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発表を受けてのシンポジウム
<コーディネーター>
 総合ディスカッションに入らせていただきたいと思います。今回痰吸引、いわゆる吸引問題を考えるシンポジウムを開催いたしましたのは、いくら重症であっても、先生方が何人も言葉に出されましたけれども、やはり在宅化というところが重要なわけでございます。
 この在宅というところで、最初に今村先生にお尋ねしたいと思います。先ほど発表の中で、在院日数ということで、大体平均的に20日位ですね。これを切る位になって来ていると。これと病院の位置づけといいますか、考え方と言うか少しお教えいただけるとありがたいと思います。
 
<今村>
 スライドの中でも示しましたけれども、たとえば拠点病院、協力病院、14病院熊本県にございますけれども、その半数以上が一般病院であるということなのです。ということはお話の中でも触れましたけれども、やはり一般の入院扱いということになります。
 やはり病院の事情というのが優先されて、入院が24日以内とか21日以内とか、平成18年に診療報酬改定されまして、ますます入院期間の短縮化というのが、それぞれの病院の経営的な課題として優先されますので、その辺がやっぱり非常に加速化されてくるだろうと思います。
 だから一般病院における入院の場合には、やはり短期間の入院しか現実的には難しいということになりますから、緊急避難入院であったり、或いは短期間のレスパイトであったり、という事になると思います。そうじゃない部分、長期の入院に関しては、入院期間にあまり関係しない包括医療病棟とか、それから障害者自立支援法が出来ましたけれども、その事業体としての介護療養型の病棟という所が、その対象病棟になるのではないかと思います。
 
<コーディネーター>
 障害を負っても、病院はいわゆる特別な障害もしくは手がかかる状況でなければ、もう大体退院して頂くという方向が、これは国の医療改革・財政構造ですね。そこら辺も相まってこれがトコロ天じゃないんですけども、国の事情が病院の方にだんだん流れてきている。病院でそのような状況になれば、やはり在宅という位置づけになると地域の環境はどうか、という具合になってくるわけですね。まず、看護協会の方で吸引問題に関しての検討がなされていくつかの条件というのが出されております。ここを柊中先生の方にご紹介していただきたいと思います。
 
<柊中>
 私も看護師ですので看護協会に入ってますけれども、協会ニュースであったり、もし今日看護協会の方がお見えになっていたらご意見頂けたらありがたいんですけれども。先ほど海野さんのご報告にもありましたように、この平成15年に出された報告書というのは、もともと看護のあり方検討会で検討なされて、ALSに関して分科会が発足しました。それによってまとめられた報告書ということですよね。その中で春風ヘルパーステーションの寺田さんのほうからご報告があった内容というのは、その報告書に書かれていた1項目から6項目がほとんどきちんと整備されていたから、すごく上手くいってらっしゃるんじゃないかなというふうに思っているんですね。この報告書をよく読んで下さいと先ほどシンポジストの先生からもご発言を頂いているのですけれども、やはり療養環境の管理、それから在宅患者の適切な医学管理、それから家族以外の者に対する教育、でやっぱり敢えてここで家族以外の者というふうにまとめてあるのは、別にヘルパーだけが指定されているわけではなくて、家族以外の者ということであれば、ボランティアだったり、友人の可能性もありますし、ということで家族以外の者と表記してあると伺っております。そして患者との関連、関係ですね、先ほど寺田先生の方からはすごく事前に訪問したり、実技指導を受けたことで患者さんが安心して下さった。というふうなお話がありましたけれどもそれを確立していく。そしてやはり大事なのは医師やナースとの連携による痰吸引の実施ですね。ヘルパーだけが吸引をするというわけではなくて、いかに医師やナースと連携していけるのか。春風ヘルパーステーションは、訪問看護ステーションと一緒に併設されていますので、そういったあたりが、すごく上手く連携をされることが出来たんだな。と先程のお話を聞いてうかがいました。それから緊急時の連絡支援体制の構築、消防署と連絡を取ったり、ちゃんとなさっていましたので、そういったところとか、これは今村先生のお話にもありましたけれども、ショートステイは受入れて下さるという、県下の協力病院のアンケート結果も出ていますので、そういった所を上手くいかに活用していくかといった中に、この吸引問題というのはあるのではないかな。というふうに私自身は思っております。確認したいと思っているのは、今年は本当に見直しの年っていわれているのですけれども、じゃあ厚生省はどういうふうにこの問題を見直ししていこうと思っているのかという方向性は、すごく大事ではないかなというふうに思います。そのあたりのことをよろしければ、海野さんにお話いただけたらありがたいと思っております。
 
 
<海野>
 厚労省の人間ではないのであまり適切な事は言えないかもしれませんけども、ただ大きな流れとしては、患者さんが実際望む療養環境を整備していきましょう。という方向性は大きく変わりはないので、これまでやってることをNGにしてまた後に戻りますという話しは、協会側の方には伝わってきてはいません。ただ各先生方がお話いただいたとおり、患者さんが実際に望む安心安全が、どういう状況ならばできるかとか、そこら辺をもっと意識の、関係者の意識の高いところは、十分そういう事故等は起きないとは思うのですが、実際に本当に全国くまなくという場合には、そこら辺をどういうふうに担保していったらいいのか、というのがまた今後厚労省の中の課題認識でもあるのではないかとこちらが勝手に思っているだけですいません。
 
<コーディネーター>
 ここでフロアの方からご質問とかありましたら受けたいと思うのですがいかがでしょうか?・・・
 後で時間もありますので直接聞いて頂いてもいいかなとも思いますけども・・・
 ・・・ないようですので私の方で進めていきたいと思います。
 いわゆる看護業務であるということがいわれている訳ですね。そして医師の指導の下で看護師の指導を受けて吸引をやると理由がある訳ですね。傷をつけないように痰を寄せるというかマッサージというか、そういった基本的な訓練というか、そういうのを受けてからでないと単にただ管を入れて採ればいいというわけではない。ヘルパー事業所で、吸引って入れて取るだけだろうって思われたら本当に大間違いで、基本的な訓練、看護師さん達は、何十時間もやはり受けておられるわけですね。ですからヘルパー2級とか、1級取って現場に入られて、ここですぐ痰吸引が出来るかといったらそうじゃない。ここでもう一度海野さんにお尋ねしますけれども、家族の立場としてヘルパー事業所にお願いするとなった場合、どれくらいの事を事業所として必要と思われているかお尋ねします。
 
<海野>
 実際に家族の立場であると同時に、最終的に吸引を受けるのは患者さんになるので、患者さんから見て安全・安心に、この人は吸引が出来るなと思われるレベルが必要な基準だと思います。それが実際に患者さんにとってみたら、そこのレベルに達するのがヘルパーのAさんBさんCさんそれぞれ違いはあるでしょうし、そこら辺の違いを医療職の方達から適切にサポートしていただけるように。当然、習得が早い方もいれば遅い方もいるでしょうし、それが何時間ならば当然研修って何時間っていう時間数が出てくると思うのですが、じゃあ時間数が必ず何時間ならばOKかというと、決して時間数がまた目的になりかねないので、何のために、誰が、何を、どういうことが必要か、というのにウエイトを置いた方がいいのかと私なりに意識は置いています。
 
<コーディネーター>
 なるほど。ということはまず家族がというか当事者が、もうそろそろいいかなと言ってもらえるまでは、まだ勉強していかないといけない。というような感じでいいですか?
 
<海野>
 当然、基礎知識は関係者の方の指導の下に基づいて、知識・技術を習得する必要性はあると思うのですが、先ほど山本先生から吸引のオープンの方法について教えて頂きましたけれども、患者さんによっても、そもそもオープンの吸引の方法すら知らない患者さんもいらっしゃいます。地域によっては、だからそういうその個別の知識技術を、まず最低限関係者の方から教えていただいて、あとは患者さん個々の個別性が、また吸引に対する要望の好みといったら変かもしれませんけども、やっぱり個別性もありますので、そこは患者さんの個別性にしっかり対応するためには、最終的な判断はやっぱり患者さんが一番分かっていらっしゃるだろうと。で、患者さんの意識判断が難しい場合には、一番そばにいらっしゃる患者さんの状況を一番詳しい方が、当然そこでサポートして下さるのは助かる場面だとは思っています。
 
<コーディネーター>
 判りました。先ほどヘルパーステーションの寺田先生からご発表頂きましたけれども、本音のところ痰吸引を引き受けるという時に、いろいろ事業所サイド、またスタッフでも葛藤があったと思うんですね。
 そこら辺を少しお話いただけるとありがたいですけれども。
 
<寺田>
 はい、今のところスタッフが13名いますけれども、その時経験があったスタッフは、その中の2名だったんですよね。あと2人は研修をすることによって少しは。確実に毎回私たちが吸引をする、という事例じゃなかったものですから、あくまで奥様が、奥様の方が全部できるけれども、ほんの疲れた時だけという安心の提供ぐらいの吸引の依頼であったものですから受けました。リスクだけが高くてなかなかですね、前の準備の研修の時間とか、いろいろ含めたら今の単体の訪問介護事業所では、ちょっと無理があるかなーというのが現実問題として考えられます。
 よそが受けられない理由は経営面からもあると考えます。うちの場合は併設で元々がそういう在宅ホスピス、というので関わっているという実績があったので、そういうことから引受けました。
 個人のレベルでの答えじゃなくて管理者としては、不安な状態ではさせたくなかったので、受けるのはそこで迷いました。


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