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4.3 TAPA
4.3.1 概要
 TAPA認証は、米国の非営利団体TAPA(the Transported Asset Protection Association: 輸送資産保全協会)が実施しているセキュリティ認証制度です。正確には、TAPAの実施するセキュリティレベルの認証・FSR(Freight Security Requirement)を指しています。その内容は、主に施設管理の監視カメラ設置、輸送時のGPS位置管理等に関するハード機器系の設置・運用基準が中心になっています。
 TAPAは、技術産業に共通する多様な施設・輸送上のセキュリティに関する脅威に対応するため、会員企業の先進事例と経験を活用することを目的として、電気電子機器、精密機器、貨物フォワーダー及び専門コンサルタント会社によって1997年に設立された非営利団体です。アジアの団体は2000年に設立されています。
 TAPAは、当初the Technology Asset Protection Association: 技術資産保全協会の略称でしたが、実際の認証ニーズの多様化に対応して、2007年1月に名称変更し、フルネームは、上述のthe Transported Asset Protection Association: 輸送資産保全協会に変更されました。
 我が国では、物流のグローバル化に伴い、わが国においてもハイテク機器・精密機器等の倉庫保管及び輸送中での盗難・破損が増加している中、社団法人日本工業技術振興協会が、2006年5月10日付でTAPA物流・ロジスティクスセキュリティ推進協議会を設立し、TAPAアジア委員会の推奨を得ています。
 TAPA物流・ロジスティクスセキュリティ推進協議会の主な活動は、以下のとおりです。
(1)国内外物流倉庫・輸送でのセキュリティの実地調査(TAPA市場調査)
(2)物流倉庫及び輸送会社へのTAPA認証取得へのセミナーや教育の実施
(3)物流倉庫のセキュリティ診断と建築・設計の指導(セキュリティシステムの導入)
(4)TAPA認証取得の事前準備(ドキュメン等マニュアル作成)
(5)海外へのTAPA物流ロジスティックス実態調査団の編成等
 
参考:TAPA取得企業の例
(1)日本通運株式会社
 海外では、アメリカ、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、フィリピン、インドネシア、マレーシア、日本国内では成田空港、関西空港などのロジスティクスセンターでTAPA認定を取得。日本通運では、輸送システムの品質向上をめざし、国内および世界各地でTAPA基準の認定取得に取り組んでいます。
(2)株式会社近鉄エクスプレス(KWE)
 成田ターミナルにおいて2003年12月16日、TAPAが定める貨物の保安管理に関する要求事項(FSR-2005)に対しクラスAの認証を日本国内の邦人フォワーダーとしては初めて取得しました。
(3)郵船航空サービス株式会社
 2003年3月にYAS香港でTAPA CLASS Bを取得したのを皮切りに、現在では米国(8ヶ所)、シンガポール(2ヶ所)、マレーシア(2ヶ所)、フィリピン(1ヶ所)の13ヶ所でクラスAを、フランクフルトでのクラスB認定取得も含めると、14ヶ所でTAPA認定を取得している。Aを、フランクフルトでのクラスB認定取得も含めると、14ヶ所でTAPA認定を取得しています。
(4)DHLジャパン
 2006年1月に東京西部エリアをカバーする集配・営業拠点である府中サービスセンターと、熊本エリアをカバーする熊本サービスセンターがTAPA認証資格Aを取得。今回の資格取得により、DHLの国内でのTAPA認証資格取得施設数は、東京ディストリビューションセンター、関西国際空港ゲートウェイ、そして今回認証を更新した横浜サービスセンターに加え、5カ所となりました。東京西部および熊本エリアにはハイテク企業の研究所や製造施設が多く、サービスセンターでは半導体や電子部品などの高付加価値貨物の取り扱いが多いため、貨物のセキュリティに対する要望が強い。
(5)株式会社阪急交通社
 米国現地法人のシカゴ支店、ロスアンゼルス支店、マッカレン支店でTAPA認証クラスAを取得しています。
 
4.3.2 TAPA基準の内容
 TAPA認定基準の概要は、以下のとおりです。
 
4.3.2.1 TAPA認定基準の概要
 TAPA認定基準の概要は、ホームページに公開されているTAPA FSR2005 2004年9月10日改訂最終版によれば、以下のような構成になっています。
 
(1)貨物サプライヤーの最低保安要件(FSR)
 
・第1項 要件
・第2項 仕様
・第3項 様式
 
・第1項 要件の主要項目
(1)対象
(2)契約承認
(3)サプライヤーの保安組織
(4)リスク評価と監査
(5)保安・損失調査
(6)権利放棄
(7)サプライヤーの施設・車両保安
 
 規定の概要は以下のとおりです。
 
第1項 要件
 
(1)対象
(a)はじめに
 TAPAは、ハイテク関係、高付加価値商品を扱う会社の保安専門家及び関連事業関係者の団体です。TAPAは、貨物輸送や保険全般に関わる保安実態の改善を図ることを目的としています。物流事業者は、TAPA認証の保安基準を確保すべく活動することによってその物流品質の向上を図ることができます。
 
(b)貨物保安要件
 貨物保安要件(FSR)は、TAPAメンバー企業の世界中の積替・保管施設の安全性向上のために作成されました。
 FSR仕様は、サプライチェーン全体を通じて物流事業者が、最低限確保すべき要件及びその適用基準を定めています。TAPAメンバー企業がこの資格認定を受けた物流事業者を選定できるようにすることが目的です。FSRの適用の有効性は、物流事業者に依存しています。しかし、TAPAの認証・監査には荷主企業も関与します。
 FSRは、貨物輸送・保管契約における要件となり、物流事業者自身の保安要件となります。契約時の事前調整なしにはFSRのどの条項も意味がなくなります。
 
(c)FSR関連文書
・TAPA貨物評価ユーザガイド、2005年1月1日
定義・評価基準
・TAPA事前認証評価計画、2005年1月1日
事前認証計画・協議
 
(d)FSR適用範囲
 FSRは全ての地理的範囲及び全てのサービス提供範囲に対して適用されます。英語を第一言語としない国・地域においては、当該責務を、正確な翻訳・適用について訓練された第三の共同責任者に委託することができます。
 
(e)所要資源
 FSRの要件に適合するために必要とされる所要資源は、保安サービス・サプライヤー自身の責任と費用負担で整備される必要があります。
 
(f)定義
買い手:TAPAメンバー企業または認証機関、TAPAサービスの受給者
CCTV: 閉鎖回路テレビ
DVR/DVMD: デジタル・ビデオ・レコーダ
FSR: 貨物保安要件
Local crime: サプライヤー施設または輸送経路の半径5マイル以内で発生した犯罪
RSP: 小売販売価格
SCAR: サプライヤーの改善行動要件
TAPA CA: TAPA認証監査者
VCR: ビデオカセットレコーダ
 
(2)契約承認
(a)契約承認時の保安サービス・サプライヤーの責任
 契約が承認された場合には、サプライヤーはバイヤーの地域組織の代表者に当該契約書を提出する必要があります。サプライヤーの保安手続きは合意されたFSRと不整合はあってはなりません。全ての書類は機密文書として取り扱われます。
 サプライヤーの手続きに不適格な内容があった場合には、サプライヤーは以下の手続きをとる必要があります。
・契約日から60日以内に改善計画を文書で提出します。
・契約日から60日以内にTAPA認証基準を達成します。
・不適合部分について改善計画を作成し、60日以内に実施します。
・60日以内に達成できない場合には、その旨を事前に連絡し協議します。
・問題が発生した場合には、第三者機関による評価を行います。
 
(3)保安サービス・サプライヤーの保安組織
(a)サプライヤーの保安代表者
 契約発効日までに、サプライヤーは保安代表者を届け出る必要があります。保安代表者は以下の要件を満たす必要があります。
・FSRの要件を管理する責任があります。
・保安条件の内容を熟知している必要があります。
・地理的に離れた施設については施設単位に設置している必要があります。
(b)サプライヤーの損害調査者
 契約発行日までに、サプライヤーは、一人以上の損害調査者を任命し届け出る必要があります。買い手の施設で問題が発生した場合には、サプライヤーの損害調査者は直ちに調査し報告する必要があります。損害調査は、保安責任と同義です。
 
(4)リスク評価と監査
(a)リスク評価と監査のための契約者双方の責任
・買い手(保安サービス受給者)は、保安水準の監査権限を有しています。
・保安サービスのサプライヤーは、その費用負担でFSR基準を遵守し確保する必要があります。
・保安契約は、サプライヤーの下請け会社にも適用されます。
・買い手は、保安サービスの不定期検査権限を有しています。ただし、最短でも検査の24時間前にサプライヤーに通知する必要があります。
・TAPA認証はサプライヤーに監査終了から10日以内に通知されます。
・サプライヤーはFSR審査で60%以上の水準を達成していない場合には、認証を拒否されます。
・オプション的な保安内容については買い手に公開する必要があります。
・TAPA認証機関から改善指示が提出された場合には、10営業日以内にその改善方法を連絡する必要があります。
 
(b)サプライヤーの改善活動要件の監視
 サプライヤーは改善内容について、認証機関に月次で報告する必要があります。
 理由なく報告されない場合には、認証が取り消されます。
 サプライヤーは認証の取り消しに不満がある場合には、その旨を訴えることができます。
 
(c)保管施設分類の評価
 施設分類評価は以下の3つに分類されます。
・A: 最高水準の保安要件
・B: 中位水準の保安要件
・C: 最低水準の保安要件
 TAPAの認証機関は分類基準への適合性に関して定期的な監査を行います。
 サプライヤーまたは買い手は、施設改善を行ったと考える場合には、施設分類基準の再評価を要請することができます。
 
(d)施設保安監査日程
 契約の有効期間内において、サプライヤーは、監査日程に従った監査を実施することができます。サプライヤーの自己監査の結果は監査終了の2週間以内に報告される必要があります。
 
 このほか、以下のような内容が記載されています。
 
(5)保安・損失調査
(a)サプライヤーの調査責任
 
(6)権利放棄
(a)権利放棄
(b)権利放棄手続き
 
(7)サプライヤーの施設・車両保安
(a)手続き
 保安手続きの詳細は第2項に記載しています。
 
(b)サプライヤーの施設保安要件(要約)
 
(c)運営
 買い手の資産が、施設からトラックへ、トラックから施設や航空貨物取扱業者などへ移転する場所では、サプライヤーは全ての保安手続きがこれからの関係者に対しても実施されるように保証する必要があります。そうでない場合には、その内容を買い手に報告する必要があります。
 
(d)トラックによる高付加価値出荷(要約)
 買い手の施設間の輸送にあたっては最低の保安要件に適合する必要があります。
 次項の仕様では、その要件を示しています。


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