司会: ある方が教室崩壊、学級崩壊が起きている共通項は「先生の声が小さい」と言っていましたが、いじめや不登校が他よりも多い先生というのは何か共通項があるのでしょうか?
原田: 父性力が発揮出来なくて子供に迎合する先生です。暴力事案やいじめなどが山ほど出ています。
司会: 若い一、二年目の先生は頼りないかも知れないけれど具体的にどういう言い方をすれば迎合型でなくなるのでしょうか。
原田: 厳しく人と対峙した経験や、もめる事がないまま教師になるので厳しくしろと言われても出来ないので教壇に立つ前に厳しくするとはこういう事なのだと経験させる事が必要です。教師といっても今の若者と同じで仕事が教師というだけであってコミュニケーション不足のまま大人になってくる訳ですから、そのまま現場に出すのは危険なので手前で現場のシミュレーションをロールプレイングも含めてたくさんやらせていかないといけません。
長田: 鳶の親は子供が鳶になっても知恵がありますからいいのですが鷹の親子は優秀だから高いところを悠々と飛ぶ、ある時に親の都合の良い子になって疲れて鳶の世界に落ちてしまって親は恐る恐る舞い降りると自分は鷹の世界しか知らないからどうしたらいいのか分からない、苦しみに関しての知恵や力がないのです。
司会: 長田さんは不登校や引きこもりの親の教育を行っていますが、その時に学校の先生と会う事はあるのですか?
長田: 親は学校の先生、お寺のお坊さん、弁護士と様々です。子供も優秀ですが親に知識はあるけれど知恵は全くありません。だから苦しみ、乱れる事に対して自分が転んでいないから我が子が転ぶと、どうやって立たせたらいいかが分からないしアタフタしてしまうのです。そして親にたて突いた事もないので反抗されるとタジタジになって全ての自信を奪われるという人が多いです。
司会: 川口先生は自分の生徒に不登校やいじめというものはなかったのですか?
川口: 一人、彼女にフラれたという奴がいましたが家庭訪問したら部屋でギターを弾いていましたのでドライブに誘ったら一発で直りました。私の時代は不登校の子はほとんどいなくて逆にたまには休めよと言っていたくらいです。
私は骨太の教員ばかりでなくてもいいと思います。「先生に出会えてよかった」という生徒に定年までに出会えればそれでいい、学校の教師にそんな力があると思っているのかと教え子で教職にある者達にいつも言っています。今、山口で小中高合わせて二百人くらいが教師をやっていますが相談してくるものですから「お前、いつ偉くなったんだ!」とよく叱っています。教師は皆、一緒になってしまったらいけないと思います。
司会: それでは原田先生に実践されてきた教育段階を時間軸を追ってお話頂きたいと思います。
原田: 最初は努めてたくさんの事を力で押さえ付けたら伸びると思っていました。確かに促成栽培ですので即効性はありますが私がいないとやらない表裏の激しい子供を作ってしまいましたので他律では駄目だと思いました。次に自分で律する事が出来るように教育しまして日誌で日々の活動を振り返る事が出来る、反省を徹底的にやらせて自分で自分の強みを活かせられる教育、つまり自律ですが大阪府で一番という結果は出ました。最後は生徒を日本一にすると言ったもののなかなか日本一にはなれなくて、がんばって教育をしている学校の見学に行きました。驚いたのは先生が教えないのに二時間、生徒だけで練習していて顧問の先生は私とお茶を飲んで話をしていて一度も指導しませんでした。私はあまのじゃくですから「よそ行きの練習をしているのだろう」と思って一人の生徒を捕まえて本当の事を言えと問い詰めたのですがやはり先生は教えないのだと言われました。自分の概念と全く違っていて裏で先生が練習メニュー、組織作りといった下準備をすごく努力しておられました。「他律→自律→自立」という教育を追いかけていったら一応、上手くいったのです。
司会: ありがとうございました。この後は会場からご質問を頂ければと思います。
【質疑応答】
会場: 長田先生と原田先生のお話から「教育再生会議はつまらないものだ」という風に聞こえたのですが今の問題として教育と家庭が離れている、先生方も離れていると聞くのですが私は「政治家の取り組みがよくない」という解釈を与えるのは教育者としてはよくないと感じましたので訂正をして頂きたいと思います。私達も政治に対して非常に打ちひしがれているのは事実ですが先生方が政治の世界に言って頂く橋渡しの行動もして頂きたいのです。そうしないと日本はよくならないし日本人として持っているものを代表者として選んでいるのが民主主義だと思うので更に政治家の人達が立法を作ってよくして頂く事が必要だと思うのですが、どうお考えでしょうか。(Hさん、男性、会社員)
司会: 親を立てる話と先生を立てる話がありましたが「もっと広く政治家も立てるべきだ」という事でしょうか。
原田: 再生会議の中身については全てに対して賛成は出来ません。間違い、おかしい、現場の事を知らないという事もあります。安倍内閣が発足して広く識者を集めて教育を真剣に考える事については賛成ですので応援したいと思います。政治批判など偉そうに出来る立場ではありません。
長田: 私も識者達が色々な事を考えてお金を使って美しい建物を建てるのはいいと思います。政治については難しくて分かりませんが、政治家が分かっていない事は多々あると感じますので、もう少し学校現場の事を勉強して頂きたいと思います。
会場: 先生方が分からない方にも教えて頂けるような活動をして頂けたら日本はもっとよくなるのでないでしょうか。私達が子供の頃は日教組がとても強くて運動会でも皆で手を繋いで競争はせず午前中で終わるようなものでした。また親と楽しい食事をするのも親のいない家庭があるからと教室で給食だったり、君が代は国歌ではないと連呼させられたりした記憶もあります。非常にやる気のある先生がいらっしゃる反面、大阪の成果主義制度は間違いだと思うのですが、そういう事をしないと日教組のように徒党を組んでいくのではないでしょうか。
原田: 異常な教育で異常な教師、もしそんな人が職場にいたら間違っているから正していこうとすると思います。私は現場でそんな人達と一緒になった時は正してきました。今回の再生会議、教育基本法の改正問題も含めて今、おっしゃった事を正常化しようとする中での打つ手の一つだと解釈してもらったらよいと思います。何を本当に言おうとしているのか、その辺はご自身で研究して下さい。
司会: 少なくとも組織率が急激に低下しているという現実からいくと今のような論点は教育現場で話されているより、もっと切羽詰った状態の問題の方に軸足が移っている気がします。日教組ではない組合もありますので日教組か否かという論点ではもはや済まされない時代になっていると学校現場では考えているのではないでしょうか。人間の尊厳としてのレベルで議論をしなければならないという形になってきているのでイデオロギーや一つの思考という次元ではなくなってきているという現実があります。
川口: 全くその通りだと思います。私も若い頃は組合の先生方と随分ケンカをしましたが、やがてはこちらの仲間に引っ張り込むという事もしました。吉田松陰も考え違いをしているのだから手を取って正しい道に導いてやるのが仕事だと言っています。組合の中にも本気でやっているいい先生も見てきましたし未だに付き合っている方もいます。考え方は全く違いますが人間として尊敬出来ますので組合だから一概に悪いとは言えないのではないでしょうか。
(質問二)
会場: 勤務校の現状から考えると、あと五年から十年もすれば大半の先生が退職されるので私達が全体の事を考えてやっていかなくてはならない立場になると予想されます。若い教師、若者に望む事があれば教えて下さい。(Mさん、男性、小学校教諭)
吉田: 私は「熱さ」だと思います。若い先生方にしかないもの、会社でもそうだと思うのですが新入社員が入った時に、いきなりスキルなどは求めませんが新人が入った事でリフレッシュされてルーティンワーク化された事や動きが悪くなってきたところが活性化されるという事はあります。だから若い先生がそれをなくしてしまうとそれこそ存在意義がないのではないでしょうか。大学を卒業してすぐ教職に就かれた方は二十二、三歳で保護者は四十、五十、六十と子育てとしてはベテランの年齢です。親達が先生に求めているのは熱さだったり真剣に子供達の人生を変えうるような影響を与えたりする可能性、つまり人としての人格を磨いて頂きたいのです。その中で勉強する興味を持たせて下さる事が出来るならば喜ばしい事ですから子供達は自分で学んでいくと思います。学校の組織という捉え方は解らないのですが自信を持ってぶつかって行って頂きたいと思います。
長田: 教育者である以上は中途半端に関わらないで欲しいと思います。関わったら最後までトコトン行くべきで子供達は中途半端で教育される事ほどかわいそうな事はありません。だから親になったつもりでやって下されば必ず子供は動いていきます。それから職人であって欲しいし、その上にはもっと強い願望があって校長先生にも職人になって動いてもらいたい、若い人はついて行くと思います。
原田: 若い先生だからという切り口だけではあまり思い付かないのですが、勉強をし続けて頂きたいと思います。現場に入ってしまうと忙しくなって実践で溺れてしまい学ぶという姿勢を私自身も失ってしまった事がありました。その時に大学の恩師に厳しく叱られて体育の勉強会や論文会などで学ばせて頂きました。それから職場のいつものメンバー以外の異業種や他の人と交流を持って広い視野で物を見る事を若いうちから癖付けしておかないと大学を出たままの力で一生行ってしまうような人が出てしまうのではないかと危惧します。
川口: しっかり学問をして人間として立派になって頂きたいです。三十代の頃に気付いたのですが人間は歳を取るだけでは偉くならないのです。バカはバカのまま歳を取る、立派な人間になろうと思ったら立派な人間になるべき生き方をしなければならないのです。長い間、生きているから俺の方が偉いのだという人が増えていますので学問をしっかりとして下さい。
司会: 私から一言、ぜひ師範塾に入って下さい。
今回のテーマである「大人が変われば子供が変わる」という時の主体変容、今日からご自身が変わって頂く、行動を変えるという事をぜひお願いしたいですし、かつ自分を変えるだけではなくて周りの人に対する影響をこの機会に与えて頂ければと思います。長時間ありがとうございました。
|