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<コーディネーター>
 本当に、傷をつけて出血をさせるのではなかろうかとか、心停止とかの問題があるわけです。ここを受入れるというのは、先駆的にされたというのは、その背景にドクターのバックアップがあり、または訪問看護ステーションとの連携というところが確実にあったわけですね。
 私達や今日来ておられる皆様が、これから痰吸引に関わっていくという事になると、やはり自分たちの思いが強くてもダメなわけです。また地域の中でニーズがあっても活かせないという事が出てきます。今回の吸引問題に関して厚生省も、その医療チームといいますか、地域、ケアの中心にドクターというのが据えられております。
 今日、発表でも解られたと思いますが、山本先生は沢山の在宅の患者さんを診ておられます。やはりこれからはドクターと一緒にやっていくという事です。ここでもう1回今村先生にお尋ねしたいのですが、実際病院の中でもご自身で沢山の患者さんを持っておられて、いわゆる患者さんというのは、どんどん増えてきておられます。自分の担当する患者さんは増えていけば、物理的にというか、時間的にもやはり困難になってくるだろうと思います。
 地域ケアを目指すという時に、私たちはホームドクターだったり、主治医だったりという事になってきますけれども、どういう点に気をつけていけばいいでしょうか、そのドクターとの関わりということでお話いただけませんか。
 
<今村>
 ちょっと大きなテーマになりますけれども、基本的には常に情報交換して、連携を緊密取るということが一番大切じゃないかなと思うんですね。痰吸引に実際行われる前には、例えば当院の場合でありますと実習をどんどん受入れておりますので、まず実習でトレーニングを積んでいただいて、そして技術をマスターしていただいて、過剰な不安とか心配を失くすということですね。だけどやっぱりこういう点は気をつけたいというところの意識もマスターしながら、最終的にはその患者さんの同意を得て、説明と同意の下に行っていくという事でスタート出来ればいいかなというふうに思います。何かあった時には、病院が中核病院として緊急避難入院なり、レスパイトなり、ショートステイなりですね、ちゃんと受入れていくと何かあった時には、もちろんホームドクターとの連携を取ってやっていくという、そのやはりネットワークの中で常に何かあった時には連絡が取れる、連携が取れるという体制を作っておくと、その中で動いていくという事をしっかり認識していけば大丈夫じゃないかと思います。
 
<コーディネーター>
 ありがとうございました。やはりホームヘルパーにとって自信に繋がるというのは後ろ盾であったり、本人の自己研鑽もそうかもしれません。今、先生がおっしゃったように、ニーズがあれば地域の中でドクターに相談すること。まずこれがスタートだろうと思います。今、社会的な背景として、療養型病床群が38万床から15万床に減る。そして入院しておられた患者さん達がどんどん在宅に戻ってくる。難病対策事業で厚労省の方では、吸引の患者さんとか、そういった方を特養が受け皿にしようという考え方が今出て来ております。看護師の増加、そして神経系のドクターとの連携というのを条件にする。という話が出て来ました。そしてこれまで特養に入っておられた利用者の方たちは、グループホームに出てきたり、若しくはその認知症だけではなくて、身体的な機能の障害があっても、グループホームの適用によってケアハウスであったり、在宅に出していこうと。特に重症でいわゆる医療が必要で長期的な療養が必要である方を除いては、病院から中間施設、中間施設からまた小規模施設と段々降てきている。そしたら今まで在宅で看なかった人たちが在宅に、自分たちの町内で暮らし始めるという事になるわけです。今、包括支援センターが開設し、いろんなことで家事介助というのが殆どもう換算して貰えないというかお金にならない。今度は身体介護に比重を移していかないといけない。事業所としては職員も要るし、食べさしていかないといけないし、自分たちも頑張っていきたい。そうなってくると、福祉の中に医療の技術というか、そこら辺を加味していかないと、やはり地域を支えるという、社会福祉の原点でありますけれども、そこに至るのではないかと思います。
 最近は特に必要性が増してきたのではないかと感じておりますが、本日は山本先生に自動吸引器のご紹介を頂きました。ホームヘルパーが吸引できるのはカニューレの先(内部)までなんですね。オープン法、もう一つがクローズ法、クローズ法は出来ないのです。このオープン法でやるというお話しと、その自動吸引器というのはとても画期的というか、多分今日参加されているご家族さんは、あー使ってみたいと思われたのではないでしょうか。
 山本先生、この器械について、先程手続きが必要だというお話でしたけれども、声は本当に沢山あると思います。今日当事者の方ご家族の方がいらっしゃっているのですが、今後の見通しというか、こういう方向性にいけたらいいな。という希望的観測でもよろしいんですけれども、少しお話を頂けたらと思います。
 
<山本>
 なかなか希望的観測が申し述べられないので、ヘルパーの皆さん吸引を頑張って頂きたいと、取敢えず今回はここでは言うしかないのですが。
 まず、開発が終わって、100人の患者さんに100人安全性があるのかと問われるわけです。100人の患者さんの内99人安全だったらいいだろう、というのはお薬の考え方なのですが、器械の考え方は100人の内100人が安全じゃないといけない。逆に100人の内にうまくいかない人とか無効がたとえば半分位いても、安全性が脅かされてはいけないというのがこういう器械の考え方になります。そうなりますと大変効率はいいんですけども、効率が良すぎて危険性が少しでも残れば認可して頂けないという事になるんですね。そこの所の接点をどのようにしていくのかという所が今、実は最後の詰めという事になっておりましてまだまだですね。現場の先生方からもおそらく100%安全だと言ってくれる先生などは誰もいないと思いますね。で、その中でそれがやっぱりこれはどうも100%だなと認識持っていただけるまで、なかなか先へ進まないと思います。従ってあるのはありますけれども、試験的に使える、研究として使えるレベルがまだ1、2年あるいは、ひょっとしたらもう少し続くのではないかなと思いますので、やはりその間にマンパワーで、きちんとこういう問題が対処できるように、それぞれの地域で力を付けていただきたいというふうに私は思います。
 
<柊中>
 山本先生、せっかくですので、私のほうからもう一点伺いたいんですけれども。先生のスライドの中で、協和病院の方が中核になられてヘルパーステーションが10機関でしたか、連携を取っていらっしゃると報告があったのですれども、例えば今日ご発表いただいた寺田先生は訪問看護ステーションと併設のヘルパーステーションという形ですごく充実した形で対応なさったということがあるんですけれども、その先生が関わってらっしゃる10のそのヘルパーステーションというのは、例えばそこ単独のものなのか、状況をもう少し教えていただけたらヘルパーさん頑張って下さいという先生のお言葉がもう少し具体的に判るのかなと思ったんですけれども。
 
<山本>
 私たちの病院もヘルパーステーションを持っているんですよ 。そこから病院にわりと近い地域は出るようにしていますが、そういう患者さんも出来れば僕たちの希望としては1つのヘルパーステーションに固定せずに、複数のステーションが入るような形でやっていただこうというふうになるべく考えています。1ヶ所ではどうしても不満が集中してしまったりとか、家族との関係がどうしても上手くいかなくなったり、とかいうトラブルが結構多いものですから、そこは分散していこうというところが一つあります。それともう一つ。ヘルパーステーションがどういうところからきているのかという事ですけれども、これはもうバラバラですね。ただ単独はちょっとないですね。老人保健施設の付属のヘルパーステーション、あるいは病院の付属のヘルパーステーション、一番多いのはやっぱり特養等の付属ステーションでしょうかね。訪問看護ステーションも同じように単に病院の訪問看護ステーションだけじゃなくて、特養やそういう施設の訪問看護ステーションの方が随分関わっておられます。
 
 
<コーディネーター>
 ありがとうございました。時間が近づいて参りました。
 皆さんからお言葉をいただきましたけれども、やはり基盤作りが一番大事だと思います。そして当事者である本人さん、ご家族さんの気持ちを汲みながら、これがキーワードではないでしょうか。これから痰吸引をチャレンジしたいと思われる方も今日は多分何人か、事業所の方も出てこられたのではないかと思います。器械は将来的に使えるようになるかもしれませんが、それまでは、皆さんの力といいますか介護力というか、看護力これがキーになってきます。いろいろ問題はあるかもしれませんけれども、医師または看護師と手を取り合わせて頑張っていっていただければと思います。時間となりましたのでこれで閉めたいと思います。本当に皆さんありがとうございました。
 
<司会>
 それでは、コーディネーターをしていただきました、柊中さん中山さんお疲れ様でした。どうもありがとうございました。皆さんもう一度拍手をお願いいたします。最後になりますけれども今回のシンポジウムの開催にあたりましてこのシンポジウムを誰よりもここでやりたいと言っている田上和子というのがおりまして、訪問看護ステーションに11年勤めていました。
 ぜひヘルパーさん達がALSの患者さん達に関わって貰いたいという想いがあって、国の方が認可したのにまだまだそれが社会の中に行き渡ってない、どうにかこれを社会の波のうねりにして欲しいと。今回のシンポジウムは本当に熱い想いの一人の女性から生まれたと私は思っています。
 ですからそこが県と、いろんな所の協力があって本日実現することができました。その彼女が最後の挨拶をします。田上さんお願いします。
 
<田上>
 皆さん田上です、今日はどうもありがとうございました。3時間という長い時間だったと思いますけれども、シンポジストの先生方には本音に近いところでお話をしていただけたと思います。
 これから熊本の地域医療を支えるのは私たち看護職でありそしてまた、介護福祉士やヘルパーさんたちであり、あと声を出していく患者、家族の皆さんだと思います。まだ課題は沢山ありますけれども、一生懸命がんばって連携しながら取り組んでいきたいと思います。私が難病患者さんに関わるスタートラインの方が今日は会場にみえています。私の大の親友とでもいいましょうかALS協会の熊本県支部の田崎さんご夫婦です。ご主人ちょっと立って下さい。横に奥様の由美さんがいらっしゃいます。由美さんをちょっと紹介いたします。私も11年関わっておりますけれども、とても前向きな方でパソコンを操作しまして絵を描いたり、詩や俳句を書かれます。絵画展をされたこともあります。1年に1度一緒に旅行するのが私たちの楽しみです。彼女に支えられて私はこの難病支援センターにとびこみました。そしてここでまた沢山のステキな方たちとお会いすることができました。
 病気は持っていますけれども、皆さん毎日の生活に精一杯です。そういうステキな方たちに支えられて私も、それから難病支援センターも毎日頑張っております。どうぞ皆さま熊本の地域医療を支えるために熱い想いで私たちと一緒に歩いていって下さい。お願いします。
 そして力をお貸し下さい。今日は長い間でしたけれども本当にありがとうございました。
 
<司会>
 本当に最後までお付き合いいただいてありがとうございました。ここでシンポジウムは終了します。会場の後ろの方で、山本先生と株式会社徳永装器の研究所の徳永社長様より、自動痰吸引器のご説明をいただきます。痰吸引器の見学会を行います。約1時間の予定ですので実際に体験することが出来ます。人形も用意してございますのでどうぞお試し下さい。またご質問等がありましたらその場でお尋ねいただければと思います。また皆さまのお手元の中にアンケート用紙が入っていたかと思いますけれども、私たちの今後の活動にも活かしていきたいと思っておりますのでどうぞご協力をよろしくお願いいたします。
 
II部 痰自動吸引器見学会
大分県宇佐市大字大根川318
株式会社 徳永装器研究所
代表取締役 徳永 修一さん
 
 温厚で温かいお人柄がお会いした瞬間に感じられました。参加したヘルパーや介護福祉士、看護師は興味深く自動吸引装置を見学・体験されていました。見学者の質問にも解りやすくお答え下さいました。ひとめ装置を見たいとALS患者会の代表も見学され、「安全性が確認されたらすぐにでも使いたい」「これがあれば、在宅での介護も本人はもとより、介護者も少しは楽になれるのではないか」等、医療機器としての承認が早く降りて欲しいと話されていました。山本先生と共に安全第一を深く追求され研究を重ねられています。静かな情熱が伝わり、一日も早く普及されることを心から願っています。
 


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