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所感
神戸運輸監理部長
石丸周象
 
 7月12日に神戸運輸監理部に着任しました。東北運輸局(平成8年4月〜10年6月)以来2回目の単身赴任となります。私にとって神戸は初めての土地です。神戸の市街地は六甲山系南側の東西30キロ、南北2〜4キロと細長いのが特徴です。この細長い市街地の中心に三宮駅と元町駅があります。私の住む官舎は両駅を底辺とする三角形の頂点、市街地を南北に貫くトアロードに面する神戸北野ホテルの裏手に位置しています。北野の異人館街は隣近所です。歩いて20〜30分程度で旧居留地、南京町(中華街)、メリケンパーク等の観光スポットに行くことができる大変便利なところです。トアロードは緩やかな坂道となっており熟練した職人のモノづくりが体験、見学できる北野工房の他、道路を挟んで和、洋、中の料理店やコンビニがあり生活するに不自由は全くありません。
 初仕事は着任翌日の早朝、神戸空港と関西国際空港の間に就航したベイシャトルの就航セレモニーへの出席。“再チャレンジプロジェクト”であります。2隻の高速船が両空港を29分(1日20便)で結びます。関西国際空港への海からのアクセスはジェットフォイルが就航していましたが02年2月この航路が休止になり、本年2月の神戸空港の開港を機に海からのアクセスとして再挑戦するものです。かなり厳しい船出となっているようですがベイシャトルが関西国際空港へのアクセスとして定着することを期待しています。『海から行く、関空は近い。』を大合唱して頂きたい。
 シャオゼミ(Yahoo!きっず図鑑によるとシャオシャオと鳴く「クマゼミ」らしい。)の大合唱に見送られての出勤、今年の夏は、暑さがとても厳しかったように思います。挨拶周りもほぼ終了した8月4日私の腰が突然の大ブレーキ、あえなく病院送り、5日間の緊急入院を余儀なくされました。診断書によれば椎間板ヘルニア。車椅子で病院に行くも“立つことができない”“寝返りもできない”“食事もままならない”このまま病院暮らしになるのではないかと大きな不安がよぎりました。原因は生活の変化。県内出張、挨拶周りなどはすべて車、あの長時間の車に座った姿勢が良くなかったと思われます。「腰椎は安静にしているのが一番」という医師の指示通り、一ヶ月の安静を守り、現在はスポーツジムに通い体力回復に励んでいるところです。(実はサウナや風呂で過ごしている時間の方が長い。)やはり一人で生活し、集中して仕事をするためには健康が第一であると改めて思い知らされました。
 
 さて、私は着任の記者会見で以下の三点を重点的に取り組みたいと抱負を述べました。
*安全文化/風土の構築
*人材の確保と海事技術/技能の伝承
*物流促進と観光振興による「みなとまち神戸」の活性化
 赴任してかれこれ三ヶ月余りが過ぎました。これらの施策の現状と課題等について紹介します。
 
安全文化・風土の構築
 運輸行政の新たな扉を開くであろう「運輸安全マネジメント評価」ついては、8月2日、当地において説明会が開催されるなど10月から開始に向け着実に諸準備が進められています。新制度の実施に当たっては業界の実状を十分に把握した上で事業者の方々との間で新しい信頼関係が築かれるよう留意しなければならないと思っています。
 地震等の災害への備えは特に重要です。防災業務計画の改定(7月)とこれに基づく防災訓練を9月15日に実施し、災害対策本部の設置・運営や避難誘導等の確認を行いました。
 近い将来発生することが懸念されている東南海・南海地震については、被害が広範囲に及ぶ可能性があり関係機関との連携が不可欠であることから「近畿防災・危機管理戦略検討会」で具体的な連携方策を検討することとしています。
 また、地震は予知が難しいことから、地震の発生を瞬時にとらえ、いち早く備えて被害を最小限に食い止める「リアルタイム防災情報」の重要性が高まっています。気象庁では8月から特定の機関に対し先行的に「緊急地震速報」の提供を始めました。せっかくの速報も非常時に生かすことができなければ何の役にも立ちません。大きな揺れが来る数秒〜数十秒前に、被害の防止・軽減対策として何ができるか、対策を洗い出し、行動計画を立て、訓練によりその実効性を検証・確認する必要があります。課題の一つに加えたいと思います。
 
人材の確保と海事技術/技能の伝承
 県内の中小造船・舶用工業は、長期に亘る景気の低迷により従業員の減少や高齢化が進んでいます。有為な人材を確保し、高度でかつ熟練した技術/技能の伝承を図ることは喫緊の課題です。
 技術/技能の伝承については、大手造船業は自社の施設や設備を利用して独自の取組みを進めています。しかし、中小造船業は中小型船の建造需要が激減し、技術・経営基盤が脆弱化していることから、一企業の自主的努力だけではなかなか進みません。地方自治体、関係行政機関、関連団体等の支援、協力を得た人材育成、技能伝承の積極的な取組みが望まれます。運輸監理部はコーデイネーターの役割を果たして参ります。
 また、海事に関する教育・研究、訓練機関が集まる当地は、人材供給の拠点として大きく発展する可能性を秘めています。
 中小造船・舶用工業のメンバーを中心に組織された『造船・舶用工業交流会』が神戸大学海事科学部の協力を得て産・官・学の連携による諸事業を進めています。有為な人材の確保や技術・経営基盤の強化に資するため交流会の一層の活性化を図って参ります。
 船員の高齢化が顕著になっており、内航若年船員の確保は特に重要です。関係団体の協力を得てDVD等映像機器による船員職業のPR活動を行って参りたい。
 
物流促進と観光振興による「みなとまち神戸」の活性化
 スーパー中枢港湾プロジェクト推進の一環として、神戸港発着の外航基幹航路と地方港とを結ぶ内航フィーダー網の構築を目指した社会実験を昨年度より始めました。昨年度は神戸港において内航フィーダー船の外貿バースヘの直付けや内航フィーダー輸送におけるバージの活用に関する実験を行いました。今年度も関連の実験を予定しており、現在具体的な内容について関係先と調整中です。
 神戸−高松フェリー航路は明石海峡大橋が開通した平成10年以降利用者の減少傾向が続いています。この航路の活性化を図るための二つの社会実験が10月より始まります。
 一つは、トラックに限定し、1日5便のうち積載率に比較的余裕のある昼間の2便と3便について運賃の30%割引を行う社会実験です。実施期間は10月1日からの一ヶ月間。新規利用者の獲得や陸上からフェリールートヘのモーダルシフトの促進を図ることを目的とするものです。もう一つは、マイカーを対象としてフェリーの乗船手続きにETCを導入する社会実験です。実施期間は約三ヶ月間。乗船手続きの簡素化によりフェリー利用の利便性を高めるとともにETCの利用促進を図ることを目的とするものです。トラックやマイカーがフェリーを利用するようになれば地球温暖化の原因の一つとされる二酸化炭素の削減にも貢献します。
 「みなとまち神戸」の観光振興の一つとして、「神戸港中突堤を中心とする臨海地区の活性化」の取組みを平成15年度より進めています。旅客船事業者、鉄道事業者、商店街・まちづくり団体、ホテル事業者、NPO、自治体等と連携して、中突堤周辺の市街地と臨海地区がそれぞれのもつ魅力を向上させるとともに、地域間の回遊性を高めることにより観光客等を増加させることを目指すものです。今年度は以下のイベントが計画されています。
*元町商店街、南京町、旧居留地、ハーバーランド、神戸港をテーマとした「フォトコンテスト」(10月1日〜11月30日)
*神戸高速鉄道(西元町駅、花隈駅、高速神戸駅)と神戸市営地下鉄海岸線(みなと元町駅、旧居留地・大丸前駅、ハーバーランド駅)の利用者を対象に商店街、観光船等での割引サービス(10月1日〜11月30日)
*第4回「ニーハオ!元町ハーバースタンプラリー」(平成19年3月)
*観光ボランティアを対象とした神戸港観光船への試乗会(平成19年2月)
 最後に海事都市神戸を再生するための研究会の発足について紹介します。
 研究会は海洋政策研究財団(会長:秋山昌廣)が昨年度に実施した「海事クラスターに関する調査研究」(Ship & Ocean Newsletter No.137参照)を踏まえ、同財団が地域海事クラスターを構築するための研究パートナーとして神戸市を選定、海事都市神戸の総合力を高めるための諸課題を研究し、神戸をアジア太平洋地域の海事ビジネス、海事知識のハブとして発展させることを目指すものです。
 研究会には地元の荷主・海事関連企業・団体、神戸商工会議所、神戸市、近畿地方整備局、運輸監理部、大学関係者等20数名の産・官・学のメンバーが参加しています。
 9月13日に開催された第1回の研究会では、座長として大阪産業大学の宮下國生教授(神戸大学名誉教授)を選出、財団から知識集約型海事クラスターの構築に関連した報告、資料説明等を受けた後、参加者による意見交換が行われました。研究会は今年度中にあと2回の開催を予定、来年3月末まで「みなとまち神戸」の『Step・Up・Plan』が提言されます。
 朝、夕はめっきり涼しくなり、夕暮れ時のツクツクボウシの鳴き声も次第に少なくなってきました。
 兵庫県で50年ぶりの開催となった「のじぎく兵庫国体」も、高校野球人気も手伝って大成功のうちに終えることができました。重点施策の第2四半期実施状況報告もまもなくです。『Plan-Do-Check & Prompt・Act』を実践して参ります。


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