1. 調査概要
日本の海岸に漂着・散乱している“もの(以下「海ごみ」とする)”のほとんどは、高分子化合物、いわゆる“廃プラスチック類”であり、これら海ごみは人間が取り除かなければ半永久的にその場に存在し、海岸の景観を損なうだけでなく、海洋生物や鳥類の誤飲・誤食、首・羽根などへの絡みつきといった問題を引き起こす可能性等、放置しておくことのできない問題となっている。
また、海ごみは劣化・微細化・蓄積等することで処理費用が増大するため、昨今の厳しい財政状況の下、海岸管理者である自治体にとって大きな負担となっている。このようなことから、環境保全や処理コストの縮減といった課題を解決するための有効な方策として、効率的かつ効果的で、有用なごみ処理技術を公共事業等に積極的かつ円滑に導入していくことが求められてきている。
◇NOWPAP地域における漂着物等発生状況
(「平成16年度 日本海・黄海沿岸海辺の埋没・漂着物調査報告書」より)
(財)環日本海環境協力センターでは、1996年(平成8年)より、日本海沿岸部における漂着物等1に関する実態調査(日本海・黄海沿岸海辺の埋没・漂着物調査)を実施している。
初年度調査には秋田県から山口県までの日本の10自治体が参加しただけであったが、翌1997年には新たに日本の3道府県と韓国、ロシアの自治体が参加、以降、日本海沿岸における国際共同調査として実施されるようになった。さらにその後も参加自治体の数は増え、2004年度には、日本(16自治体)、中国(4自治体)、韓国(3自治体)、ロシア(2自治体)の4ヶ国、計25の自治体が参加して、計51の海岸で調査が行われた(図1.1-1参照)。
1 漂着物等とは、沿岸海域に漂う微小浮遊性廃棄物である「漂流物」、沿岸海域に沈下した「堆積物」、海岸へ漂着した廃棄物及び海岸に投棄された廃棄物のことであって、地中に埋没した「埋没物」、地表に存在する「漂着物」等いくつかの形態に区分される。
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図1.1-1 調査海岸位置図
出典)「平成16年度日本海・黄海沿岸海辺の漂着物調査報告書」平成18年3月、(財)環日本海環境協力センターより作成
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なお、調査結果は、今後、海洋環境保全対策や廃棄物対策、漁場環境保全対策等を推進していくための基礎資料として活用され、また、「ごみを捨てない心、海の環境を守ろうとする心を育む」というスローガンのもと行われた活動は、調査に参加した沿岸住民等の海洋環境保全に対する意識の醸成に一役買っている。
2004年度に日本の26海岸で行われた漂着物調査結果の概要を以下に示す(調査方法並びに調査地域等については、資料編 参考資料-1を参照のこと)。
■2004年度漂着物調査結果の概要
2004年度調査で採集した漂着物の組成は 参考資料-1に示すとおりで、このうち、日本の26海岸分の結果を表1.1-1に示す。
海岸面積100m2あたりの漂着物の数は平均677個(前年度調査時707個)で、このうち、プラスチック類が519個(同543個)と最も多くなっている。次いで多いのが発泡スチレン類の122個(同139個)で、プラスチック類と発泡スチレン類を合わせたプラスチック系物質だけで641個(同682個)、実に全体の94.8%(同96.5%)を占めていた。
一方、100m2あたりの漂着物の重量は平均4,482g(前年度調査時2,590g)となっており、こちらもプラスチック類の2,949g(同1,660g)が最も高い値となっていた。
日本海沿岸(エリア別)の漂着状況をみると、100m2あたりの漂着物の平均個数及び平均重量は共に九州地方で多く、佐賀県・相賀の浜(6,089個/100m2、2,663g/100m2)や長崎県の清石浜海水浴場(1,219個/100m2、38,995g/100m2)で特に多くなっていた。なお、エリア別の漂着物の数には、概ね北上とともに減少する傾向が認められるが、山形県酒田市の北西約39kmの日本海に位置する飛島西海岸では、他の東北・北海道沿岸地域に比べ、特に多くの漂着物が採取された(図1.1-2)。
表1.1-1(1) |
漂着物の組成比率
(100m2あたりの分類別個数:個/100m2) |
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2004年度 |
2003年度 |
個数
(合計) |
平均個数 |
構成比
(%) |
個数
(合計) |
平均個数 |
構成比
(%) |
プラスチック類 |
13,505 |
519 |
76.8 |
14,106 |
543 |
76.7 |
ゴム類 |
58 |
2 |
0.3 |
119 |
5 |
0.6 |
発泡スチレン類 |
3,160 |
122 |
18.0 |
3,622 |
139 |
19.7 |
紙類 |
60 |
2 |
0.3 |
79 |
3 |
0.4 |
布類 |
35 |
1 |
0.2 |
18 |
1 |
0.1 |
ガラス・陶磁器類 |
498 |
19 |
2.8 |
130 |
5 |
0.7 |
金属類 |
103 |
4 |
0.6 |
92 |
4 |
0.5 |
その他の人工物 |
171 |
7 |
1.0 |
222 |
9 |
1.2 |
合計 |
17,591 |
677 |
100 |
18,388 |
707 |
100 |
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出典)「平成16年度 日本海・黄海沿岸海辺の埋没・漂着物調査報告書」平成18年3月、(財)環日本海環境協力センターより作成
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表1.1-1(2) |
漂着物の組成比率
(100m2あたりの分類別重量:g/100m2) |
|
2004年度 |
2003年度 |
重量
(合計) |
平均重量 |
構成比
(%) |
重量
(合計) |
平均重量 |
構成比
(%) |
プラスチック類 |
76,679 |
2,949 |
65.8 |
43,158 |
1,660 |
64.1 |
ゴム類 |
3,202 |
123 |
2.7 |
3,119 |
120 |
4.6 |
発泡スチレン類 |
2,612 |
100 |
2.2 |
4,370 |
168 |
6.5 |
紙類 |
506 |
19 |
0.4 |
297 |
11 |
0.4 |
布類 |
3,703 |
142 |
3.2 |
306 |
12 |
0.5 |
ガラス・陶磁器類 |
7,234 |
278 |
6.2 |
3,996 |
154 |
5.9 |
金属類 |
7,110 |
273 |
6.1 |
1,480 |
57 |
2.2 |
その他の人工物 |
15,490 |
596 |
13.3 |
10,623 |
409 |
15.8 |
合計 |
116,537 |
4,482 |
100 |
67,349 |
2,590 |
100 |
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出典)「平成16年度 日本海・黄海沿岸海辺の埋没・漂着物調査報告書」平成18年3月、(財)環日本海環境協力センターより作成
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図1.1-2 エリア別漂着状況(2004年度平均値)
出典)「平成16年度 日本海・黄海沿岸海辺の埋没・漂着物調査報告書」平成18年3月、(財)環日本海環境協力センターより作成
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本調査は、海ごみの中でも高い割合を占める“廃プラスチック類”を処理の対象として、国内における生産・処理状況、並びに廃棄物処理業者等によるリサイクルへの取り組み状況などについてとりまとめるものである。
さらに、環境に配慮した処理技術の活用・普及をより一層促進するため、既存の海ごみ処理分野やそれ以外に可能性のある異分野も含め、広く民間の処理技術開発者等からの情報を収集し、それらを対象分野ごと、事例集的にわかりやすくとりまとめることで、現場条件に適した処理技術の公共事業等への導入を積極的に図っていくことを目的としている。
1)我が国のプラスチック生産状況
プラスチックの特性(長所・短所)、用途並びに国内で生産される各種プラスチック製品の生産状況等、プラスチックに関する基礎的情報について整理した。
2)廃プラスチックの処理と資源化
廃プラスチック類の発生状況について整理するとともに、その処理及び有効利用(再資源化)の状況、リサイクル手法の概要について整理した。
3)廃プラスチック類のリサイクル技術に関する調査
インターネット上や文献・専門誌等で公表している情報・資料をもとに、廃プラスチック類に対する国内の既存リサイクル技術に関する情報を収集・整理した。また、合わせて、(財)環日本海環境協力センターのホームページ上で、海ごみ(=廃プラスチック)リサイクルに関する技術情報を広く一般から募集し、国内における廃プラスチック類のリサイクル実態について調査した。さらに、調査の結果、適用可能性が特に高いと思われる技術については、必要に応じて現地調査(プラント視察、ヒアリング)を実施し、より詳細で追加的な情報の収集に努めた。
4)漁業系海ごみ問題の現状と課題
前記3)の調査結果を補完するため、漁業系廃棄物処理分野の専門家・学識経験者等へのヒアリング調査を実施し、同分野における現状と最新の知見等に関する情報を収集した。
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