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2. 我が国のプラスチック生産状況
2.1 プラスチックとは
 プラスチックとは、端的に言えば、人工的に合成された高分子化合物のことであり、熱や圧力などによって可塑性を示す性質を持った合成樹脂のことをいう。また、この他にも、プラスチックには、軽くて強い、耐久性や耐腐食性・断熱性・電気的絶縁性に優れている、透明性があって着色が容易である、さらに、衛生的で食品保存に優れているといった特長がある。このため、近年、こうしたプラスチックが持つさまざまな特性を十分に活用した製品が数多く開発されるようになり、従来の天然素材に代わる新たな素材として、家庭・台所用品や食品容器・包装といった日常の生活用品から農・水産業の各種資材、果ては自動車部品や電気・電子製品の部品にいたる幅広い分野へとその用途が広がってきている。この結果、プラスチックはもはや、私たちの暮らしとは切り離すことのできないものとして、日常生活の中に完全に定着してきている。
 
−プラスチックの長所と短所−
◆長所
軽くて強い
 金属材料などの他の素材に比べ比重が小さく、強度の高い製品を作ることも可能である
優れた耐久性、耐腐食性
 さびたり、腐ったりすることがなく、薬品におかされにくい(一部薬品を除く)。
優れた電気絶縁性、断熱性
 一般にプラスチックは良好な絶縁体で、その発泡体は断熱材としても優れた性能をもっている
透明性に富み、着色も容易
成形性が良く、大量生産が可能
◆短所
熱に弱い
表面硬さが低い(表面が傷つきやすい)
帯電しやすく、塵や埃を吸着しやすい
ベンジンやシンナーに弱いものがある
 
 プラスチックは、そのほとんどが石油からつくられる1
 石油精製工場の常圧蒸留装置で原油を蒸留すると、沸点の違いによって、ガソリン、灯油、ナフサ、軽油、重油などに分けられるが、このうち、プラスチックの原料となっているのがナフサである。ナフサはガソリンに似た透明な液体で、これをさらにナフサ分解工場の分解炉で加熱・分解することで、石油化学基礎製品と呼ばれるエチレン、プロピレン、ブタジエン、ベンゼン、トルエン、キシレンとなる。プラスチックは、これらを重合させたり(図2.1-1)、他の分子を結合させたりすることでつくられるが、この重合の仕方によって、さまざまな種類のプラスチックができあがる。なお、できたばかりのプラスチックは粉や塊で扱いにくいため、やわらかくしたり、こわれにくくしたり、色を付けたりするための添加剤などを加え、いったんペレット化される。
 その後、ペレット化されたプラスチックは成形工場に送られ、そこでさまざまなプラスチック製品へと加工されていく。
 一般に、プラスチックの製造には、たくさんの石油が使われているように思われがちだが、実際は、全原油使用量のわずか数%程度にすぎない。2004年には、2億3,524万kLの原油から1,991万kLのナフサが製造され、輸入ナフサと合わせた4,938万kLのナフサがエチレンなど石油化学基礎製品の原料として使われた(図2.1-2)。
 
1一部、天然ガスからもつくられている。
 
図2.1-1 重合反応
エチレンモノマーからポリエチレンへ
 
図2.1-2 原油使用量と製品別生産量
■原油使用量と製品別生産量(2004年実績)
(密度について)
 使用した密度は、便宜上平均的な値を用いた。
 原油:0.85g/cm3
 ナフサ:0.70g/cm3
(6ページとの樹脂生産量の差は集計月の違いによる)
(資料出典:石油化学工業協会「化学工業の現状」2005年版)
出典)「プラスチックリサイクルの基礎知識2006」(社)プラスチック処理促進協会
 
2.2 プラスチックの樹脂別、用途別生産状況
 プラスチックは、熱に対する性質の違いから、大きく「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」という2つの種類に分けられる。さらに、「熱可塑性樹脂」については、耐熱性の度合いから「汎用プラスチック」、「エンジニアリング・プラスチック」、「スーパー・エンジニアリング・プラスチック」に分けられる(表2.2-1)。
 
熱可塑性樹脂
 加熱すると軟らかくなって加工できるようになり、冷やせば固くなる性質を持ったプラスチックのことで、もう一度熱を加えれば、再度溶けて軟らかくなる。
■汎用プラスチック
 耐熱温度は100℃未満で、大量生産できるため比較的安価なプラスチックである。ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)などが該当し、一般の成形品や包装材料、家庭用品、日用品などとして広く使われている。
■エンジニアリング・プラスチック
 機械的強度や耐熱性、耐摩耗性に優れ、耐熱温度が100℃以上というプラスチックのことをいい、機能性プラスチック、性能性プラスチック、エンプラなどとも呼ばれている。ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)などが該当し、一般に、機械・自動車・電子機器など強度が必要とされる分野に使われている。
■スーパー・エンジニアリング・プラスチック
 耐熱温度150℃以上と、エンジニアリング・プラスチックよりさらに高い温度でも長期間の使用が可能なプラスチックのことをいい、新機能性プラスチック、スーパーエンプラとも呼ばれている。ポリアミド・イミド(PAI)、ポリエーテル・スルフォン(PES)、ポリエーテル・エーテルケトン(PEEK)などが該当する。
熱硬化性樹脂
 成形時には、熱可塑性樹脂同様、加熱によりいったんは軟らかくなるが、さらに加熱すると、分子同士が重合を起こして高分子の網目構造を形成し、硬化する性質を持ったプラスチックのことである。なお、一度硬化したものは、再び熱を加えても軟化溶融することはない。
 
表2.2-1 プラスチックの分類
分類 材質
樹脂名 JIS略語
熱可逆性樹脂 汎用プラスチック ポリエチレン PE
高密度ポリエチレン HDPE
中密度ポリエチレン MDPE
低密度ポリエチレン LDPE
ポリプロピレン PP
ポリスチレン PS
ABS樹脂 ABS
アクリル樹脂 PMMA
ポリ塩化ビニル PVC
エンジニアリング・プラスチック ポリアミド(ナイロン) PA
ポリアセタール POM
ポリカーボネート PC
ポリブチレン・テレフタレート PBT,PBTP
ポリエチレン・テレフタレート PET,PETP
ポリフェニレン・エーテル PPE
スーパーエンジニアリング・プラスチック ポリアミド・イミド PAI
ポリエーテル・スルフォン PES
ポリスルフォン PSU
ポリエーテル・エーテルケトン PEEK
ポリフェニレン・スルフィド PPS
ポリメチル・ペンテン TPX
ポリテトラ・フルオロ・エチレン
(四ふっ化エチレン樹脂)
PTFE
熱硬化性樹脂 フェノール樹脂 PF
ユリア樹脂 UF
メラミン樹脂 MF
不飽和ポリエステル樹脂 UP
ジアリルフタレート樹脂 DAP
エポキシ樹脂 EP
ポリウレタン PUR
ポリイミド(ベスペル) PI
 
 2005年におけるプラスチックの樹脂別、用途別生産状況は図2.2-1に示すとおりで、熱可塑性・熱硬化性の別では、熱可塑性樹脂の生産が全体の90.9%を占めている。樹脂別には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)の生産比率が高く、この二つだけで全生産量の44.6%を占めている。なおこれは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)が、用途別生産比率で約40%を占める袋・ラップフィルムなどの包装材、建築土木用などのシート材料として適していることに起因する。
 
図2.2-1 プラスチックの樹脂別、用途別生産状況
■樹脂別生産比率
出典:日本プラスチック工業連盟が経済産業省大臣官房調査統計部発表の統計月報より集計
 
■用途別生産比率
(注)グラフのプラスチック生産量1,412万トンと用途別生産量614万トンとの間に大きな開きがあるのは、用途別生産量の集計の際、次の条件がついているためです。
(1)直接成形加工された一次製品が対象
(2)従業員40人以上の箏業所の製品が対象
(3)二次加工品、塗料、接着材、電線およびケーブル、合成繊維、ウレタンフォーム等を除外
 
出典:日本プラスチック工業連盟が経済産業省大臣官房調査統計部発表の統計月報より集計
 
出典)「プラスチックリサイクルの基礎知識2006」(社)プラスチック処理促進協会


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