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吸引問題を考えるシンポジウム ?人工呼吸器装着在宅療養者の療法支援のために?

 事業名 難病患者の社会参加へ向けたシンポジウムの開催
 団体名 熊本県難病支援ネットワーク 注目度注目度2


(3)ケア提供者側の現状と課題
春風ヘルパーステーション 管理者 寺田 節子さん
 
 春風ヘルパーステーションで管理者をしています寺田です。宜しくお願いいたします。今回こういう場で現場の声を聞いていただけることが出来ることを、とても嬉しく思っています。まず、私の事業所の紹介をさせていただきます。
 熊本駅裏の春日地域で春日クリニック併設の、春風ヘルパーステーションとして、平成14年9月より開設して現在に至っています。今回このような場でヘルパーステーション事業所の代表として発表させていただくことになったのは、ALS患者の在宅ケアに関わったのがきっかけです。
 課題提供という形で発表の依頼があり、お引き受けしたという経過をまずご報告いたします。
 当、春風ヘルパーステーションは春日クリニックの併設事業所であり、他に訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所、デイサービスも併設されております。春日クリニックは平成4年5月の開設当時から、在宅ホスピスに取り組んできたこともあり、訪問看護ステーションは、ホスピスケアなどの実績があります。当ヘルパーステーションが出来ましたのも、在宅を支援していくためには医療だけではなく、介護面での生活支援が必要だと、患者さん側からのニーズに答えて開設されたと聞いております。
 このような体制の中で、医療スタッフの連携の体験があるということで、依頼があったのだと思います。私の事業所に依頼が来るまでに、ALS患者さんの自宅近隣の事業所を何軒も依頼されたそうですが、引き受けてもらえなかったと聞いております。当事業所も患者さん自宅まで10km以上あり、その点だけからみても引き受けるのには躊躇しました。
I なぜ引き受けることになったのか?(スライド2、3)
(1)担当ケアマネージャーの熱心さと、本人、家族の思いが伝わり、在宅サービスを担うスタッフとしてどうにか対応してあげたいと心が動いたからです。
(2)今後、施設から在宅へ患者が移行していくのは間違いなく、医療スタッフと、チームの組めるヘルパーステーションが必要であり、ニーズに対応できるヘルパー養成が必要と考えている時期だったため。この2点から引き受けることに決めました。
II 人工呼吸器装着在宅療養者支援を行うに当たり、困惑したこと。(スライド4、5)
(1)業務として行うのには、法的整備ができていない。医療行為を行うことで、事故が起こる可能性がある、その責任をどこが負うのか。
(2)吸引の経験が無く、吸引の教育を受けたヘルパーが少ない。
(3)研修時間の確保が困難。受けるからには危険を100%回避できるような研修を修得したメンバーで担当したいと考えるが、日中ベテランのスタッフを研修に出して勤務体制が組めるか。
(4)院外の医師、他訪問看護ステーション、他事業所と細かい連携が取れるか。
 でも悩んでばかりでは何の解決にもなりません。不安材料を打ち消すための対処法を考えることが先決問題でした。(スライド6、7、8)
III リスクマネジメントとして
(1)責任の所在を明らかにしました。事故が起きた時の責任問題などの責任の所在を明らかにしました。事前契約の時点でケアマネージャーより妻へ、本来吸引という行為はヘルパーの業務では無く、出来る限り家族で実施してもらい、家族の責任の下で緊急時の依頼があったときのみ対応する。ということを説明してもらいました。
(2)緊急時の対応について、担当の訪問看護ステーションスタッフとも具体的な打合せをすることにより、自分達の安心にもつながったと思います。不安材料2番の吸引の経験が少なく、研修を受けたスタッフが少ないと不安、不安を解消するための研修会を実施しました。(スライド9、10)
研修会は1 実習前にケアマネージャーと訪問
2 実習を兼ねた退院前訪問 再春荘病院との連携室とのナースとの連絡
3 併設の春風訪問看護ステーションに研修を依頼
IV 研修の実際
 再春荘熊本病院での実習は、実習期間平成16年11月13日から11月25日の間で1日2時間の9日間、参加人数は4名、1日1名の参加で、行き帰りの時間を入れると半日がかりでした。
 実習内容としましては、気管切開部からの痰吸引の方法、四肢リハビリ、排便処理、コミュニケーションの方法などです。(スライド11)
 気管切開部からの痰吸引の方法を担当看護師より実技指導を受けました。その後、手足のリハビリということでさすったり、四肢曲げ伸ばしの軽い床上での運動を、奥さんと一緒に行いました。そして随時尿器での排泄介助や排便の処置の援助、コミュニケーションの方法の習得、声が出ないため筆談での方法と、タッチセンサーによるナースコール対処方法等体験学習しました。
 実習の意味、緊急時の対応のため現場実習を行いました。訪問看護ステーションの看護師も同行し情報交換を行いました。実習を行うことで、本人、妻、と4名の担当スタッフが顔見知りとなり、コミュニケーションがスムーズになりました。(スライド12)
 実習をしたことでALS患者の方の吸引行為の頻度の多さと、単なる手技動作ではない、生命に関わる危険性を持った行為であること、吸引行為はやはり医療スタッフが基本的にはやるべきだという事を再認識しました。あくまで、緊急時の対応ができるために研修したのですが、基本的には家族や医療スタッフである看護師が、実施してもらうことを再認識しました。
 再春荘熊本病院での自主実習に入り対応したことで、在宅へ帰られる間に本人と家族とのコミュニケーションが随分取れるようになっていたことは収穫です。
 春風訪問看護ステーションの吸引の研修会、参加人数は春風訪問看護師4名とヘルパー全員13名、研修時間は18時〜20時の2時間位を使ってしました。吸引研修の実際としまして、開所当時から継続してやってきている研修会を、今回は吸引というテーマしぼって春風訪問看護スタッフに依頼しました。日中は全員参加することが出来ないため、夜間帯を使っての研修会です。
 勤務時間外の貴重な時間にも関わらず訪問看護師4名全員で18時〜20時まで付き合って指導していただきました。これは春風訪問看護ステーション管理者浜崎より、看護ステーションの吸引マニュアルに沿って講義を受けている資料です。(スライド13、14、15、16、17、18、19、20)
 吸引のマニュアル項目は、吸引の対象者、吸引の必要物品、吸引カテーテルの取扱い、吸引の操作手順、吸引の注意事項、吸引指導ポイント、必要物品の注文場所等などです。次の4枚のスライドはその時の吸引研修会の様子です。これは吸引マニュアルに沿って浜崎部長より講義を受けている時のスライドです。次は吸引手技動作の実際の講義を受けているところです。次は13名一人ずつ実技指導を受けました。次は吸引に対する不安から実技指導を受けたことで少しずつ解消されていきました。
 ALSの患者さんを受入れるにあたり、事前準備としてステーション一丸となりこれだけの研修をしてから望みました。これからALS患者の方の事例紹介をすることにより、ケア担当者側からの課題提供をさせていただきます。(スライド22)
 
<事例紹介> N氏 年齢82歳 診断名 筋萎縮性側索硬化症(ALS)慢性肺気腫、病院での様子は気管切開にて人工呼吸器装着中、30分毎の吸引が必要でした。胃瘻造設・経管栄養中
 
 コミュニケーションとしまして、筆談、この方は、か細い線タッチでのカタカナのみでの筆談ができていました。あと頷き、顎でタッチセンサーによるナースコールを使われておりました。
本人、家族の要望(スライド23)
本人:これまで入退院を繰り返してきたが、これが最後の自宅療養の機会かもしれない。もう一度だけ自宅で過ごしたい。短い期間でもいいので帰りたい。
家族:本人の意思を尊重して在宅で見ていきたい。基本的には、吸引を始めとする身の回りの世話は自分がやれるが、緊急時や体調不良時にはヘルパーさんにお願いしたい。吸引などで事故発生時の責任は家族で負います。
 キーパーソンは妻、家族への説明としまして、本人、家族へも病名は告知してありました。家族構成は妻と次男夫婦の4人暮らし。支援経過としまして、平成16年11月8日にケアマネージャーから相談と依頼の挨拶訪問あり。11月12日にケアマネージャーと病院へ同行訪問しております。
 同行訪問したことで、実習をぜひさせていただきたいということで、自分達の方から申し出て11月13日から25日までの間に9日間、再春荘病院にて現場実習をうけました。
 11月22日退院前サービス担当者会議が、患者さんの自宅で行われております。
 11月27日退院後サービス担当者会議、退院されたときに皆で迎えて、その時は11名で会議を行っております。その日の夕方から、訪問介護のサービスがスタートしております。12月15日入院になることによってサービスが中止になりました。(スライド24)
 次は22日、自宅にてサービス担当者会議を実施した詳細です。帰られる5日前に全部の関係者が集まり、担当者会議が自宅にて実施されました。医師は入院時の主治医、ホームドクター2名、在宅介護支援センター、ソーシャルワーカー1名、南保健福祉センター保健師1名、訪問看護ステーション3名、居宅介護支援事業所ケアマネージャー1名、ベッドレンタル事業者1名、訪問入浴スタッフ看護師と介護スタッフ3名、医療機器業者2名、春風ヘルパーステーションより2名、合計16名でのカンファレンスでした。(スライド25)
 いかに皆のチームケアーが重要なケースかということを、強く感じたいいカンファレンスでした。情報の共有と役割分担を確認することで、チームで支えるという連携によるケアの心強さも感じました。これは在宅関係機関の連絡網です。緊急時の連絡網も確認しました。緊急時の対応医療機関の確認をしっかり出来て、医療面での連携が利用者、そして提供する私達の安心の提供になると強く感じました。(スライド26)
 これはN氏の在宅での週間サービス計画です。訪問看護師の訪問は毎日1回13時〜14時の黄色い部分です。訪問診察は週1回水曜か金曜に計画されております。訪問入浴は週1回木曜日14時半〜15時半オレンジ色の部分です。ヘルパーのサービスは朝8時〜9時の1時間と夕方18時半〜19時半の1日2回の訪問でした。緑色の部分です。その外酸素機器と特殊寝台とエアマットをレンタルされていました。(スライド27)
 在宅での様子:家族が退院に合わせてベッドを庭の見える位置にセットしてありました。自宅を強く希望されて帰られたN氏、次男さんからN氏は元気な頃趣味で庭木の剪定をされていたとのことで、庭が見える位置にベッドが設定してありました。父親であるN氏への息子さんの愛情が感じられました。(スライド28)
 ヘルパーが吸引の研修を受けたことが妻の安心につながりました。吸引の行為はほとんど主介護者である妻がされていました。それでもいつでもヘルプして見てもらえる、という安心感の提供にはなったようです。奥様の表情は病院で見るより自宅の方が随分穏やかな表情でした。本人と関わるスタッフとのコミュニケーションもスムーズでした。病院入院中に実習と顔合わせが済んでいたこともあり、本人及び介護者である奥様とのコミュニケーションが、4名のヘルパースタッフと取れていて、朝夕1時間のサービスがスムーズに支援できたような気がします。
 これは吸引を実際に実施した回数です。一生懸命研修をして、準備をしてこのサービスに入ったのですけれども、サービス期間は11月27日の夕方から12月12日の夕方までの16日間で終わりになりました。その中の述べサービス回数は31回です。その間で実際に吸引を実施したのは4回だけです。11月28日の朝の1回退院直後で、疲れが奥様に出ておられて眠れなかったとのことで、奥様の依頼で実施しています。12月5日の朝と12月6日の朝、これも奥様の体調不良で風邪気味ということで、実施しています。あと12月10日夕方1回、このときも奥様の体調不良時に実施しています。
 人工呼吸器装着の方の吸引はどれだけ研修をしても、いや研修をしたからこそ行為そのものが、単なる手技行為ではないことを再認識することにより、出来るなら医療スタッフに実施していただきたいとつくづく感じました。
 わずか16日間のサービスでサービス中止となったものの、事前学習の機会が持てたこと、そしてそれが各個人の不安解消と質の向上になったことと思っています。それと同時に医療スタッフとのチームを組んでのサービスは、ケアスタッフも的確な報告、連絡が出来る観察力も求められるので、もっともっとたくさんの研修が必要だと強く感じました。春風ヘルパーステーションの取り組み、質の向上のために、毎月1、2回の研修会を実施しています。開設当時から実施している研修会の必要性も再確認できました。開設してから3年7ヶ月経ちましたがお蔭様で最初3人のスタッフで始めたヘルパーステーションも現在、介護福祉士5名、ヘルパー1級1名、ヘルパー2級7名、合計13名の構成です。(スライド30)
 この取り組みを終わったあとも日々の研修会の必要性を強く感じているところです。これは春風ヘルパーステーションで施設内研修会の年間計画表です。(スライド31)
 4月体位変換、食事介助、管理栄養士よる治療食の研修、食事介助。5月衣類着脱、6月食事の世話、7月清拭の方法、8月座位、単座位、立ち上がり、9月トランスファー、10月車椅子介助、11月オムツ交換、便器、尿器の当て方、12月リハビリ体操、1月体位変換、2月情報伝達研修報告会、3月利用者サービスについての情報交換会、3月ターミナルケアの研修会など等です。
 これは管理、浦田管理栄養士により減塩食、糖尿病食などの特別食などの講義を受けたあと実際に調理実習をしているところです。ヘルパー全員参加のため夜間帯を使っての研修会です。
 (スライド32、33、34、35)。これは併設の訪問看護ステーションとのターミナルケアーを、うまく支援できるようにと訪問看護ステーション管理者浜崎より、メンタルケアの講義を受けているところのスライドです。(スライド36)
 次は春日クリニックと地域支援センタースタッフが、細かな情報の共有と交換をするための在宅支援調整会議の様子です。毎週木曜日朝の時間を使って実施しています。(スライド37)
 次は介護保険更新時やサービス内容を変更した際実施している会議です。家族、本人、主治医、看護師、サービス事業所担当ケアスタッフなどの関係者での検討会での様子です。情報の共有化をすることにより、ケアプランに基づいたサービスがより効果的に実施できるための会議です。(スライド38)
 次は、私の地域の安心ネットワークの図式です。(スライド39)
 在宅サービスしていくのには、まだまだ社会資源に支えられなければならない事項が沢山あると思います。私のところでも地元の皆様から助けてもらえるような拠点作りを今目指しています。それが安心のネットワークのこの図式です。住み慣れた地域で、なじみの関係でお互いに支えあうこと、そんな地域のネットワーク作りが一番大切なキーワードだと思います。
 これからのホームヘルパーの課題。(スライド40)
 事例発表をしながら感じたこれからのホームヘルパーの課題です。
(1)ホームヘルパーには段階的に能力に合った研修が必要です。
(2)医療スタッフとのネットワークは必須です。質の向上により、ひいては信頼と安心の提供になるのではないかと考えます。
 春風ヘルパーステーションの支援した難病の方の人数です。シャイドレガー症候群が1名、筋ジストロフィーが2名、脳性麻痺が1名、パーキンソン病が4名、ベーチェット病が1名で合計10名です。(スライド41)
 訪問介護でサービスをしている利用者の方の重度の方の割合は、どこの事業所もまだまだ少なく、それはとりもなおさず、ヘルパーの身体介護などの経験の少なさにも繋がっています。私の事業所でも難病の方の訪問介護の経験件数は、開設して3年8ヶ月経ちますがまだ10件しかありません。
 在宅生活を希望されてもその受け皿である医療を始めとする福祉サービスも、整備不足の現状では、なかなか安心して病院から在宅へは移行できない方が沢山おられると考えます。
 吸引を始めとする医療行為とされてきたことが、一定条件下でヘルパーの業務として認められたにしても、命に近い部分の手技動作行為なので、段階に応じた研修がぜひ必須だと思います。
 医療と介護の隙間を埋める専門的な介護サービスの必要性が、今出てきているのではないかと感じます。介護職で訪問看護師などとチームを組んで、サービスに入れるような介護スタッフを育成するべきカリキュラム作りが先決問題かと考えます。
 それから現在ヘルパーの研修の機会がとても少ないように思います。早急に県主催での許される医療行為の手技などの講習会を、定期的にぜひ実施していただきたいとこの場をかりてお願いいたします。より多くのヘルパーが参加できるように夜間帯での研修会をぜひ企画していただくようお願いいたします。
 それから医療依存度の高い在宅療養患者の、在宅支援をする際の心強い医療スタッフである訪問看護師との情報交換会などの勉強会にも、是非参加していきたいと考えています。もっと慢性疾患の方々が安心して在宅へ移行できるよう、医療と介護がチームを組んでサービス提供できるようになることを願っています。ホームドクター、訪問看護師、ヘルパーが連携を組みサービス支援することで、熊本の在宅療養患者および在宅サービス利用者の笑顔が増えることを願って、足元から始めの一歩を踏み出したいと考えています。ご静聴ありがとうございました。


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