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瀬戸内海の潮流と潮汐について(潮流編)
 瀬戸内海は、潮汐の干満差が大きく、狭い水道や瀬戸等が多く地形が複雑であるため、全国でも潮流が最も早い海域として知られており、船舶の運航・海上作業や海洋レジャーなどを計画する際には、潮流の状況を知っておく必要があります。
 そこで、海上保安庁が発行している海図・潮流図等に使用している潮流用語について、これから説明していきたいと思います。
 潮流とは、潮汐の干満によって引き起こされる海水の周期的な流れです。
 
○上げ潮流・・・潮汐の上げ潮(干潮→満潮)中に最強となる方向の潮流
○下げ潮流・・・潮汐の下げ潮(満潮→干潮)中に最強となる方向の潮流
○流向・・・潮流の流れ去る方向(風は、吹いて来る方向)
○流速・・・潮流の速さ(単位は、ノット:knで、1kn=1852m/h≒50cm/s)
○過流・・・潮流の強い、狭い瀬戸などで発生する渦状の流れ
○憩流・・・潮流の流れが止まる(流速が0)状態
○転流・・・潮流が憩流後、流れの方向を変えること
○最大流速・・・大潮時のうち、ほぼ最大流速のこと
 
 今回は、広島湾付近の流れ(潮流)が強い、水道及び瀬戸を取り上げてみました。
図1と表1に、潮流が強い水道と瀬戸名及び流速を掲載致しました。
 ここに示した平均流速や最大流速の数値は、過去の観測データから計算上で求めた値です。実際には、地形等により岸付近で流れが数値以上に強かったり、渦状の複雑な流れが生じることがありますので、強流時間帯に航行する場合は、十分に注意する必要があります。
 
図1
 
表1
図中番号 水道名・瀬戸名 平均流速(大潮期) 最大流速(大潮期)
上げ潮時(kn) 下げ潮時(kn) 上げ潮時(kn) 下げ潮時(kn)
(1) 諸島水道 4.5 4.5 6.0 6.0
(2) 怒和島水道最狭部 4.5 5.2 - -
(3) クダコ水道 4.6 4.6 5.4 5.0
(4) 釣島水道 2.7 2.7 3.1 3.0
(5) 猫瀬戸 4.6 2.3 5.5 3.0
(6) 大畠瀬戸最狭部 6.3 6.3 6.9 6.8
 
 次に下の図をご覧ください。
 曲線は、潮汐(破線)と潮流(実線)を表しています。潮汐が満潮になって干潮に向かう時、時間が遅れて潮流が転流する(実線)様子が読み取れると思います。
 ご覧のとおり、満潮→干潮、干潮→満潮に向かっても、潮流の流向は、すぐには変わらないのです、止まらないのです。因みに瀬戸内海では、多くの島々があり、地形に影響されるので、転流は満潮後及び干潮後から約1時間位遅くなりますので、注意してください。
 
 
 ところで、広島湾域には特異な潮流をもつ場所があります。それが、音戸瀬戸で東方から広島湾に最短でいけるのが特徴ですが、幅が狭く湾曲していて見通しも悪く潮流も強いので注意が必要です。以下に、その特徴を記載します。
 
音戸瀬戸の潮流特徴
 北流は、呉の潮汐で満潮時から約1.5〜2時間後始まります。その後約1〜1.5時間後に第1回目の最強流速に達します。(大潮時には、約4ノット。小潮時には約2〜3ノット)その後、いったん流速は滅じ約3〜3.5時間後に最も弱くなり(流れが止まったり、流れが逆になることも)その後、再び北流の速度が強くなり、約5時間後に第2回目の最強流速に達します。(大潮時には、約3〜4ノット、小潮時には約2〜3ノット)その後は、流速が減じ北流が開始してから約6時間後に流れが止まり、南流が開始されます。
 南流は、呉の潮汐で干潮になった時から約1.5〜2時間後に南流が始まります。それから、約1.5時間後に第1回目の最強流速に達します。(大潮時には、約4ノット。小潮時には約2ノット)その後、いったん流速は減じ、約3.5時間後に最も弱くなり(流れが止まったり、流れが逆になることも)その後、再び南流の速度が強くなり、約4〜4.5時間後に第2回目の最強流速に達します。(大潮時には、約3〜4ノット、小潮時には約2〜3ノット)その後は、流速は減じ南流が開始してから約6時間後に流れが止まり、北流が開始されます。
 
 
潮流推算
 海上保安庁のホームページにて瀬戸内海の任意時間の潮流推算が出来ます。
 出かける前に今日の潮流は?を調べる余裕を持ってお出かけください。
 
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