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第二部門
多年にわたる功労
副賞/日本財団賞(賞金100万円)
The Nippon Fundation Prize
 
◎精神的・肉体的に著しく労苦の多い活動や業務に多年にわたり従事し、他に尽くされた功績
◎著しく危険性の高い活動や業務に多年にわたり従事し他に尽くされた功績
◎不潔、非衛生等、劣悪な状況・環境に耐え、多年にわたり他に尽くされた功績
◎その他、困難な状況の中で多年にわたり努力し、社会と人間の安寧・幸福のために尽くされた功績
 
The 2nd Category
Achievement over the period of time: the Nippon Foundation Prize
 
*Remarkable contributions to others through long years of spiritually and physically demanding activities
*Remarkable contributions to others through long years of highly dangerous activities
*Remarkable contributions to others through long years of work in unsanitary, hazardous, and unhealthy conditions and environments
*Remarkable contributions to peace and human happiness through long years of work under difficult conditions
 
第二部門/多年にわたる功労 Division 2: Long years of Distinguished Service
■村上 一枝 Kazue Murakami
■岩田 美津子 Mitsuko Iwata
■長洋 弘 Yohiro Cho
■田島 伸二 Shinji Tajima
■Dr. Arturo C. Cunanan, Jr. MD, MPH
■大森 和夫・弘子 Kazuo Omori Hiroko Omori
■李 敏龍 Rhee Min Yong
■荒井 裕司 Yuji Arai
■福谷 則枝 Norie Fukutani
■青方 美惠子 Mieko Aokata
■藤本 晴子 Haruko Fujimoto
■藤佐 美幸 Miyuki Tosa
■門川 貴信 Takanobu Kadogawa
■根本 昭雄 Fr. Nicholas Nemoto, O.F.M.
■桂 才賀 Saiga Katsura
■江口 喜多枝 Kitae Eguchi
■上原 裕之 Hiroyuki Uehara
■西崎 春吉 Harukichi Nishizaki
 
村上 一枝(むらかみ かずえ)
(昭15.2.27生)東京都武蔵野市
 
 サハラ砂漠がその3分の2以上を占める過酷な条件にある西アフリカの内陸国マリ共和国で、識字教育や裁縫、野菜栽培やマラリア予防等の支援を続け、17年間にわたって村人たちの生活改善に取り組んでいる。
推薦者:秋山 忠正
 
Ms. Kazue Murakami (born February 27, 1940)  Musashino City, Tokyo
 
 In the Republic of Mali - an inland country of western Africa that faces severe circumstances because the Sahara Desert accounts for more than two-thirds of its territory - Ms. Murakami has spent 17 years working to improve the daily lives of villagers through literacy education, instruction in sewing, vegetable cultivation, and efforts to prevent malaria among other activities.
Recommended by: Mr. Tadamasa Akiyama
 
 村上さんは、1989年から日本の植林NGOのスタッフとして活動を始めた。翌90年にはマリのローカルNGOに加わり農村医療を実践し、93年からは農村自立協力の為のNGOを独自に設立した。以降、世界の最貧国の一つであるマリ共和国の農村自立のために働いて来た。93年にマリ人助産婦と村に住み込んで始めた活動は、現在約100ヶ村、住民約40,000人が受益の対象となっている。また、NPO法人西アフリカ農村自立協力会を主宰し、会員約400名と共にアフリカでの経験を国内に還元する地道な努力を続けている。
 村上さんは、新潟市内で開業していた歯科医院を閉じて、人生の後半をサヘルの人々と共に生きる決心をした。マリ共和国の農村の女性は子供の時から水汲みや薪拾い、家畜の世話、子守など過酷な労働を強いられ、結婚してからは高い妊婦死亡率、乳幼児死亡の危険に晒されている。これらの人々を目の前に、村上さんは私財を投じ、退路を断ってアフリカ定住のボランティアに転身した。
 活動の特徴は、女性の視点からのきめ細やかな心遣いである。深井戸を掘り清浄な水を確保する。野菜や果樹を栽培し、緑を増やしながら現金収入を増やす。寄生虫駆除やマラリア予防を行う。文字を教える。改良かまどや製粉所を設ける。そして、これら活動に必要な人材を村の中から育成する。特に村の女性の意識変化は、夫や子供に影響を与え、男性中心の伝統的村落社会に自立意識の変化を与えている。
 今日、砂漠化は、100カ国以上10億人を超える人々の生活を脅かしているといわれている。どのような砂漠化防止対策も、地域に住む住民一人ひとりが、自立安定した生活を作り出す意欲を自ら持たなければ成り立たないと思われる。村上さんは灼熱のサハラ砂漠の南端において、自らも度々マラリアに倒れながら、サヘルの村人の明日の幸せのために人生を賭け活動を続けている。
 
受賞の言葉
 この度はありがとうございました。晴れがましい席に並ばせていただき嬉しく思いました。私は、もしも自分がアフリカの農村に住んでいたら、と考え1989年以来、人々への支援を続けてまいりました。ほんの一点を照らすだけの活動で、まだ道半ばです。
 今後も精一杯の努力を続けてまいります。
 
 
マリ共和国
 
病気(マラリア)予防
 
裁縫指導
 
識字教室
 
植林造成地
 
岩田 美津子(いわた みつこ)
(昭27.6.11生)大阪府大阪市
 
 視覚障害の親が子どもに絵本を読み聞かせる方法を開発し、その絵本の製作と全国無料貸出しを行うボランティアグループを始めて22年、点訳絵本の郵送無料化も実現させ、視覚障害者の福祉に大きく貢献している。
推薦者:島 多代
 
Ms. Mitsuko Iwata (born June 11, 1952) Osaka City, Osaka Prefecture
 
 Ms. Iwata has made a major contribution to the welfare of people with visual impairments by developing a method through which blind parents can read picture books to their children. She also started a volunteer group that has manufactured these books and lent them out nationwide, free of charge, for 22 years. Furthermore, she has realized a system in which books that are translated into Braille can be sent postage-free.
Recommended by: Ms. Tayo Shima
 
 先天性盲目の岩田さんは、視覚障害者の夫との間に生まれた我が子に絵本を読んでとせがまれた時、目の見えない自分は読んでやれないとの事実の前に止まるのではなく、「見えないけど、読んでやれる方法がないか」と考えた。そして目の見える周りの人たちに働きかけ、長い間探し回った末、現在使っている透明な塩化ビニール・シートに辿り着いた。一般に市販されている絵本の文章を塩化ビニール製の透明なシートに点訳し、原本の活字部分に貼り、また、同じシートで絵の形に切ったものを貼り付けたり、説明文を書き添えたりして、目の見える人と見えない人が一緒に楽しめるように工夫した絵本である。岩田さんはボランティアの協力を得てこの点訳絵本作りに励み、その数を増やしていった。
 「点訳絵本を作るといっても私自身が作る訳ではありません。私は幸いにも良いボランティアの方々に恵まれたから、絵本が出来、それを子どもと一緒に楽しむことが出来ました。けれども、こうしたボランティアに恵まれない、視覚に障害を持つ親が他にも沢山いるのですから、そうした親達にも、是非この楽しさを味わって貰いたいのです」との願いから、岩田さんは1984年に自宅に家庭文庫「点訳絵本の会 岩田文庫」(91年に「てんやく絵本 ふれあい文庫」と改称)を開設した。手持ちの点訳絵本蔵書数は約180冊、点訳ボランティアは1グループと3名、発送ボランティアが3名の支援態勢で、読者は3名のスタートであった。そして任意団体「てんやく絵本ふれあい文庫」が、点訳絵本の製作と全国の利用者への無料貸し出しを始めてから22年になる。現在約8,000タイトルの蔵書を有し年間6,400冊の本を全国の160家族及び21の点字・公共図書館・盲学校などの施設に貸し出し、120人を超えるボランティアが点訳や発送の部門を担当している。また岩田さんは、郵政省との3年に及ぶ折衝の末、点訳絵本の郵送無料化を実現して読者数を増加させ、点訳絵本の推進に貢献された。
 
 
受賞の言葉
 このたび社会貢献者表彰というすばらしい賞を受賞できましたことは、私にとって喜びであると同時に、大きな驚きでもありました。というのも私が永年取り組んでまいりました点訳絵本の製作と貸出という活動は、社会における限られた方々へのサービスであり、非常に地味な活動だからです。そうした活動に対して、このような評価を頂けましたことに、心から感謝しています。
 私はこつこつ積み上げていくことしかできませんが、この受賞を励みとして、今後の絵本を必要とする見えない人たちが、いつでも、どこでも、気軽に絵本を楽しめる環境を整えたいという目標に向って点訳絵本ならびに点字付き絵本の普及に努めてまいりたいと考えています。ありがとうございました。
 
点訳絵本
 
文庫入口の看板
 


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