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〈警察庁担当官講和〉
「安全・安心なまちづくり」
警察庁生活安全局生活安全企画課課長補佐 関 勇一氏
 
 皆さんこんにちは。去年もそうだったのですが私が最後に20分ほどお話をさせていただいております。皆さん方を拝見していると、昔から一緒にパトロールをした仲であるかのように非常に打ち解けた関係にあるようです。このボランティア研修のそもそもの意義があったのではないかということで、喜ばしいと思っているところです。
 私からは「安全・安心なまちづくり」という話でございましたけれども、時間的な問題もありますので、今ボランティアの置かれている状態と現状について、簡単にご説明をさせていただきたいと考えております。皆さんのお手元に一枚紙を配布させていただきましたが、これは全国におきまして自主防犯活動をやっているボランティア団体の実態調査ということです。
 じつはこの手の調査というのはあまり今までやってこられなかったのです。最近、皆様方のように自分の地域を一生懸命に守ろうということで自発的に活動されるような動きがここ何年か高まってきました。ところが実際どういうふうに全国的に動いているかということを調査した結果がないということです。元々警察が自主防犯ボランティア団体を監督しているわけでもありませんし、皆様方の自発的な意思で行われているということですのでその動きをつぶさに把握することはなかなか難しいのです。全国のネットワークを通じまして、各警察本部と各警察署、交番にいたるところまでお願いということで、毎年、年2回調査をかけております。
 こちらをご覧いただいて分かるとおり、先般プレスにも出しておりますけれども、ボランティア団体が全国に2万6,000あまりあるということです。我々のほうで調査を始めたのがそんなに古い話でもなくて、平成15年末が一番最初の調査です。そのときがわずか3,056団体ということでした。16、17、18と2年半の間にそれが2万6,000ということで、その間、一貫して増加しているということです。またその中でもボランティア活動に従事されている方に至りましては165万人近い方が何らかの形で自主防犯活動に全国で参画されているということです。
 日本における警察官の数が約20数万名ということですので、いかに皆様方の数が多いかが分かると思います。警察は犯罪を防止する、あるいは検挙するという活動は懸命にやっているわけです。けれども、やはり昨今の犯罪情勢が非常に厳しいという中で、皆様方のように自発的に自分たちの町を守ろうと立ち上がっていただいた方たちの助けがなければやはりうまく回らないだろうと考えています。
 この160万余名の方々たちの防犯活動というのがある意味で我々の警察の活動を後押ししていただいているというのが現状でございます。全国から集まっていただいている皆様方が2日間の研修を通じて、またレベルアップしていただければということでこの研修に期待をさせていただいているところです。
 こちらに書いてある中身は皆さんお持ち帰りいただいて、見ていただければと思います。また、ボランティア活動というのは、始めるときは意気が高く、自分の地域で頑張ろうということになります。けれども、いま問題となっているのが、ボランティア活動をはじめてはみたものの、その意欲といいますか、資金的な面も含めてこれをどうやって長続きさせるのだろうかということに恐らく皆様方も壁に突き当たっているところがあるかなというふうに考えております。警察もそういう意味でどこまで皆様方の後押しを出来るかということはあるのですけれども、そういった面についても今後一生懸命考えて行かなければいけないかなということです。
 当初ボランティア活動が盛り上がってきた段階において、先発隊で活動されている方が、今でいうと老舗になっているのでしょうか。そういう方たちがちょうど今3年ぐらい経ったところです。順調にいっている所も中にはありますけれども、いろいろ見えない部分というのが出て来ます。
 たとえば皆様方も活動されていて、自分たちのエリアで活動している中で隣の所にはどんなボランティア団体がいるのだろうかということを考えるようになるかと思います。
 近くに似たような防犯活動をやっている団体があるのであれば、そういう所とタイアップしてどういった情報が入っているのか、隣の町ではこんな犯罪も起こっているということを情報交換したりする。今まで、なかなかそういったボランティアの横のつながりというのがあまり多くなかったと思います。
 警察庁でも去年の11月に「自主防犯活動のためのボランティアの支援サイト」というのを立ち上げまして、現在運用しています。皆さんこれをご覧になった方はどれくらいおられますか。もし、一度でもこのサイトにアクセスされた方がいれば手を挙げていただきたいのです。お1人ですか。じつはあまり認知されてないのですが、警察庁のホームページの中に「自主防犯ボランティアの支援サイト」というのがあります。本当は独立させたサイトにしたかったのですが予算の関係もございまして、警察庁のサイトの中に間借りしております。
 そこに全国のボランティア活動の好事例、今2万6,000ですけれども、約4,000団体あまりのボランティア団体が自分たちの活動振りとか責任者の名前、連絡先を出しております。そこを各県で検索をすると、どういった団体があるかというのが一覧表になって出るようになっております。ですから皆様方の近くの所で、似たようなボランティア団体がいるかとか、同じような目的で活動している団体というのはどういうのがあるのだろうかと探すときにご参考になるのではないかと、今回ご紹介させていただきます。
 もし、お時間がありましたら一度アクセスしていただきたいと思います。ちょうどいま地域安全運動が終わったばかりですので、まだ警察庁のサイトは地域安全運動の期間中の状態になっておりまして、トップページを見ますと右のところに「安全安心まちづくりの日」というのが載っております。そこをクリックするとすぐに支援サイトに飛ぶようになっております。これは時限的ですのでいずれ消えてしまいますので、もしご関心があれば今、見ていただければということです。
 そういった横のつながりのための支援。我々としてはこういったものは全国的な規模でやることも必要なのですが、各自治体とか県レベル、あるいは市町村レベルで同じようにボランティアを紹介するといった取り組みをしていただければということです。たとえば東京都だったら「大東京防犯ネットワーク」というのが作られております。これは東京都の治安対策本部作った立派なホームページです。ここを見ていただくと、またボランティアの紹介とか好事例の他に、各自治体がどのような支援をしているかということが一覧表になって出ていたりします。
 そういったものを、できれば東京だけではなくて各県、あるいは地元の自治体レベルにおいてもできていけば、皆様方の日頃やっている活動とかが、そういった場で紹介される。ということが将来的にあればいいなということで期待をしているところです。
 また、警察でやっている策としては、今回お見えになっているボランティア団体が入っているかどうかちょっと分からないのですが、地域安全安心ステーションモデル事業というのがありまして、去年から初めて全国で331団体入っております。ボランティアの中心になってもらう、核になってもらおうということで、警察で地域を指定しまして、ボランティアの立ち上げに必要な備品などを貸与したりして支援をしています。なかなかこれだけ団体が増えてくるということになりますと、全部の団体の皆さんにいろいろ支援をするということは物理的になかなか難しいということです。
 ましてや警察だけでできる問題ではありません。皆様方が一番身近に接している市町村、都道府県といった所に、立ち上げのため、継続維持のための経済的な支援をお願いしております。以前に比べますと、こういった支援というのが幅広く行われて来るようになっております。いろいろ調べておりますと、皆様方の自治体でもあるかと思うのですが、ボランティア立ち上げのために補助金を出してくれたり、物品を提供してくれたりということはあると思います。
 そういった動きが今後ますます広がっていけばいいかなということです。その辺も今後の成り行きを見守っていかなければいけないと思います。できる限り物的な支援というのも今後広がって行くことを期待しているところです。そのような方向に我々のほうでも働きかけていきたいというふうに考えております。
 あと、皆様方も日頃いろいろとお悩みがある部分も有るかと思いますが、こういったボランティア研修が非常に重要です。全防連さんの方で今回3回目になります。全国規模で集まっていただく研修というのはこれが唯一だと思います。各県レベルで同じようにリーダー研修とかいうのが、今だいぶ開かれるようになってきています。そういったものは非常に良いことで、これだけいる中でわずか20名の方が1年間に1回集まるということだと、十分ではありませんが、従来そういった取り組みがまだなされていなかったということから考えれば、これはまだ短い歴史ではありますけれども、非常に有意義なことだと思っております。県警でもそういった取り組みでリーダー研修、短いものでは1日何時間というものもありますが、できるだけ多くの方に来ていただこうということで人数を広げてやっているという所もございます。こういった動きも今後どんどん広がっていけばいいかなと考えております。
 今日、拝見しまして、皆様方が全国から集まって来て、1泊2日の研修を終えた後、今後ボランティア活動の悩みとかを連絡し合う。地域の情報交換というのは隣接しているわけではないので、犯罪状況とかいったものはだいぶ違うとは思うのですが、ボランティア活動についての悩みというのは同じ方向性で活動していれば同じような悩みが出て来る。そこでの悩み事をせっかく研修で培ってきた関係で今後いろいろ連絡を取っていただく。そういったことが一つ研修の重要な役割だと思うのです。そういった意味では研修がこれに限らずいろいろな所で行われるようになればいいかなと考えております。
 ボランティア活動の重要性というのはいま始まったことではないかと思うのですが、いま特にボランティアについての社会的な認識が高まっています。「犯罪対策閣僚会議」という会議がありまして、これは平成15年から行われています。これは、全閣僚が参加している会議で、もちろん総理も出ます。年2回やっている中で、じつはこの防犯ボランティア活動というのは非常に位置づけとしても高いところにある。ということで、昨年ボランティア活動について表彰制度を作ろうではないかということになり、今年「安全・安心なまちづくりの日」というのが、地域安全運動の初日である10月11日に定められたのです。
 それに合わせまして、自主防犯活動を含めた安全安心まちづくりに非常に功労のあったボランティア団体の方を含めた方たちの活動を総理大臣が表彰するという制度が今年からできました。今回、第1回ということで10月11日に総理官邸で開かれています。
 なかなか警察でやれる支援というのはまんべんなく皆様方に伝わるというところはない部分はありますけれども、我々もできる限り皆様方のご要望、ご希望、あるいはこういったふうに改善したらいいという話がありましたら、ぜひお話を聞かせていただければというふうに思います。また、地元の防犯協会との連携ということも、同じ防犯のために犯罪を少しでも減らそうという目的で、そういった方面との協力関係もひとつよろしくお願いしたいと思います。
 「警察もだいぶ過去に比べますと、犯罪情報なども提供していただけるようになってきた」という声も聞いております。5年〜10年前は、自分の地域でどんな犯罪が起きたということを警察はほとんど情報発信していなかった。それに比べると、ここ最近はよく皆様方のほうに情報をタイムリーに出しているということです。こういった動きも、ボランティアの活動に対して皆様方が運動しやすいようにしている部分かなと思います。ぜひ今後それぞれの地域に帰られましても、ある意味では地味な活動ではありますけれども、非常に重要なことをされているのだということを心に思って、引き続き健康にご留意されながら頑張っていただきたいと考えております。ひとつよろしくお願いいたします。
 私に与えられている時間は以上ですので、これで簡単ではございますけれども終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)


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