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1.3 セキュリティ対策に関連する国内動向
 
1.3.1 政策群『安全かつ効率的な国際物流の実現』に関する関係省庁調整会議の設置
 平成16年5月25日関係省庁申合せ(平成17年3月30日一部改正、平成17年12月20日一部改正)において政策群『安全かつ効率的な国際物流の実現』に関する関係省庁調整会議が設置されました。同申合せでは、政策群『安全かつ効率的な国際物流の実現』の枠組みにおいて、物流セキュリティの強化と物流効率化の両立に向けての施策を講じていく上での各省庁間の連絡・調整を行うため、政策群『安全かつ効率的な国際物流の実現』に関する関係省庁調整会議(以下「調整会議」)を設置するとされ、調整会議の構成員が規定されています。調整会議の議長は、国土交通省政策統括官付政策調整官となっており、調整会議の庶務は、関係省庁の協力を得て、国土交通省政策統括官付において処理することになっています。
 
1.3.2 「安全かつ効率的な国際物流の実現のための施策パッケージ」
 平成17年3月30日、関係7省庁は、平成21年までの5年間で行う国際物流の諸施策を掲示した「安全かつ効率的な国際物流の実現のための施策パッケージ」を策定しました。
 同施策パッケージの概要は、以下のとおりです。
 
(1)物流セキュリティ等の強化
・物流セキュリティ関連情報の収集体制の整備
・船舶、港湾その他物流施設の保安措置の強化
・事業者別のコンプライアンス・ガイドラインの策定
・対米輸出円滑化に関するガイドラインの策定
・海上コンテナ陸上輸送に関する安全対策ガイドラインの策定
 
(2)国際物流の効率化
・スーパー中枢港湾プロジェクト等の推進
・3PL事業の支援等によるロジスティクス・ハブ機能の強化
・内航フィーダー輸送など国内ネットワークとの連携強化
・FAL条約の締結とBPRの推進
・業務・システム最適化計画の策定
 
(3)ITの活用
・総合的な電子化促進支援策の検討
・港湾物流情報プラットフォームの実現
・ITを活用したコンテナ管理体制の確立に向けた実証実験の実施
・港湾施設の出入管理の徹底のためのノンストップゲートシステムの構築
 
(4)国際社会との協調
・交通セキュリティ大臣会合の開催
・IMO、WCO、UN/CEFACT等を通じた国際協調推進協議会の設置
・進捗状況の点検・評価
・必要に応じ施策の見直し
・実務者による具体策の検討
 
1.3.3 「安全かつ効率的な国際物流施策推進協議会」
 その後、同施策パッケージに基づく諸施策を推進するため、平成17年8月9日、関係7省庁と22経済団体から構成される「安全かつ効率的な国際物流施策推進協議会」を発足させ、進捗状況の点検・評価のほか、必要に応じた施策の見直しを行うこととしました。
 同協議会企画調整委員会の下には、以下の4ワーキンググループ(WG)が設置され実務者による具体的検討が行われました。
・コンプライアンスに着目した施策連携検討WG
・米国等における物流セキュリティ対策への対応検討WG
・国際海上コンテナの陸上における安全輸送WG
・電子化促進に向けた環境整備の検討WG
 各WGの概要は、以下のとおりです。
 
1.3.3.1 コンプライアンスに着目した施策連携検討WG
 9.11同時多発テロ事件以降、セキュリティ対策の重要性が高まる中、グローバル・サプライチェーンの中でのセキュリティ強化に向け、国際海上コンテナ貨物の管理体制を確立する必要があります。
 国際海上コンテナに係るセキュリティ強化のために、外航船舶運航事業者、港湾運送事業者(ターミナル・オペレーター、海貨事業者等)、倉庫事業者、利用運送事業者及び貨物自動車運送事業者が、それぞれ自主的に取り組むことが望ましい具体的な措置とその評価に関するガイドラインを作成しました。具体的には、社内体制の整備、社員の能力の向上、設備・機器等の整備等について、検討しました。
 本WGにおいては、実務者による国際海上コンテナに係るセキュリティ強化のためのガイドラインについて検討を行い、「物流事業者による保安措置の強化に関するガイドライン」(平成18年3月)を策定しました。
 ガイドラインには以下のような項目が記載されています。
・貨物室管理
・アクセス管理
・貨物管理
・積荷目録手続
・従業員管理
・施設管理
・文書管理
上記措置の評価方法
 
1.3.3.2 米国等における物流セキュリティ対策への対応検討WG
 米国側のセキュリティ対策が原因により、対米輸出国側の事業者に大きな負担が生じている。特に、船積み24時間前までにマニフェストを提出するため、従来、船積1日前程度に設定されていたコンテナヤードへのコンテナ搬入締切り時刻(コンテナヤード・カット・オフ・タイム:CYカット)が約48時間程度前倒しされており、著しく物流効率が低下している状況にあります。
 このため、24時間ルール緩和は、当面の間、困難であるという現状を踏まえ、次善の策として、米国への輸出に際して、荷主、海貨事業者、利用運送事業者等と船会社の間での情報交換の方法や責任分担のあり方に関するガイドラインを作成したものです。これにより、一定の条件を備えたコンテナについては、十分なセキュリティ対策を実施しつつ、貨物情報の提出時期と分離してコンテナの搬入締切時刻を2006年までに概ね入港2日前(土日祝祭日を含む)に短縮することを目指とされています。
 本WGにおいては、米国への輸出に際して、荷主、海貨事業者、利用運送事業者等と船会社の間での情報交換の方法や責任分担のあり方に関するガイドラインについて検討を行ってきました。その結果、「情報交換の方法や責任分担のあり方に関するガイドライン」(平成18年3月)が作成されました。
 本ガイドラインの主要構成は以下のとおりです。
・リードタイム短縮に向けた各関係主体別の努力目標
・民間の関係者間での情報交換の方法
・トラブルが発生した場合の関係者間での責任分担のあり方
 
1.3.3.3 国際海上コンテナの陸上における安全輸送WG
 国際海上コンテナの陸上輸送については、コンテナ内における貨物の積み付け状況、コンテナ総重量、危険物の有無やその種類等についての正確な情報が、トラック運転手まで十分に伝達されていないため、不適切な積載等を要因とする横転事故の発生、荷崩れ事故等の緊急時における対応の遅れや二次災害発生の危険性等の問題があるとの指摘が従前からなされていました。
 こうした問題に対処するため、関係省庁間で意見交換を行い、コンテナ貨物情報の伝達に関する仕組み作りの検討を続け、昨年6月には国際海上コンテナの陸上輸送に関係する団体に対し要請を行う等、問題解決に向けた取り組みを進めてきたところです。しかしながら、関係各者における取り組みを示す具体的な指針等が存在しないため、情報伝達が十分行われていない状況にありました。
 このため、本WGでの検討課題として、関係者がそれぞれ取り組むことが望ましい具体的措置について検討を行うとともに、遵守が必要な法令等の規定を併せて取りまとめ、「国際海上コンテナの陸上における安全輸送ガイドライン」(平成17年12月)を策定しています。
 本ガイドライン記述事項の概要は、以下のとおりです。
・トラック事業者が必要とする安全輸送のための情報の入手・伝達方法
・過積載、偏荷重等の不具合コンテナ判明時の対応(連絡・依頼事項)
・危険物輸送について関係者がそれぞれ取り組むべき事項
・コンテナ内容物の問い合わせ時の対応(連絡・回答事項)
・積載方法等に関する発荷主への啓発
 
1.3.3.4 電子化促進に向けた環境整備の検討WG
 平成13年1月に政府が策定した「e-Japan戦略」では、重点政策分野の1つとして「電子政府の実現」を目指すことになり、2003年度には、電子情報を紙情報と同等に扱う行政を実現し、ひいては幅広い国民・事業者のIT化を促すことを目標とした。また、平成15年7月に政府が策定した「e-Japan戦略II」では、「日本の国際競争力の基盤となる効率的で質が高く、24時間365日ノンストップ・ワンストップの行政サービスを提供する。業務の外部委託や調達制度の改革等により政府行政部門の業務効率の向上を図り、財政支出を抑制しつつ、サービスの向上を実現する。このため、2005年度末までのできる限り早期に、各業務・システムの最適化に係る計画を策定する。」という方針が示されました。
 さらに、平成18年1月に政府が策定した「IT新改革戦略」では、今後のIT政策の重点のなかで、世界一便利で効率的な電子政府を目指すこととしており、「利便性・サービス向上が実感できる電子行政(電子政府・電子自治体)を実現し、国・地方公共団体に対する申請・届出等手続におけるオンライン利用率を2010年度までに50%以上とする。」ことを目標の1つに掲げています。
 本WGにおいては、輸出入及び港湾・空港手続関係業務に係る業務・システムの最適化計画策定の取組等と連携して、官と民及び事業者間での電子化促進に向けたグランドデザインについての検討と我が国で電子申請の原則化等を実施する場合に必要な措置と具体的な課題についての検討を行いました。
 この結果、本WGでは、「電子申請の原則化等を実施する場合の必要な措置と課題」(平成18年3月)をとりまとめています。ここでは、電子申請の原則化等を実施する場合の必要な措置と課題を以下のような項目でとりまとめています。
・関係者間の合意形成
・手続の整理
・電子申請代行サービス業の育成
・電子申請の原則化に向けた研修制度の充実
 
1.3.4 平成18年度の動向
 以上のようなガイドライン公表後、平成18年10月に設置された「アジア・ゲートウェイ戦略会議」(議長=安倍晋三内閤総理大臣)では、人・モノ・カネ・文化・情報の流れにおいて、オープンな経済社会を構築し、日本がアジアと世界の架け橋となる「アジア・ゲートウェイ構想」の推進に図ることとされており、日本版C-TPATの構築を含む物流(貿易関連手続等)に関する諸課題を集中的に討静するための体制として、「物流(貿易関連手続等)に関する検討会」を設置し(平成19年1月設置、同年2月第1回検討会開催)、物流分野におけるセキュリティと円滑化の両立に向けた具体的な制度等が、今後検討されることとなっています。
 こうした状況の下、財務省関税局においては、平成19年の通常国会における関税法の改正により、簡易申告制度及び特定輸出申告制度の改善等を行い、コンプライアンスの優れた者に対して、一定の通関上のベネフィットを付与する仕組みを改善する等、日本版C-TPATの導入にむけた基盤となるべき輸出入制度の改革に向けた取組を推進しています。
 また、「国際物流競争力パートナーシップ会議」における「国際物流競争力強化のための行動計画」では以下のような方針が示されています。
 
1.3.4.1 コンプライアンスに着目した輸出入制度改革
 税関・民間共同で国際物流のセキュリティ強化と円滑な物流の両立を実現するため、「物(モノ)」に重点をおいたリスク管理から「者(ヒト)」に重点をおいたリスク管理へと転換し、輸出入制度の改革や電子情報の活用によって、事業者のセキュリティ確保やコンプライアンスに対する取組み状況を反映させる日本版C-TPATを導入し、一貫した貨物管理のもと、安全かつ効率的な国際物流を実現するとしています。
 このため、当面、平成19年度において輸出入者のコンプライアンスに着目した下記のような既存の制度の見直し等を行うことが予定されています。
・あらかじめ税関長の承認を受けた輸入者が、貨物の引取り後に納税申告を行うことができる簡易申告制度について、税法以外の法令違反がないこと、法令遵守規則を制定すること等を新たに承認要件に加える見直しを行った上で、貨物の指定制度を廃止するほか、貨物到着前の輸入申告を可能とするとともに、事後の納税申告を一括して行うことを可能とする措置を講ずる。
・あらかじめ税関長の承認を受けた輸出者が、貨物を保税地域に入れることなく輸出申告を行い、許可を受けることができる特定輸出申告制度について、承認の要件に所要の見直しを行った上で、貨物が置かれている場所を管轄する税関長に加え、貨物の船積みを予定している港・空港を管轄する税関長に対して輸出申告を行うことを可能とするとともに、混載貨物を対象とする措置を講ずる。
・コンプライアンスの優れた保税蔵置場又は保税工場の被許可者を税関長が承認し、承認を受けた者については、税関長の指定を受けることにより新たに保税蔵置場又は保税工場を設置すること等を可能とする制度を導入する。
・混載貨物等の積荷情報を利用した輸入申告・通関審査を将来可能とすることを念頭に、輸入貨物について、その荷受人に対し、混載貨物等の詳細な情報を求めることができる措置を講ずる。
 なお、適用事業者の要件に申告等を電子情報で行えることを加えることにより、輸出入手続における電子化を促進する。
 
 また、国際競争力強化等のための通関制度の改善経緯は、以下のようになっています。
 
(1)輸出入者等のコンプライアンスに着目した制度の導入
(輸入)簡易申告制度の導入
・過去に税犯罪歴がない者を対象とし、納税申告の前に一定の貨物を引き取る制度の導入(平成13年3月実施)
(輸出)特定輸出申告制度の導入
・コンプライアンスの優れた者を対象とし、貨物を保税地域に入れることなく輸出申告を行い許可を得ることができる制度の導入(平成18年3月実施)
 
(2)保税:貨物の事前情報の活用
・事前報告要請制度の活用:船舶等の入港前に、積荷目録情報の報告を要請できる制度の導入(平成16年4月実施)
・事前報告の義務化:船舶等の入港前における積荷目録情報の報告の義務化(平成19年2月実施)
 
1.3.4.2 コンプライアンス・プログラムの標準化
 特例輸入者、特定輸出者、保税蔵置場等の特定許可者及び通関業者のコンプライアンス・プログラムの共通化を図るとともに、これらのコンプライアンス・プログラムを有機的に連携させることにより、我が国の通関手続を網羅するコンプライアンス・プログラムを完成させ、これを日本版C-TPATの基盤とする。その際、通関手続に関連する運送事業者等のコンプライアンス・プログラムについて、ベネフィットのあり方を含め、関係省庁と連携を図りつつ検討を行うとされています。さらに、現在、関係各省庁毎に定められているコンプライアンス・プログラムについて、その対象となる事業者、目的等を勘案した上で、可能な部分についてはこれを標準化するための検討を開始することになっています。
 
1.3.4.3 日本版C-TPATに関する国際連携
 日米税関相互支援協定の下、リスク管理手法の開発・共同研究など、米国税関当局との連携を強化するとしています。


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