3-8 島が目安の雨と雪(参考文献11)
ここで関東地方の雪を降らせるか、雨を降らせるか、晴れとなるかを予測する目安として、低気圧の動きを伊豆七島の八丈島を中心に考えてみよう。
この現象変化により、海上での荒天準備が違ってくるだろう。
この決め手は統計的なもので例外もあるのだが、かなり高い確率である。
次のC天気図を見てみよう。
図3-13 C天気図(某年1月17日)
図3-14 D天気図(某年1月18日)
これは1月中旬の天気図で、東シナ海に発生した低気圧が、東に進むにつれ、関東地方の天気は下り坂となる型だが、この東シナ海に発生する低気圧は、この時により多少場所が異なり台湾北部海上であったり、中国の上海沖であったりするが、何れもこの低気圧の発生が確認されると、24時間以内に関東地方が悪天候の中に入ると言われ、一般的な気圧配置の動きとほぼ同じに考えられている。
一昔前は、この低気圧が発見されると「台湾坊主」の発生と言われていたが近年は東シナ海低気圧の発生と発表している。
その東シナ海低気圧は24時間後には、D天気図のようになり、前日の中心示度が1022hPaで発生したものが、紀伊半島の南海上で1010hPaと発達している。そして天気分布は関東以西は殆ど雨で、北陸、東北地方南部は雪、北海道は晴の良い天気となっている。
いよいよこの低気圧の中心が関東南海上を通過するとき、「島が目安の雨か雪か」の別れ道となるのである。
気象庁では、東シナ海低気圧が発生し北東に動いているので、明日の関東地方南部では雨か雪と予報したところ、この低気圧は途中で進路を南寄りに変え、八丈島の南沖合い海上を通ったときなど、関東南部の天気が晴となってしまい、前日の雨予報が空振りになってしまうことがある。
また、この低気圧が関東南海上を接近して通ると、南の暖気が入り、雨が降り、八丈島の上を通るときには、北東からの冷たい空気の流入とともに大雪となるのでこの八丈島を中心に考えたときに、「島が目安の雨か雪」の天気予報が発表され、気象予報官泣かせの難しい気圧配置の低気圧である。
発生回数は二月、三月が一番多く、二月の大雪、三月の時期はずれの雪などはこのようなときが多い。
*早朝暖かいときは雨
*南が曇れば雨、晴れれば風となる
*冬の南が雪くれた
*冬の南風雪誘う
*冬の南は雪連れる
*南が西に回って雨に変わる
*暖かい冬の夜は雪か雨の前触れ
*冬の夜の急激な温度変化は天気を変える
*風とともに降る雪は積もらない
凪いでいるときの海は、いかにも雄大で平和な印象を与えているが、ひとたび荒れ狂ったら様相は一変する。
*アジが、入れ食いすると荒天になる
*大物が釣れたときは、天気の崩れが早い
*マグロは嵐の前に良くとれる
*大物が釣れた翌日は悪天候となる
平和な海も台風や低気圧の接近で、遠くから来るエネルギーの伝播がすでに海底では始まっているのだろう。
水温の変化、深海の流れ、プランクトンの動きなど、僅かな変化が食欲を高めるからで、干満潮の動きもこれらに通じている。大時化となる原因には、前線通過による突風現象や台風、低気圧に伴う風の流れの強弱の変化などがあり、自然界の移り変わりが既に始まっていることを暗示しているものと考えられる。
*海水が濁りて潮流急なれば、近日中に暴風あり
*海底が濁れば近く時化あり
*海水に泡多く浮くときは暴風の兆し
*海上に砂浮けば大風あり
大変よく釣れているのでもう少しなど欲が家族の悲涙につながるので注意が必要だ。
大きなエネルギーを持つ台風は、広範囲に被害をもたらす気象現象で、日本では台風、アメリカの北太平洋、カリブ海、メキシコ湾などに発生した熱帯低気圧の発達したものをハリケーンと呼んでいる。また、北インド洋で発生したものはサイクロンと言っているが、何れも熱帯地方で発生し、発達しながら北上して大被害を与え、著しく経済効果を妨げる現象である。
「甘く見ないで女性の名前」は、終戦後日本を占領したアメリカ軍の気象隊の習慣で、その年の発生順にアルファベットのABCの頭の字を取って名付けたもので、昭和28年(1853年)5月まで、日本でもこの女性名を使用していた。
大被害をもたらした、カスリン、アイオン、ジュディス、キティ、ジェーン、ルース、ダイナ台風等は、今もそのまま記録名に残っているが、昭和28年(1953年)以降は、年ごとに台風番号を、発生順に西暦の末尾の2字に付けて使用するようになった。例えば平成18年(2006年)の5号台風だったら0205として記録している。
図3-15 台風の天気図
その他、特に大きな災害を起こした台風には、番号のほかに、洞爺丸台風とか、狩野川台風、伊勢湾台風、第二室戸台風など別名を付けて報道することもある。
平成12年(2000年)からは、太平洋沿岸14か国が集まり各国が10個づつ名前を登録して、合計140個の名前を各国共通で順番に使用している。ちなみに日本は星座の名前を10個登録している。
台風のエネルギーは膨大なもので、いろいろの要素があるため、その時により異なるが、原爆・水爆とて到底及ばない膨大なエネルギーが、風を呼び、波やウネリを作り、雨を降らせるので海陸とも大きな被害をもたらす原動力となる。
一方、台風接近による降水は、水不足を解消し、その経済効果はこれまた計り知れない。
昭和34年(1959年)9月26日から27日にかけて襲来した伊勢湾台風は、日本全国に被害を与え、特に伊勢湾では風による吹き寄せが高潮現象となり、湾内奥地まで海水の侵入による被害が続出した。この伊勢湾台風による死者・行方不明の人が5,265人にもなり、記録に残る台風としては、史上最大のものと言われている。
台風が発達すればするほど、海上は大きな波とウネリが発生し、船舶への影響が大きくなる。
台風接近について、最近は気象衛星から送られてくる写真により、動きの変化をすべて知ることができるので、時間的に見てもかなり遠いところから台風の強度、速度、上陸地点など予想可能になっている。
そして次の時間にはどの地点に入るかなど、円を描き暴風圏を報道している。
台風接近による気象変化から生まれたことわざも昔から重要な手掛かりとして伝えられたものがある。
*海の荒れる前にイナサ(南東)が吹く
*南東風又は南風次第に吹きつのるときは時化
*南東の風強く雨を交える時は時化模様
*西が海鳴りすると天気は悪くなる
*沖が高鳴り(沖合がうなっているような響き)する時は海荒れあり
*大うねりの波は暴風雨襲来の兆し
*海水濁りて潮流が急なれば近日暴風あり
*夏の海鳴りは台風接近の兆し
*海鳴りが大きいと大時化が来る
*9月の東風は大荒れになる
*海鳥が騒がしく舞い立ち鳴く時は暴風近し
*大物が釣れた時は天気の崩れが早い
*マグロは嵐の前によく捕れる
*北東の空に早く飛んでいる雲があれば台風の露払い
すでに台風の接近による現象が、何かの形で前触れしているところから、ことわざとして残っているのであろう。
レーダーや気象衛星などによって観測される台風の姿をみると、ヘビがとぐろを巻いたような形の雨雲にかこまれて、その中心にポッカリと雲の切れている部分が一つ目のように見られる。これが台風の目である。
目の周辺は巨大な入道雲(積乱雲)の壁に囲まれ、猛烈な暴風雨となっているが、目の中に入ると、たちまち、風や雨がおさまり、穏やかな、青空が広がることさえある。
このため、目の中に入ると台風はもう通り過ぎだのではないかと言う錯覚にとらわれがちだが、目の通り過ぎた後には再び猛烈な暴風雨となり、風向きは以前と正反対となり、俗に「吹き返し」と呼ばれる強烈な暴風に見舞われる。
当然のことながら、台風の中心に当たる目の周辺では巨大な波浪が形成され、中型台風で10m以上、小型台風でも6m以上の大波がたち、海面は激浪となり、数万トンの大型船でも強烈な台風の目に巻き込まれると、脱出が困難となる。
(海の気象教室より)
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