日本財団 図書館


第5発表者:熊本県難病相談センター 所長 陶山 えつ子 様
 
 それでは熊本県の難病相談支援センターの紹介をさせて頂きます。センターは熊本県から委託を受けたNPO法人熊本県難病支援ネットワークが運営しており、先ほど理事長がご挨拶を致しましたが、このNPO法人は当事者が中心で、行政との連携はとても良く、今日も使いっぱしりを買って出ていだだいている行政の方もおられます。
 看護師2名、社会福祉士1名、相談員2名の5名で、常時2名体制で運営しています。また熊本県の難病連絡協議会とNPO法人とは活動の役割を分担しています。たとえば佐賀は難病連=NPOという、難連がNPOになったという形ですが、熊本の場合「NPOはNPO」「難連は難連」と分けています。というのは行政に対する陳情・要望も難病連の役割で、募金活動とかそういうのは難病連の方でやっています。一方、NPO法人では、市民や有識者も交え、難病相談・支援センターの運営を柱に、シンポジウムの開催や社会的な啓発が中心で、例えばセンターへ来られた方たちがバザーを行うなどNPO法人だから出来るというような事をやっています。これが一番の熊本の特徴だと思います。また、地域ごとに「難病友の会」が出来上がっています。熊本県の場合は難病連が出来たのがほんのつい最近でやっと3年目になりました。他の県では20年〜30年となっているところもあるんですけど、熊本はズウーっと難病連が出来なくて、その間に地域の保健所単位で地域型難連のような「難病友の会」が出来上がっていたんです。ただ、熊本県では患者の約三分の一が熊本市民なんですけれども、熊本市の中で友の会が今やっと産声を上げて出来ようかなとしているところなので、保健師さんたちと一緒になりながらやって行きたいと思っているところです。
 
 
 次に、難病センターが出来た当時から月に1回の難病連世話人会とNPOの理事会をやっています。その時に友の会に呼びかければ、そこの地域の会長さんたちがいらっしゃるし、その他に患者会もありますので患者会の代表方もいらっしゃるのでとても話が通じ易いんです。でもその影には保健師さんたちの力というのがとても大きく影響していたと思います。
 それと疾患別の患者・家族の交流会というものもやっています。これは医療者を抜きに私達はやっています。多分医療者からするとけしからんと思われるかもしれませんが、私達が思うのは、私も患者の家族なので思うんですけれど、疾患のその病気のことよりも、その病気を受入れられない自分とか、受入れられない家族、こういう人たちが多いんですね。日常生活の中の病気の部分なんてほんのチョット。もっと他に一日の生活パターン中で同じ病気を持ってる人がどんな風に生活しているんだろうとかいうのはとても興味のあるところで、そういう所を話合う時間というのが必要だと思ったのです。
 例えば多発性硬化症の交流会をするという事を投げかければ、多発性硬化症の患者さん・家族の方にいらっしゃって、そこで1〜2時間ほど自分は今こうしていますとか、こんな事やってよかったですとか、ここの病院はちょっと良くないみたいな話も出るんですね。特別な話しをする訳じゃないんですけど、ただ皆さん満足して帰られます。これを1年間通してやっておりました。この1年間の相談件数は1,387件で、電話がほとんどです。交流会は述べ332人の方が参加していらっしゃいます。相談の内容としては病気の経過、今後自分はどうなるんだろう。このどうなるんだろうというのが一番の心配事なんですけども、例えばパーキンソン病もその人によって全然違うんですね。明日からドンと徐々に徐々に日に日に悪くなっていく人もいれば、何年もずっと同じような状態の人もいるので、多分医者からもあなたはこうなりますよ、という事は言えないと思うんですね。でも交流会なんかに来て同じパーキンソンならパーキンソンの患者会とかへ行けば同じ病気でも寝たきりの人も居れば、へぇーこの人どこが病気っていう感じの人まで様々なんですね。ですから色んなパターンがあるんだっていうのが判られると自分ももしかしたら寝たきりになるかもしれないし、もしかしたら明日もまた元気にやっていけるかもしれないけれども、これだけ皆前向きに生きている人たちばかりいるんだったら、自分ももっと前向きに生きようと思って下さると不思議と身体も元気になってくるという方たちが多いです。
 
 
 交流会は7月から3月まで乾癬から始まって潰瘍性大腸炎までやりました。乾癬って言うのは皆さんあまりご存知ないかと思います。特定疾患の中にも入っているわけではありません。なぜ乾癬を一番にしたかと言うと、私達は内部疾患や神経難病の方たちからの相談はあるだろうと思っていたんですけれども、乾癬と言うのは皮膚疾患でアトピーのひどいのと思って頂けたらいいかと思いますけど、そういう疾患も、そういえばそういう方たちも何処に悩みを打ち明けていいか判らないんだよね、というのを感じました。また立て続けに2、3件この乾癬の方からの相談があったので1回目は乾癬をやってみようという事でやりました。この時20人位集まられました。本当にやっぱり皮膚疾患で悩んでる方多いなと実感したところです。
 外部への活動という事で70件とありますけど、これは1件1件を足して70件ではなくて、1回出て行くことについて70件なので、例えば関係医療機関へは1日で5〜6ヶ所回ったりします。とにかく熊本県内50ヵ所程の病院を回り、難病センターが出来たこと、掲示板にチラシを貼って頂くとか、患者さんらへの紹介など横をつなぐような事をさせて頂きました。また患者会の総会にはもちろん出席しますし、さっき言いました地域の友の会の総会とか勉強会とか参加させて頂きました。それと保健所との連携はとても大切で保健師さんたちの研修会もここの難病センターでやって頂けたのはとても良かったです。また看護系の学校にも講師で行かさせていただいて、やっぱり病院へ就職する前の看護師さんの卵とか、お医者さんの卵の状態の時に病気を見ないで人を見るという事をやっぱり体験して欲しいので、患者さん達の声を医療者に届けたいというような事もやっております。研究会とか学会、研究会に関しては全国難病センター研究会がありますが、これが年に2回あるので職員が交代で参加しようと決めております。県連機関との関係では、看護協会でありますとか薬剤師会、この薬剤師会は皆さん病院行かれると必ず薬貰って処方箋を出されますよね。処方箋を貰うところは今は病院じゃなくて薬局になっていますよね。ですから薬局にうちのパンフレットを置いて頂いており、そういう方面からの電話もあります。そして特定疾患の認定の際にもセンターのチラシを一緒に行政の方から入れて頂いています。行政では、特定疾患の方が何処に誰が何人居るというのが判ってはいるんですけど、それ以外の難病の方たちはいったい何処に誰が何人いるのかというのは医療機関じゃないと判らないんですね。それでわからない人たちを繋ぐと言うことでも色んな所に私たちが出向くのもセンターの仕事だと思っております。
 
 
 ホームページは月に4〜500件のアクセスがあり、4月21日現在で4,615件です。
 ここで写真をいくつかお見せいたしますが、これはヘルスケア関連のワークショップと言って、そこの勉強会の様子です。私がこれに参加して一番びっくりして、そうだな〜と考えたことに、疾患は全然違うんですけれども悩みっていうのはそんなに根本的には変わらないということでした。外に熊本IBDの総会では、かわいいお嬢さんたちが来てお遊戯をして下さったこともあります。脊髄小脳変性症の患者会が立ち上がる前に皆でちょっと寄りましょうと言うことで第1回目の準備会を企画しましたら、入れ切れないくらいの人がいらっしゃって、やっぱり皆さん待っていたんだということをつくづく実感しました。これは繊維筋痛症ですね。とにかく皆さんあまり聞いたことないかもしれませんが、とにかく身体中が痛い、あるいはごく一部が痛い、昔で言うなら神経痛で切り捨てられたところかもしれませんけれども、とにかく尋常な痛さじゃないんですね。夜中にあまりの痛さにぐっと歯をかみ締めたら歯が5本折れたと、それ以来そういう時にはマウスピースをするようにと言われているような方から、ほんとに足のごく一部が時々痛いんだという方まで色々居られて、痛いというのは誰にも判ってもらえませんし、検査でも出ないんですね。痛みと言うのは。ですから本当に痛い病気って言うのは大変だなぁと思っています。ですから痛みの病気の時は医療だけじゃなくて心療内科的な部分も必ずセットでやらないと上手くいかない皆さん話されていました。
 これは血液難病の患者さん達の交流会ですけども、この中で今息子が悪性リンパ腫で入院しているんだというお父さんや、私は体中にガンが出来ていて悪性リンパ腫もあるんだと言ってらっしゃる方もいらっしゃって、でもそんな方でも皆さん身体はきついんでしょうけれども、心が元気なんです。私はどん底に落ち込んでいるなら多分外にも出られない状態だと思うので、ここに来るって言うだけで前向きに今から生きようとされている方々だと思うのです。後は私たちが一押ししてあげるだけだと思っています。また、こうやって患者会や交流会がありましたという事をマスコミが報道して頂きますと、自分は外には絶対出られないと思っていた方たちが、あぁ自分と同じ病気の方たちがこんな所に行ってこんなことをやっているんだということが判り、センターにちょっと電話しようかなという気持ちになって頂ければいいなと思っている所です。
 
 
 時には外部に出かけての交流会も行います。聴覚平衡難病と言い耳が難病によって聞こえなくなるような病気の方がいらっしゃいます。聴覚障害者福祉センターという所で開催させて頂きました。結局本当に耳が聞こえなくなった時には、障害者手帳をお取りになってやっぱりそれなりの手当てが必要ですね。そこは私たちでは手に負えるところではないので、そういう所と繋がっておいて、いざという時にはここがあるんだというところを知って頂きたいと思いました。途中で耳が聞こえなくなった方たちには何が必要かといったら、耳が聞こえなかったら皆さんなんと思われますか?耳が聞こえなかったら手話じゃないかと思いますよね。でも途中で聞こえなくなった方がいくら手話を覚えても友達に手話、相手を返す人がいないんだと言われたんですね。だから耳が悪い=手話って言われるのが一番いやだと言って居られました。また、視覚障害者の方には点字図書館で開催させて頂きましたけれど、これも点字図書館というがあるということさえ知らない方が沢山いらっしゃいますので、網膜色素変性症の方たちなんかはそこで友達になっておられたみたいでした。
 これは重症筋無力症の交流会です。この時にここに、ちょっと暗いので判りにくいんですが、この辺に座っている人たちは全部看護大学の生徒さん達です。この人たちと一緒に勉強しています。
 カウンセリング講座も開催いたしました。ブロックと言いまして、相談者から電話がかかってくると自分の今までの経験の中でその人を当てはめようとするんですね。けど全くそうではなく、真っ白状態でその人の気持ちを受入れるという事がいかに大切かということを勉強をさせて頂きました。
 それでは平成18年度の活動計画というので、今日このサミットがありまして、このあとIBD九州大会、ウチの事務局長がこういう何とか大会が大好きなので私たちはその度にテンテコ舞いしているんですけれども、皆さんがこうやって沢山来て頂いて、本当私はうれしいです。またうきうきクッキングというのでここのセンターを沢山の方たちに利用して頂きたいと思って、美味しいものを食べて元気になろうというのをやっていきたいと思います。また交流会は今年も続けます。そこで今年度の重点活動という事で、大きく2つ上げています。今まで一年間、とにかく駆け足でやってきて、まだやりたい事山のようにあるんですけど、ちょっと重点を絞ってやらないといけないと言うので、今年は就労支援、11月に患者の就労状況の周知というのを今ちょっと調査していますのでそれを皆さんに難病患者さん達これくらい就労について大変なんだという事をアピールするような、こういうフォーラムのような事になるかと思います。2月にはいわゆるそういう障害者なり難病者を受け入れてくれる企業に向かってのセミナーというのを企画しています。それから関係医療機関の連絡協議会というのを設置しようと思います。企業さんも入りますし、ハローワークも入ります。障害者支援センターの方たちも入ります。色んな方たちを入れてこういうのを設置したいと思っています。また最後にセルフマネジメントプログラム。これは慢性疾患と上手に付き合うというのは誰があなたこうした方がいいわよ、ああしたほうがいいわよと言っても中々それは出来ないですね。なぜなら本人がその気になってないからです。ですから、就労はもちろん出来ないかもしれないけれども、精神的に落ち込んでしまっている状態で就職したとしても、また上司から何か言われたらシュンとなってしまって明日から仕事行きません。だから明日もがんばろうという気になれるような自己啓発プログラムがありまして、これを熊本のセンターとしてはちょっとウリでやって行こうと思っています。これは1週間に2回2時間半を6週間続けるというものです。詳しくお知りになりたい方はこれ終わりましてから説明させて頂きます。そして九州・沖縄は一つみんなで力を合わせて大きな輪を作りましょう!という事で、私は熊本生まれではなく福井県の生まれなんです。先程どこかの新聞社の方も兵庫県だと聞きましたが、本当九州に来てびっくりしたのが、甲子園の野球がありますよね。あれを見てウチの父とか母とかウチの夫なんかが九州はどこが残っているとかを言うんですね。熊本は負けたけど宮崎が残っているとか大分が残っているって、なんで隣の県のことまで応援するんだろうと思っていました。私は福井でしたけど、隣の石川とか富山が勝っていようが負けていようが別になんとも思っていませんでした。だから九州の人達はなんかよしやるぞ!と言ったらオーってなんか一つになるのがとても上手と言うかそれは凄くいいなと思っています。ですから今回、九州サミットやっていますけれども来年もまたどこでやってと言ったら、いいよと簡単に手を上げてくれているような何かそういう九州の雰囲気が私は大好きなんです。今年も難病センターしっかり頑張って行きたいと思っています。ありがとうございました。
 
 


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION