化技術のフロー
■コークス炉化学原料化技術のフロー図
%:再商品化比率
参考資料:新日本製鐵(株)パンフレット
出典)「プラスチックリサイクルの基礎知識2006」(社)プラスチック処理促進協会
 
(5)ガス化技術
 ガス化技術とは、廃プラスチックを加熱・ガス化して、燃料や化学原料として利用する方法(技術)のことをいい、プラスチックの種類を問わず、塩化ビニルを含む多種類のプラスチックを全て一緒にリサイクルすることができる、という利点がある。このことから、ガス化技術は、分別の難しい混合プラスチック廃棄物のリサイクルに適した技術であるということができる。なお、プラスチックのガス化技術は、石炭ガス化技術をベースとしたガス化改質技術のことであり、焼却炉でのガス化燃焼技術とは異なる。
 ガス化の方法としては、加圧2段ガス化方式、サーモセレクト方式、部分酸化炉を用いた方法があり、それぞれに開発も進み、技術レベルとしては実証試験、あるいは商用化(実用化)のレベルにまで達している。なお、いずれの方式にも、灰分融解によるスラグが発生する、塩化ビニルにも対応可能である、燃焼ではないため飛灰等の問題が少ない、ダイオキシン類の発生が少ないといった共通の特長がある。
 ガス化によって分解・部分酸化されたプラスチックは一酸化炭素や水素、塩化水素を主体とするガスとなり、メタノールやアンモニア、酢酸などを合成する際の化学工業用原料として使用できるようになる。中でも、水素ガスやメタノールについては、近い将来において、燃料電池用燃料としての利用が期待されている。
 実用化されているプラスチックガス化システムの代表的な事例として、図3.2-7に加圧2段ガス化システムの概要を示す。
 加圧2段ガス化システムでは、廃プラスチックをまず、破砕機や成形機で一定の大きさのペレット(RDF: 固形燃料)に成形する。次に、このRDFをガス化炉に投入し、スチームと酸素を吹き込んで熱分解・部分酸化し、ガス化する。こうして生成したガスは水素や一酸化炭素、塩化水素を主とする合成ガスで、洗浄設備でクリーニングされた後、用途に応じて分離、合成、精製され、化学工業原料となる。なお、ガス化の際、燃えずに残った金属などの不燃物や灰分(スラグとして回収)についても、セメントの副資材や路盤材などとしての再利用が図られている。
 「即効的・革新的エネルギー環境技術研究開発/可燃ごみ再資源燃料化技術開発」事後評価報告書(案)によれば、プラスチックガス化技術は、生成ガスの利用施設がプラント近傍にあることが事業化の条件であり、原料収集コストが大きい廃プラスチックの場合、遠隔地になると経済的に見合わないとされている。
 
図3.2-7 ガス化技術のフロー
■ガス化技術のフロー図
出典:(社)プラスチック処理促進協会
出典)「プラスチックリサイクルの基礎知識2006」(社)プラスチック処理促進協会
 
4)サーマルリサイクル
 サーマルリサイクルとは、廃プラスチックをガスや油、固形燃料にかえたり、燃焼させた際の熱を蒸気に換えて発電や地域冷暖房、温水プールなどの熱源として利用したりすることをいい、リサイクルの方法としては、容器包装リサイクル法で認められた油化、ガス化のほか、ごみ焼却発電、固形燃料(RPF)化、セメント原燃料化などの方法がある。
 サーマルリサイクルは当初、エネルギーの回収効率が悪く、プラスチックを燃やすことでダイオキシンや他の有害ガスが発生するのではないか、といった問題が指摘されていた。しかし、その後の技術革新によって効率的な熱回収システムが確立され、また、徹底した環境対策が図られるようになったことで、現在では、これらの問題は概ね解決されている。一方、サーマルリサイクルでは、廃プラスチックを主燃料、あるいは助燃料として利用(焼却)するため、樹脂ごとに分別する必要が無く、また、多少であれば汚れが付着したままであっても処理が可能という利点もある。こうしたことから、サーマルリサイクルは今や、効率性、経済性の両面から有望なリサイクル技術として注目されている。ただ、「燃やしてもリサイクルになる」という認識だけがひとり歩きしてしまうと、ごみの排出抑制を妨げ、安易な焼却処理につながるおそれがあるため、廃プラスチックのサーマルリサイクルについて検討する際には、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルといった他の手法とのバランスのとれた組合せを選択することがとても重要になってきている。
 
(1)ごみ焼却発電
 ごみ焼却発電とは、ごみを焼却したときに発生する高温の排出ガスの持つ熱エネルギーをボイラーで回収、蒸気を発生させてタービンを回し、発電するシステムのことをいう。
 石油を原料に生産されたプラスチックは、高い発熱量を有している(図3.2-8)。このため、廃プラスチックをごみ焼却発電に利用することは、極めて有効な方法ということができる。また、ごみ焼却による熱エネルギーを利用することは、従来から火力発電所で使用されてきた石油・石炭などの天然資源(化石燃料)の消費の抑制につながり、ひいては、地球温暖化の防止にもつながる。
 ごみ焼却発電は当初、ストーカー炉あるいは流動床炉といったごみ焼却炉にボイラーとスチームタービンを組み合わせたスタイルが圧倒的な主流であった。ただ、発電効率が5〜15%と必ずしも高いとはいえないレベルだったため、有効なリサイクル手法とはみられていなかった。しかし、近年になって、ごみ焼却で得られた蒸気をガスタービンの高温排熱でさらに加熱、蒸気タービンの出力を増加させて発電の効率化を図った複合ごみ発電、いわゆるスーパーごみ発電(発電効率25%以上)の技術が開発され、その実用化が進んできたことで、サーマルリサイクルの一つの有効な手法として注目を集めるようになった。なお、このごみ焼却発電における焼却システムであるが、今後は、無害化、減量・減容化など環境負荷の低減、エネルギー有効利用の観点から、ストーカー炉方式、ガス化溶融炉方式及びガス化改質炉方式が主流になっていくであろうとみられている。
 
■スーパーごみ発電プラント
 
 ごみ焼却システムのうち、ガス化溶融方式の発電システムの概要を図3.2-9に示す。なお、ガス化溶融方式は、ガス化する方式によって、大きくシャフト式、流動床式、ロータリーキルン式という3つの方式に分けることができるが、図3.2-9では、ロータリーキルン式のガス化溶融発電システムについて示している。
 ロータリーキルン式及び流動床式は熱分解炉と溶融炉が別になっており、ごみはまず熱分解炉で加熱されて、熱分解ガスと炭素を含むチャー(無機物)に分離される。その後、発生した熱分解ガスなどを燃料にタービンを回して発電、熱分解ガスのエネルギーにより高温になった溶融炉で焼却灰を溶融固化する仕組みとなっている。一方、シャフト式は熱分解炉と溶解炉が一体化したシステムで、ごみに含まれる炭素と副資材(コークスや純酸素など)を使用することで高温化し、溶融固化する仕組みとなっている。
 なお、ガス化溶融方式には、従来型の焼却炉に比べ、次のようなメリットがあるとされている。
■熱分解の段階で金属を取り出せる方式の場合、希薄な酸素条件下で熱分解が行われるため、未酸化のリサイクルに適した状態で金属を回収できる
■ごみの持つエネルギーを有効に利用して溶融スラグ化することができる
■溶融後の最終残渣は固形化スラグだけなので、焼却灰に比べて大幅な減容化が可能。また、スラグの再資源化を図ることで、最終処分場の延命に貢献できる。
■燃焼に必要な空気が少なくて済むことから排ガス量が少なく、エネルギーの回収効率に優れている
■高温で焼却するため、ダイオキシン類の発生が抑制される


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