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瀬戸内海の潮流と潮汐について 潮汐編
うみは動いている!
潮汐の仕組み
 海水は、全地球の約70%を占めていることはご存じでしょう。その海水が移動することにより生じる現象で、馴染みの深い「潮汐」について説明したいと思います。
 瀬戸内海の、潮汐は日本有数の潮差(満潮−干潮)が大きい海域でもあります。日本で一番大きいのは、有明海で約5mありますが、世界では、カナダ南東部にあるファンデー湾で約15mになります。では、どうしてこのような海水の移動が生じるのでしょう。
 
 
 潮汐現象は、月及び太陽と地球との引力関係によって、地球表面の海水昇降(満潮・干潮)に伴う海水の運動と言われていますが、実は地球の運動(自転・公転)が大きな影響を及ぼしているのを知っていましたか。つまり、これらの力関係で満潮・干潮が起こり、その引き起こす力を「起潮力」と呼んでいます。
 
 
 ところで、なぜ、月に面している地球の反対側でも満潮になるのか疑問に思ったことはありませんか。
 
 図1を見てください。同じ地球の表面上であっても(1)、(2)、(3)では、月から受ける引力に差があります。それは(2)のほうが地球半径分だけ月に近い訳ですから、大きいはずです。次に図2を見てください。例えば、地球上の(2)、(1)、(3)に及ぼしている引力の大きさを3、2、1とします。
 起潮力は、遠心力(地球の)と引力(太陽より月の影響が大きい)の差で起きるので、(1)で遠心力と引力がつり合っていて、0とすれば、図3の様に(2)においては1、(3)においても1の差で起潮力が働いて、海面が盛り上がり満潮になるのです。ちょっと難しかったでしょうか?
 
 また、知ってのとおり、満潮・干潮の時刻は日々変わりますね。これは、月出の時刻が毎日変わることによるもので、月の方の影響が大きいからです。月−地球−太陽が一直線に並ぶ満月(月−地球−太陽)や新月(地球−月−太陽)の時は、潮汐差が大きい大潮。両方の力を打ち消しあう半月(地球から見て、月と太陽の角度が直角)の時は、潮汐が最も小さくなり小潮と呼ばれます。
 
潮汐用語
 潮汐の仕組みにでてきた大潮・小潮などは、漁師の方や海で釣りをする人の間で、海の満ち引きを表す言葉として使用されていますが、その他の潮汐に関する言葉について記してみました。
1. 大潮(おおしお):潮の干満差が大きい状態で新月(旧暦の1日頃)や満月(旧暦の15日頃)の前後数日間
2. 中潮(なかしお):大潮と小潮の間の期間で、旧暦の3〜6日、12〜13日、18〜21日及び27〜28日頃
3. 小潮(こしお):潮の干満差の小さい状態で、月の形状が半月になる上弦(旧暦の8日頃)や下弦(旧暦の22日頃)の前後数日間
4. 長潮(ながしお):上弦、下弦を1〜2日過ぎた頃、干満差が一段と小さくなり、満・干潮の変化が緩やかでだらだら長く続く小潮末期(旧暦の10日と25日)
5. 若潮(わかしお):小潮末期の「長潮」を境に大潮に向かって、潮の干満差が次第に大きくなっていき、潮が再び大きくなる状態を「潮が若返る」と言い、長潮の翌日をこう呼んでいます。
 
潮浪について
 瀬戸内海の潮汐による海水移動の潮浪(潮汐の波)について、紀伊水道と豊後水道から入ってくる様子を図4に示します。
 瀬戸内海の満潮は、図から解るように2方向から来ます。一つは、紀伊水道から入った潮浪が大阪湾に入り、明石海峡を通って備讃瀬戸に到達します。
 もう一つは、豊後水道から入った潮浪が2方向に分かれ、周防灘を西に進み関門海峡に向かうものと、東へ進み備讃瀬戸方向に向かうもので、これは、先ほどの紀伊水道から入った潮浪と備讃瀬戸付近で出会います。意外と会合する地点が東寄りとは、驚きになったことでしょうが、これらは、水深や地形の影響によるものと考えられています。
 干潮時は、同じように満潮時の経路で、外洋に海水が移動していくのです。
 
図4
 
潮汐にまつわるトピック
 このような事故がありました。岸壁に係留してあった給油船が宙づり状態になり、船は傾いてタンク内の軽油が漏れ出してしまい大騒ぎになったそうです。
 もう、お解りでしょうが、係留時にロープの長さを満・干潮の潮位差を考えに入れたのでしょうが、潮汐表の値よりも潮位が下がってしまったのが原因だったそうです。
 ですから、潮位には十分注意しましょう。因みに、六管区の験潮所で観測された過去9年の最大の潮位差は、下記表のとおりです。なお、この値は、気象等の影響も含んでいますので、潮汐表の値より大きい差も含まれています。
 
験潮所所在地 広島 徳山
潮位差 4.41m 4.43m 3.77m
 
 先に述べた潮位を、潮汐表の値より大きく変動させる要因の気象について触れてみましょう。最も影響力のあるのが台風です。台風の特徴は、気圧が低いこと・風が反時計回りで強いことです。気圧は、1hPa=潮位1cm変動します。通常は、気圧1013hPaで考えていますので、965hPaであれば、海面は48cm(1013-965)上がります。これに、風の影響が加わります。
 図5に簡単な台風経路を示してみました。台風A及びBのような経路の場合、広島湾は湾口が南を向いているため、風が広島湾付近に吹き込むようになり海水の吹き寄せ効果と、気圧の低下により潮位が異常に高くなる高潮という現象が生じ、沿岸部に災害を発生させます。逆に東側を通過すると、北風が強くなりますので、海水が南に移動するため潮位が下がる現象が生じます。
 
 最後に、第六管区海上保安本部のホームページで、瀬戸内海の主要港の潮汐に関する情報を提供しておりますのでご利用下さい。
 
アドレスは
です。
 


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