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発達障害幼児の家庭養育

 事業名 障害児子育て支援のための研修会等の開催
 団体名 全国心身障害児福祉財団  


7. てんかんを合併した子の健康管理
 てんかんとは、脳に異常があって、体の一部や全身に発作的にけいれん(ひきつけ)を起こし、意識がなくなるのが特徴です。てんかんの種類によって、いろいろなタイプの発作を起こします。てんかんは、種々の原因によって起こり、さまざまな症状をもつもので、一つの病気というよりいくつかの病気の集まりによる症候群といわれています。脳は大変複雑な仕組になっており、その症状も複雑です。一般的には原因不明のことが多いのですが、ここで対象としている子どもの場合は先天性代謝異常や脳障害(出産児の重度の仮死による脳障害、脳炎後遺症、頭のけがによって脳に障害が加わった時に起こる頭部外傷など)によるものが多く、原因やタイプもわりあいはっきりしている子どもが多いようです。
 さらに、発達途上にあるわけですが、健常な子どもでもこの時期は脳の発達が未熟なため、発熱したり、泣いたり、興奮したりなどのちょっとした刺激でも、比較的簡単に発作を起こしやすい状況にあります。したがって、家庭で養育される場合、心配ないものと心配なもの(緊急を要するもの)を見分ける“目”が大切となります。熱の上がりぎわに起こすけいれんや、激しく泣いた時に起こすひきつけはさほど心配がないものです。気になるひきつけでも、脳波の検査を受け、適切な薬物治療を受けることで十分家庭で養育できます。
 科学は日進月歩進歩しています。急速な科学の進歩はこの病気について正しい姿と明るい未来を示してくれています。ともかく事実を知り、事実を正しく受けとめ、俗説や雑念にまどわされないで、主体的な健康管理を行ってください。
 
(1)熱性けいれん
 熱性けいれんとは急な発熱が刺激となって起こる一時的な発作で、後遺症などは残らない心配のいらないものです。6ヵ月頃から6歳くらいの間、主に、6ヵ月から2歳頃までに起こります。
 この間は、脳の発達が未熟なために急激な体温の上昇に適応できず、脳が興奮して筋肉をけいれんさせやすくなっています。母親の中には、「私も赤ん坊の頃、熱を出すとけいれんを起こしていたと母から言われていた」という方がいるように、遺伝傾向があるといわれています。なぜ熱性けいれんが起こるのかは、まだよくわかっていないというのが実情のようです。
 症状は“寒気”と同じで、歯をくいしばり、全身硬直状態にさせ、1〜3分くらい左右対称に細かくふるえ、ひきつけます。その間意識がなく、呼吸が止まって、軽いチアノーゼ様に顔色が悪くなってきます。発作を起こすたびに心配されますが、けいれんがおさまり、ひと眠りすると意識は戻ります。熱性けいれんは呼吸を止めていても、けいれんのために死亡することはありません。けいれんが原因で脳障害を起こしたり、半身マヒなどの後遺症を残すということもありません。ただ、体質的な要因も関係するといわれており、発熱のたびにくり返すという場合も少なくありません。日頃から、睡眠や栄養などの健康状態に気を配り、日光浴や運動なども体調の良い時には続けてもかまいませんが、高熱を出さないよう気をつけて下さい。
 また、必ずしも、一時的で後遺症の残らない良性の熱性けいれんとは限りませんので、初めて発作を起こした時や、普段とは異なる発作をくり返すような時には、症状がおさまってから、一度は受診しておきましょう。
 発作を起こした時には、落ち着いて次のことを観察し、受診時に医師に報告して下さい。
<観察のポイント>
(1)体温を測定する。
(2)発熱を伴わないひきつけの時は、頭を打っていないかどうかを調べる。
(3)他に風邪などの症状はないか。
(4)嘔吐はしなかったか。
(5)意識障害の有無。意識障害がある場合には、何分くらい続いているのか時間を計っておく。
(6)ひきつけている時間を測っておく。また、回数も数えておく。
(7)ひきつけの状態は、全身性か一部分か、左右対称性かどちらか片側だけか、などを観察する。また、首をカクンと曲げ、両手でバンザイの動作、もしくは、両手で抱きつくような動作が数秒続くような発作かどうか観る。
(8)呼吸の状態も観ておく。
(9)発作が終った後、マヒなどが左右どちらかの半身におきたりしていないかをみる。
 以上の観察をメモした用紙をあらかじめ用意しておくなどして、医師にできるだけ正確に症状を伝えて下さい。病院では、脳波検査を行い、解熱剤を出されたり、ひきつけを起こしやすい場合には、予防的に抗けいれん剤を出されたりすることもあります。
<ひきつけの手当て>
 良性の熱性けいれんの手当の仕方は、一般に市販されている育児書に書かれています。比較的同じように書かれていますから、どの育児書でも参考になります。
(1)静かに寝かせて前ボタンを外し、オムツのひもをといたりして衣服をゆるめ、呼吸がしやすいようにしてあげます。
(2)嘔吐をすると、気管に詰まったりして窒息するおそれがありますから、顔は必ず横向きにしてあげて下さい。
(3)古い育児書には「舌をかまないようにスプーンなどの固い物にガーゼを巻いて口の中に入れる」と書かれていますが、最近の育児書は否定的ですし、ほとんどの場合はそのようなことをする必要はありません。もし舌をかんだ場合は、スプーンの柄にガーゼ(なければ、ハンカチの清潔な物を使って下さい)を巻いて、上下の奥歯の間にかませて下さい。よだれや嘔吐した物を受けるために、顔の下にタオルかバスタオルをしいて様子を静かに見守ります。
(4)ひきつけがおさまったら体温の測定をして下さい。
 ひきつけの手当てをする際に注意していただきたいことは、何回も呼びかけたり体をゆすったりしないということです。冷静に対処し、ひきつけがおさまるのを待ちます。その後早い機会に一度は受診しておきましょう。
 
(2)発熱に関係なく起きるけいれん
 熱がないのに熱性けいれんに類似した発作が起きた時には注意を要します。また、1日に何回もひきつけたり、けいれんが左右対称に現れない場合、または、発作が10分以上も長く続くような時も要注意です。一般的に熱性けいれんは1〜2歳の脳が未熟な時期に起きますが、5〜6歳を過ぎてから起きたような場合も気になります。
 熱性けいれんであっても、ひきつけが止まった後にどうも様子がおかしい時、例えば、嘔吐が続く、顔色が悪くチアノーゼがいつまでも続いている、意識がはっきりしない、といった場合も同様です。
 このような症状がみられたら、急いで病院に行く用意をして早めに出かけましょう。夜間でしたら救急外来の受診もやむを得ませんが、日頃から主治医病院を決めて、緊急時の対応策を準備しておいて下さい。ともかく脳波検査を受け、適切な治療を受けなければなりません。多くの場合、診断がつけば適切な薬を処方され、発作もコントロールされますから、それほど心配はいりません。
 
(3)点頭てんかん(West症候群)
 てんかん発作といってもいろいろなタイプの発作があります。このタイプのてんかんも脳性マヒや小頭症など、多くの障害児に合併してみられます。
 発作の症状は、発熱を伴わなくても起き、頭をカクンと前に倒して、イスラム教の礼拝の時のような動作に似て両手を上に挙げてバンザイをしたり、抱きつくような動作が数秒間続きます。この動作を、何回もゆっくりくり返します。目つきが一点に止まったように上目づかいになったりもします。その間意識はありません。頭を左右に振るようなこともあります。脳波検査を受けると、特有の波型を示すので診断がつきます。
 
<てんかん発作がある子どもの家庭養育>
 てんかんは慢性の脳疾患であり、長い年月の治療が必要となります。治療といっても、短期に薬の調整のために入院することがあっても、一般的には入院せず、家庭で日常の健康管理に多少の気配りをしながら生活を続けています。焦ってもクヨクヨしても何の効果もありません。病気とつき合って、淡々と生活できるようになりたいものです。年齢が3歳、6歳と進むにつれて脳も成熟してきますし、お母さんも扱いに慣れてきます。この発作をこわがって過度に活動を制限をすることは避けたいものです。家庭では次のことに注意を向けながら上手に対処して下さい。
 
表1-11 てんかんと予防接種(日本小児神経学会試案)
A)3年以上臨床発作がなく、脳波上にも発作がない場合
(イ)現行予防接種はすべて禁忌ではない
(ロ)ただし第1期種痘のみはVIGの併用、または弱毒株による前処置を行うことが望ましい
B)1年以上臨床発作がない場合(脳波異常はあってもよい)
(イ)接種してよいもの――ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、BCG、種痘第II、III期、ポリオ生ワクチン
(ロ)必要に応じて接種(流行のきざしのある場合、医師の慎重な判断で)――インフルエンザワクチン、日本脳炎ワクチン、麻疹ワクチン
(ハ)禁忌――種痘第I期、百日咳ワクチン
C)その他の場合(1年以内に発作がある場合など)
(イ)接種してよいもの――破傷風トキソイド
(ロ)必要に応じて接種するもの――ポリオ生ワクチン、ジフテリアトキソイド
(ハ)禁忌――上記以外のもの
 
(1)規則正しい睡眠、食事、排便などの生活リズムを作る。睡眠時間は眠り過ぎにならないようにし、適度に緊張感のある生活が大切。
(2)服薬は医師の指示を守り、飲み残しのないように時間を守って服用する。
(3)眠気、めまい、頭痛、意識がもうろうとする、ふらつく、胃腸障害などの副作用が、含まれている薬の内容によっては起きるので、対処の仕方なども医師から教わっておく。
(4)定期的な脳波検査や定期検査はきちんと忘れずに受ける。
(5)日常生活上のてんかん発作の誘発因子として次のことがあげられるので、こうした誘発因子に注意する。
・睡眠不足
・過度の精神緊張、感情興奮・過敏
・精神緊張の低下
・急激な服薬中止
・発熱
・その他
(6)予防接種を受ける場合の注意。
 「日本小児神経学会試案」が一応の目安となります。しかし、一人ひとり状態は異なりますので、一番子どもの平常の状態を知っているお母さんの観察の視点を加えて判断して下さい。なお、予防接種を受ける場合は小児科医の診察がありますから、その時に平常の状態や当日の様子を詳しく述べて相談をしてから受けて下さい。予防接種を受けた日は、外出や入浴はやめて、あそびもひかえめにします。その夜は検温し、一般状態を観察します。
 以上、障害に合併するてんかん発作についての基礎知識と、家庭での養育上の注意事項などについて述べてきました。怖れず、逃げずに、毎日の生活の中で上手におつき合いをして、早く慣れて下さい。


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更新日: 2019年3月23日

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