(2)栄養所要量
栄養状態は良好か、摂取量は十分かどうかは、多くのお母さん方が心配するところです。摂取量の過不足は、次のことをチェックポイントに見分けます。
(1)日常の健康状態の観察
規則正しい生活リズムのもとに、「よく食べ」「よく眠り」「よくあそぶ」かどうかをみてみましょう。機嫌良く過すことが多く、泣いたり笑ったりする声も元気な子どもは、栄養も充足され健康状態も良好と判断されます。特に風邪をひいたり下痢をしている様子もないのに、この頃元気がなくなってきたとか、不機嫌で泣いてばかりいるというような時は注意する必要があります。摂取量が不足していることも考えられます。次の点を観察してみて下さい。
顔の表情は乏しくないか。顔や手足の皮膚の色つやは、やや赤みをおび、張りやうるおいがあるものですが、青白く、冷たくカサカサ、ザラザラ乾燥していないか。子どもの爪の色は薄いピンク色をしていますが、貧血があると、白っぽく、時には爪に縦じわのようなすじが入り割れたりすることがあります。健康色かどうかをみて下さい。
(2)発育・発達は順調か
発育と発達は同義語ではありません。「発育」とは身体が大きくなることをいいます。「発達」とは運動機能や知能、情緒面や精神発達機能といったような機能が上達することをいいます。栄養は両方に影響を及ぼしますが、栄養が足りて乳幼児の健康状態が良好かどうかを判断するためには、身体的発育が順調かどうかをみることが重要なポイントとなります。
身体発育が順調かどうかは、身長や体重の増加状況を目安にみていきます。その際、身長・体重を測定し、厚生省から出された「乳幼児身体発育値」(パーセンタイル値)を目安として判断します。
図1-10 乳幼児身体発育パーセンタイル値(1980年度調査)
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注)1歳台の身長は仰臥位身長を示し、2歳以降は立位身長を示す。
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このパーセンタイル値というのは、同一年齢100人のうち、小さい方から数えると第何番目と数えることと同じで、50番目の値が50パーセンタイル値ということを意味しています。普通は10〜90パーセンタイル値の間を正常範囲といいます。10〜3パーセンタイル値の場合は異常の疑いがあります。特に97パーセンタイル値以上と3パーセンタイル値以下の場合は異常と考えられます。この場合は一度、病院で診察してもらうことをおすすめします。
体重測定をする場合は、お母さんが抱っこして体重計に上り、計測値からお母さんの体重分を引いて出します。
立位がとれない場合の身長の測り方は2通りあります。まず、体幹や下肢、首に変形がない場合には、仰臥位で全身をよく伸び伸びさせ(特に両膝)、頭頂と足底に板を当て(下敷きでも、絵本でもよい)て測定します。もし、脳性マヒがあり、体幹、下肢、首など全身に変形拘縮を起こしているような場合には、図1-11に示したポイントに順番に(1)から(6)まで巻尺を当てながら測定していきます。
図1-11 身長の測り方
a 石原式身長測定法における各計測点
b 頭頂から乳様突起までの計測法
c 大転子の位置
d 膝関節外側中央点
e 外果から足底点までの計測法
(3)栄養失調症になっていないか
栄養失調があるかどうかの判断は、体重の増加が止まるか減少するかということでおおよその推定をすることができます。また、カウプ指数値でみることもできます。しかし、栄養失調があるとむくみが出ることもあり、このような場合には、体重やカウプ指数(表1-5)は役に立ちません。したがって、常に顔色、皮膚の色、皮膚の弾力性、皮下脂肪の厚さ、筋肉のつき方、筋肉のしまり方などもよくみることが大切です。
栄養失調の子どもは顔色が青白く、皮膚は光沢を失い弾力もなくたるんでいることもあります。皮下脂肪は減って薄くなり、腕や腿も細くなり、皮膚にしわが寄っています。機嫌も悪く、あやしても笑わず、よく泣きます。よく風邪をひいたり熱を出したりします。このような症状を参考にして判断して下さい。
表1-5 カウプ指数の評価値
ふとりすぎ |
ふとりぎみ |
正常 |
やせ |
失調症 |
消耗症 |
23.0以上 |
22.9〜19.0 |
18.9〜15.0 |
14.9〜13.0 |
12.9〜10.0 |
9.9以下 |
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図1-12 カウプ指数の変化
カウプ指数は、身長、体重を目安に身体のバランスをみるもので、特にやせ過ぎ(失調症、消耗症)をチェックする指数です。これは乳幼児期だけに適用されるものです。
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(4)必要カロリー
乳幼児期の成長期は身長や体重の増加が盛んで、活動も活発です。一方で、生体内の消化機能も急激に発達する時期で、離乳の完了する1歳代には普通食を消化吸収する機能がほぼ準備されてきます。食べた物を消化し、体内に吸収・利用する胃腸、膵臓、肝臓、腸などの内臓機能は4〜5ヵ月頃にはかなり発達し、2歳頃までには成人なみに発達するといわれています。ですから、多少、噛まないで丸飲みしたとしても、体内で消化吸収する力が備わっていますからお腹をこわす心配はありません。
子どもが1日に必要とする栄養所要量を知っておくと、どのくらい食べさせたらよいかを自分で判断することができます。当然発達年齢によって異なりますが、健常児の場合は1歳から3歳にかけて急激に必要量が増し、6歳の男子では、実に成人女子(主婦)相当のエネルギーが必要となります。
年齢によってどのくらい必要とされるかの判断は、厚生省から出された「幼児の栄養所要量」を参考にして下さい。簡単な熱必要量の出し方は、次に紹介した計算式で割り出すことができます。
表1-6 乳幼児の一日の栄養所要量
栄養所要量は、生命維持、成熟に必要な基礎カロリーに加えて運動量が関係してきます。ほとんど寝たきりで活動が少ない子どもの場合、エネルギーは10〜20%少なめでよいといわれています。表1-6は、年齢だけではなく、重度発達障害児の場合は身長年齢を参考とするとよいともいわれています。
また、障害児の多くは、ご飯やパン、お菓子などの炭水化物でエネルギーのほとんどを摂りがちとなっていますが、適量のたんぱく質や脂肪などバランスの良い摂取が必要となります。
たんぱく質は、大体総カロリーの15〜17%が理想的とされ、脂肪は20%よりやや多いくらいにし、それ以外の約半分以上を炭水化物で補うことになります。その割合が長期にわたって崩れると栄養障害が現われてきます。
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