8. 予防接種の受け方
予防接種が受けられる病気は、ポリオ、結核、はしか、日本脳炎など、どれもかかると大変な病気で後遺症を残すことも少なくありません。わが国では予防接種のおかげで、抵抗力のない乳幼児の死亡率が低下し、ポリオ、天然痘、腸チフスなどはほとんど撲滅に近い状態になりました。しかし、東南アジアやアフリカなどの発展途上国や難民の生活環境の中ではまだまだ予防手段を持たず、予防可能と知りながらみすみす大量発生させている現状があります。
予防接種とは、予防ワクチンを体内に注入することで抗体をつくり、後から病原菌が入ってきても、この抗体が病気から体を守ってくれる役割を果すものです。
予防ワクチンには、生ワクチンと不活性ワクチンの2種類があります。生ワクチンは、接種することによって体の中で病原体が殖え、それを抑えるために抗体が作られるもので、病原体がなくなるまでには約1ヵ月を要し、その間は他の予防接種を受けられないようになっています。不活性ワクチンとは、死んだ病原体の成分で、体内で免疫反応を起こします。希れに副作用を起こしますが、起こすとしたら1〜2日の間で高熱などを伴います。
予防接種は、大変な病気に対する免疫性をつけさせ、病気から子どもを守るためにあり、体の弱い子ほど必要といわれています。注意を守り、主治医に相談しながら受けさせて下さい。
(1)予防接種の種類
予防接種には、ある年齢になったらこの予防接種を受けなければならないと法律で決められている「法定接種」と、その病気が流行しそうな時に希望に応じて病院で個別的に受ける「任意接種」があります。法律で決められている予防接種は定期接種となっていますが、接種は決められた日に決められた場所(保健所や学校)に集まって受けることとなっています。それに対して個別接種の場合は、病院で体調や都合の良い時に受けることもできますから、虚弱であったり、てんかんなどの合併のある障害児の場合は、医師と相談しながら後者を選択される方が多いようです。
保育園や通園施設に通っている子もいますが、風疹、水ほうそう、はしか、おたふく風邪、流感などが例年流行しますので、かかりつけの小児科医院で1歳頃から個別接種を受ける方が多くいます。反応を和らげるためにガンマグロブリンを打ったり、ワクチンを3回に分けて受けたりしています。
ワクチンの種類は、BCG(結核)、ポリオ生ワクチン、三種混合(百日ぜき、破傷風、ジフテリア)、MMR(はしか、おたふく風邪、風疹)、麻疹(はしか)、おたふく風邪、風疹、水ぼうそう、日本脳炎、インフルエンザ、B型肝炎があります。種痘、腸チフス、パラチフスの予防接種は現在は行われなくなりました。
また、事故が起きた時(副作用により後遺症が残ったり死亡したりすることがまれにあります)は、国の救済制度が受けられるものと薬害救済制度が受けられるものがあります。それらはワクチンの種類によって違います。表1-12を参考にして下さい。
(2)予防接種を受ける時の注意
予防接種で気になるのは副作用です。BCG、ポリオ、風疹はほとんど副作用がないといわれています。このところ問題になっていたのは、はしか、風疹、おたふく風邪の新三種混合です。髄膜炎を併発したという報告がなされたからです。その後は、家庭からの希望に応じてそれを受けることになり、定期接種は、はしか単独ワクチンを使うことに変わりました。はしか以外でも、風疹、おたふく風邪は通園施設や保育園などで毎年流行し、乳幼児期に1度はかかることが多い病気です。単独で受けることもできますので、体調に合せて選択して下さい。
予防接種を受ける時には、体温を早朝7時前後に測って全身状態を観察し、健康診断を受けます。表1-12や接種を受ける際の説明書にも目を通しておいて下さい。
(3)予防接種を受けた後の注意
予防接種を受けた日は外出や入浴をひかえ、体力の消耗を防いで、発熱、発疹、顔色などの健康状態を観察します。3日以上の発熱や発疹がある場合には、接種を受けた病院や保健所に連絡をとって相談、もしくは受診して下さい。
接種回数は、指示された通りに守ります。3回なら3回すべて受けて初めて確実な免疫効果が出るようになっているからです。
(4)てんかんなどの合併障害がある場合の予防接種の受け方
てんかんに限らず、高熱や肺炎などをくり返した後や、アレルギーなどの心配がある子どもの場合は、 表1-11(日本小児神経学会試案)を参考にして、「予防接種一覧」と見比べながら判断して下さい。
表1-12 予防接種一覧表
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