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3.2.3 国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律施行規則の一部改正について
―海上保安庁警備救難部警備課―
3.2.3.1 改正の背景
 9.11同時多発テロ事件の発生を受け、国際海事機関において、船舶及び港湾施設の保安の確保を目的とした「1974年の海上における人命の安全のための国際条約SOLAS(条約)附属書」の改正が行われました。
 これを受け、平成16年7月に「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律」(平成16年法律第31号。以下「法」という。)が施行され、本邦に入港する船舶に対し船舶保安情報の通報等を義務付けるとともに、国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律施行規則(平成16年国土交通省令第59号。以下「規則」という。)において船舶保安情報の通報方法及び通報事項等を定めてきました。
 船舶保安情報の通報事項については、法目的に鑑みた必要性及び通報者の負担を考慮して決定しており、これまで乗員・乗客名簿については通報事項とするのではなく、必要に応じ提出を求めてきたところです。
 平成16年12月10日「国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部」において決定された「テロ未然防止に関する行動計画」において、「航空機及び船舶の長による乗員・乗客名簿の事前提出の義務化」について検討することが盛り込まれました。
 これを受け、関係省庁(警察庁、法務省、財務省及び海上保安庁)により検討した結果、各省庁所管の法令を改正することで、平成18年度中に乗員・乗客名簿の事前提出を義務化することになりました。
 
3.2.3.2 概要
 規則第75条に規定する船舶保安情報の通報事項について、次の事項を追加しました。
(1)乗船している乗組員の氏名、国籍、生年月日、乗員手帳の番号及び職名
(2)乗船している旅客の氏名、国籍、生年月日、旅券の番号、出発地及び最終目的地
(これに合わせ、各寄港地において乗船した旅客のうち本邦内において下船する予定の者の有無についての通報事項を削除する。)
 
3.2.3.3 関係する法律、法律施行規則
「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律」
―平成16年4月14日法律第31号― (抄)
(船舶保安情報)
第44条 本邦以外の地域の港から本邦の港に入港をしようとする国際航海船舶の船長は、第三項に規定する場合を除き、国土交通省令で定めるところにより、あらかじめ、当該国際航海船舶の名称、船籍港、直前の出発港、当該国際公開船舶に係る船舶保安証書又は船舶保安証書に相当する証書に記載された事項その他国土交通省令で定める事項を海上保安庁官に通報しなければならない。通報した船舶保安情報を変更しようとするときも、同様とする。
2. 前項の規定により船長がしなければならない通報は、当該国際航海船舶の所有者又は船長若しくは所有者の代理人もすることができる。
3. 荒天、遭難その他国土交通省令で定めるやむを得ない事由によりあらかじめ船舶保安情報を通報しないで本邦以外の地域の港から本邦の港に入港した国際航海船舶の船長は、国土交通省令の定めるところにより、入港後直ちに、船舶保安情報を海上保安庁長官に通報しなければならない。
4. (略)
(罰則)
第57条 次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
1. (略)
2. 第44条第1項の規定による通報をせず、又は虚偽の通報をして入港をした船長
3. 第44条第2項の規定による通報に際して虚偽の通報をした船舶の所有者又は船長若しくは所有者の代理人
4. 第44条第3項の規定による通報をせず、又は虚偽の通報をして入港した船長
5. (略)
 
「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律施行規則」
―平成17年9月21日省令第91号― (抄)
(船舶保安情報の通報の方法)
第74条 法第44条第1項前段の規定による本邦以外の地域の港から本邦の港に入港をしようとする国際航海船舶の船長が行う通報は、本邦の港に入港をする24時間前までに、入港をしようとする本邦の港を管轄する海上保安官署(管区海上保安本部、海上保安監部、海上保安部、海上保安航空基地又は海上保安署をいう。)の長に対して行うものとする。
2. (略)
3. 法第44条第1項後段の規定による船舶保安情報の変更の通報は、当該船舶保安情報に変更があった場合に、直ちに、当該船舶保安情報の通報を行った海上保安署の長に対して行うものとする。この場合においては、当該通報の変更の理由を、併せて通報するものとする。
 
(船舶保安情報の通報事項)
第75条 法第44条第1項の国土交通省令で定める事項は、国際航海船舶に係る次に掲げるものとする。
1. 名称
2. 国際海事機関船舶識別番号
3. 船種
4. 国籍
5. 船籍港
6. 総トン数
7. 航行速力
8. 所有者の氏名又は名称及び住所
9. 運航者の氏名または名称及び住所
10. 船長の氏名
11. 船長又は所有者の代理人の指名又は名称及び住所
12. 通報の時点における当該国際航海船舶の位置
13. 入港をしようとする本邦の港及び当該本邦の港の係留しようとする係留施設の名称並びに入港の予定時刻
14. 入域をしようとする特定海域の入域の位置及び入域の予定時刻
15. 本邦の港から出港をした後に入港をしようとする他の本邦の港及び当該本邦の港の係留しようとする係留施設の名称並びに入港予定時刻
16. 本邦の港から出港をした後に入域をしようとする特定海域の入域の位置及び入域の予定時刻
17. 船舶警報通報装置又は船舶警報通報装置に相当する装置の有無
18. 当該国際航海船舶が実施する船舶指標対応措置に対応した国際海上運送保安指標又は船舶指標対応措置に相当する措置に対応した国際海上運送保安指標に相当する指標
19. 船舶保安統括者又は船舶保安統括者に相当する者の氏名及び連絡先
20. 船舶保安管理者又は船舶保安管理者に相当する者の氏名及び職名
21. 船舶保安証書若しくは臨時船舶保安証書又は船舶保安証書若しくは臨時船舶保安証書に相当する証書の番号及び発給機関
22. 本邦の港に入港をする直前の寄航までの過去10回の寄港に関する事項であって次に掲げるもの
イ.各寄港地が所在する国の名称及び港名並びに入港及び出港の年月日
ロ.各寄港地において実施した船舶指標対応措置に対応した国際海上運送保安指標又は船舶指標対応措置に相当する措置に対応した国際海上運送保安指標に相当する指標
ハ.各寄港地において実施した船舶指標対応措置に加えて実施した措置があった場合は、当該措置
ニ.各寄港地において積載した貨物のうち本邦内において荷揚げする予定のもの及び本邦内において荷揚げする予定のない危険物の船積地、種類及び数量
23. 乗船している乗組員の氏名、国籍、生年月日、乗員手帳の番号及び職名
24. 乗船している旅客の氏名、国籍、生年月日、旅券の番号、出発地及び最終目的地
25. 航行中の異変その他当該国際航海船舶の保安の確保に関し参考となる事項
26. 通報者の氏名
27. 呼出符号
28. 海上保安庁との連絡方法
 
3.2.4 おわりに
3.2.4.1 今後の法整備について
 以上が関係3省庁が本年2月1日に施行した「テロの未然防止のための規定」の概要です。
 政府は、引続き当該規定の整備を行っており後述する規定が2007年度中に施行されると思われます。
 
(1)法務省入国管理局関係
 入国審査(上陸審査)時における外国人の個人識別情報の提供に関する規定等の整備については、「上陸審査時に外国人の指紋採取及び写真撮影をおこなうこと。また、電磁的方式によって指紋等の個人識別情報を提供されなければならない」等が検討されています。
(2)財務省関税局関係
 従来から行われてきた「貨物の事前情報の活用」の経緯は、
平成16年4月実施・事前報告要請制度の導入
船舶等の入港前に、積荷目録情報の報告を要請できる制度
平成19年2月実施・事前報告の義務化
船舶等の入港前における積荷目録情報の報告の義務化となっています。
 
 これらに加えて「輸入混載貨物等に係る詳細情報の提供要請」・積荷情報を利用した詳細な貨物情報の事前提出を要請できる規定の整備が行われています。
 
3.2.4.2 府省共通ポータル・シングルウィンドウシステムについて
 日本の法律ではこれら事前報告は、例えば法務省の案内文では、報告方法:法第57条第1項の規定による事前報告は、やむを得ない事情がある場合を除き、書面によるものとする。
)技術的修正により、電子情報処理組織による報告も可能であるように原則、書面となっています。
 予てより民間業界は、(社)日本経済団体連合会を通じて「輸出入・港湾諸手続の効率化に関する提言(2004年6月)」の中で、ITを活用した物流効率化とセキュリティ確保の両立の観点から、(1)輸出入・港湾諸手続の簡素化、(2)すべての申請書類の電子化、(3)情報の共有化などを求めてきました。
 
 これら提言もあって2005年11月には、FAL条約(国際海上交通簡易化条約)の対応が始まりました。また、2005年12月には輸出入及び港湾・空港関係手続業務の業務・システム最適化計画で、関係6府省システムに係る府省共通ポータルを構築し、次世代シングルウィンドウを実現することが決定されました。
 この府省共通ポータルは、2008年10月に完成・稼動の予定ですが、関係する省庁が電子化に向って連携して積極的な対応を行うことを期待してやみません。


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