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(3)栄養のバランス
 栄養素とは、生命の維持、健康の保持、成長発達のために必要な物質をいいます。栄養素は、毎日食べる食物から補給しますが、その種類は大きく分けると、炭水化物、脂肪、たんぱく質、無機質(カルシウム、鉄、ナトリウム)、ビタミン(A、B1、B2、C、Dなど)に分けられます。この五つの栄養素を五大栄養素といいます。
 これらの栄養素は、熱や力の基になる働き、体をつくる働き、体の調子を整える働きと、それぞれ大切な役割を果しています。そのどの機能が欠けたり不足しても、生命や健康の保持、順調な発育や心身の発達を望むことはできません。それぞれの栄養素の働きや、どんな食品に含まれているか、また調理をする時にどのような注意を払ったらよいかなどについては表1-7を参考にして下さい。
 
表1-7 栄養素の種類・はたらき・調理上の性質
★は1gあたりのエネルギー量
 
(4)1日に必要な食品
 五大栄養素をバランスよく含んだ食品を1日にどれくらいとったらよいのか、その目安を知っていると便利です。
 障害がある場合、全体的に身長・体重とも小ぶりで、しかも、運動量もそれほど活発ではなく、エネルギーも10〜20%少なめでよいと判断されます。3〜4歳児体型クラスが多くみられますので、3歳児モデルの1日に必要な食品を表1-8に提示しました。3歳児の1日の必要エネルギーは、男児1,400kca1、女児1,350kcalですから、前表と照らし合せて各々判断して下さい。
 
表1-8 1日にとりたい食品(3歳児)
(高田「障害児の食事 献立とつくり方」はげみ 4.5.1988)
 
 摂食機能に障害がある子どもは炭水化物は比較的十分に食していますが、不足しがちになるのはたんぱく質です。たんぱく質の中でも、豆腐や卵はご飯にまぜて与えられますが、肉類や、魚介類が不足ぎみになっています。動物性たんぱく質には、特に必須アミノ酸が含まれており、丈夫な体づくりの源になります。乳幼児の場合は、体重1kgにつき4gとるようにするとほぼ足ります。
 次に不足しがちな栄養素として、ビタミン類や鉄、カルシウムがあげられます。野菜、果物、小魚類、海草類などに多く含まれています。ムセて食べにくい時には、よく煮込んだり2回揚げをしたりと調理の仕方に工夫をこらし、また、きざんだりすりつぶしたり、みそ汁などに混ぜて食しやすいようにしてあげると、ムセたり吐き出したりが少なくなります。牛乳は、水分の補給にもなりますから、1日に1〜2本は与えたいものです。離乳食づくりのように特別食をつくるのではなく、毎日大人が食べる物をスプーンの裏ですりつぶして食べさせた方が、栄養が偏らず、お母さんの負担も軽減され、好都合といえます。
 誰しも食べたくない時もあり、食物の好みも異なります。無理強いせず、好みの代替品で目先を変えて与えてみましょう。この表は、その時の目安としても活用して下さい。
 
(5)水分不足に気をつける
 水分の必要量は、季節、気温、食品の種類、体温などの条件によって異なります。当然、発熱や嘔吐といった病気の時には特に多く必要となります。また、加齢に伴って必要量も表1-9に示したように増加してきます。おおよその目安としては、幼児期の場合は、体重1kgあたりl00ccが必要とされています。牛乳びん1本は200ccですから、これを目安にして子どもの必要量の見当をつけ、十分水分を補給するように努めて下さい。
 水分は、腎機能を活発にさせ、細菌を尿とともに排泄させたり、膀胱容量を増やして膀胱の括約筋などの機能を発達させる上でも大切な役割を果します。脳性マヒの中でも、緊張性不随意運動型の子どもは自律神経調節機能が未熟で、自律神経失調を来しやすく、特に風邪をひいたりしていなくても、日中急激に38℃前後の発熱をくり返し、水を飲ませると熱が引くという経験をされたお母さんもいらっしゃると思います。発熱すると、水分不足も引きがねとなって熱性けいれんを誘発する子もいます。“汗かき”が多いのも、このタイプの障害児の特徴となっており、水分が体内から熱とともに奪われていきます。
 水分は牛乳、みそ汁、果物、麦茶、湯ざまし、ジュースなどから摂れます。夏などの暑い時には麦茶などを少し多めに飲ませるようにして、水分不足には十分気をつけてあげて下さい。
 
表1-9 健康乳児1日の水分所要量
年齢 1日の水分
需要量(c.c)
体重1kg当1日間の
水分需要量(c.c)
3 日
10 日
3ヵ月
6ヵ月
9ヵ月
12ヵ月
250〜300
400〜500
750〜850
950〜1,100
1,100〜1,250
1,150〜1,300
80〜100
125〜150
140〜160
130〜155
125〜145
120〜135
(糸賀宣三「実用百科選書」1968)


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