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2006秋季号 NO.115
行政
所感
近畿運輸局長
島崎有平
 
 皆様には、平素より、国土交通省近畿運輸局の行政に格別のご理解・ご支援を賜り、誠に有り難うございます。去る7月11日付けで谷口克己前局長の後任として近畿運輸局長に就任いたしました島崎でございます。この場をお借りして簡単に所感を述べさせていただきます。
 
はじめに
 まず第一に、昨年4月25日に発生したJR西日本福知山線列車脱線事故について改めてではございますが、ご遺族の皆様方に心よりお悔やみ申し上げるとともに、負傷された方々の一刻も早いご回復をお祈り申し上げます。このような重大事故を踏まえ近畿運輸局といたしましては、今後とも鉄道等公共交通機関の安全確保について最優先・最重要課題として取り組んでまいります。
 当局ではこのような安全対策の他にも、公共交通機関のネットワーク拡充・利便性向上、ビジット・ジャパン・キャンペーン事業を始めとした観光振興、物流施策、環境対策等、近畿圏における幅広い行政を担当させていただいています。引き続き交通運輸や観光の振興を通じまして、近畿圏全体の活性化に全力を尽くすとともに、地域に密着したきめ細やかな輸送サービスの提供を通じ、国民生活の質的向上が図られるよう様々な課題に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 
公共交通機関の安全確保について
 公共交通機関の安全確保につきましては、従来より交通事業者に対する保安・業務監査、自動車検査や船舶への立入り検査等による安全確保に努めてまいりましたが、昨今のヒューマンエラーに起因する事故の多発等を踏まえ、安全最優先の企業の「安全風土」の確立を図るため、先の通常国会で経営トップから現場まで一丸となって安全確保に取り組むため、安全マネジメントを運輸の全分野に導入するいわゆる運輸安全一括法が成立し、鉄道事業法をはじめとする各事業法の改正が行われたところです。
 当局においても新制度の本年10月からの施行を踏まえ、企業の経営トップが全社的な安全性の向上のための取組みを主導し、企業全体に安全意識の浸透を図るとともに、現場の声を安全性の向上等に継続的に反映させること等により、企業全体の安全性の計画的な向上を図る「安全マネジメント」の導入促進に着実に取り組んでまいります。
 さらに、地震や台風など自然災害対策につきましても、東南海・南海地震を想定した防災対策を始めとして、各種防災対策、危機管理対策につきまして重点をおいて取り組んでまいります。
 
公共機関のネットワーク拡充・利便性向上について
 公共交通機関のネットワーク拡充・利便性向上につきましては、平成16年10月に答申されました近畿地方交通審議会答申第八号等に基づき、中之島新線や西大阪延伸線等の都市鉄道の整備等を着実に推進してまいります。また、地域公共交通サービスの維持・充実について、関係者の役割分担を明確にした上で、具体的な解決方策を策定する「公共交通活性化総合プログラム」制度について、今後とも、地方自治体等関係者との連携強化を図り、積極的な取組を行うこととしています。
 
観光振興について
 観光振興につきましては、近畿運輸局においても去る7月1日より企画観光部を立ち上げ、国際観光課、観光地域振興課の設置など組織・人員を拡充したところです。当局では、本年は、日中観光交流年、訪日教育旅行促進等に重点を置いてビジット・ジャパン・キャンペーンを展開しているところですが、この効果的な実施を図るとともに、「観光ルネサンス事業」の実施などを通じて魅力ある観光地づくりを進めて参ります。
 近畿圏では来年「世界陸上大会」や「世界華商大会」などの大規模集客事業が開催される予定であり、近畿運輸局といたしましてもこのような機会を捉え戦略的かつ効果的に国際観光プロモーションを展開することが重要であると考えております。
 さらに、こうした大規模イベントにあわせて関西空港の二期滑走路が来年8月2日に供用開始予定であり、我が国唯一の「24時間運用+複数滑走路」の国際拠点空港が誕生いたします。本年6月には、関西国際空港利用促進本部(本部長:関西経済連合会会長)において利用促進活動強化に関する決議が採択されたところですが、近畿運輸局といたしましても、国際観光の振興をはじめとした様々な施策により、関空利用促進をより一層強力に推進していくこととしています。
 
物流施策・環境対策について
 物流につきましては、スピーディーでシームレスかつ低廉な国際・国内一体となった物流の実現を目指し、国際物流の競争力強化や円滑な物流ネットワークの構築等を検討するために設置された「国際物流戦略チーム」において、24時間空港の関西国際空港を活用した深夜貨物便の誘致、大阪湾諸港の一開港化に向けた包括的な連携の強化等の取組みを推進してまいります。
 地球温暖化問題や地域の大気汚染問題が依然深刻な状況にありますが、昨年2月の京都議定書発効等を踏まえ、近畿圏は同議定書が採択された地域として、地球温暖化防止対策等環境問題への取組みを一層強力に推進していくべきであると認識しております。このため、改正省エネ法の適切な施行に努めるほか、物流分野においては荷主と輸送事業者が一体となって地球温暖化防止に向けた取組みを進める「グリーン物流パートナーシップ」事業を、人流分野においては公共交通機関の利用推進等により環境負荷の少ない交通モードヘの転換等を促進する「公共交通利用推進等マネジメント協議会」の取組みを引き続き推進して参ります。
 
交通運輸産業の発展について
 バス事業につきましては、都市部では、走行環境の悪化・利用客の減少等による系統の縮小再編等、各事業者とも厳しい経営合理化策が求められる一方、地方部では自家用自動車の増加によるバス利用者の減少等のため厳しい経営環境となっております。バス交通再生に向けて、リムジンバス、高速バス路線へのバスロケーションシステムの導入拡大等により、バスの利便性向上及びバス走行の円滑化対策等に積極的に取り組んでまいります。
 タクシー事業につきましては、利用者の減少傾向が続く中、新規参入や増車が相次ぎ厳しい経営環境にあります。このような状況の中、先般、「タクシーサービスの将来ビジョン小委員会」において、望ましいタクシーサービスの実現のために必要な環境整備方策についての報告書がとりまとめられたところであり、関係事業者等の理解が得られるよう努力する一方、観光タクシーや福祉タクシーの導入促進等、事業者の経営判断を活かしたタクシー需要拡大のための施策を、引き続き進めてまいります。
 フェリーや内航海運の活性化、クルーズの振興、船員の安定的確保対策等にも積極的に取り組んでまいります。
 
最後に
 以上、甚だ簡単ではありますが、私の所感を述べさせていただきました。今後とも、交通運輸・観光の分野における様々な課題を近畿圏全体の課題として捉え、各主体の連携強化を図ることにより、安全・安心な社会の構築、豊かで快適な生活、活力ある経済社会等を実現させていきたいと考えております。
 今後とも、皆さま方におかれましては、近畿運輸局の行政の推進に関し、一層のご支援、ご協力を心からお願いいたします。


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