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 私達が大切にしたいことは、やはり日本人の心とか文化です。特に団塊の世代の人達は忙しいから文化というのは余計なことということがあって、あまり愛着を持たないとか、歴史的に残していかないとか、良いことを選んで古いものは皆捨ててしまうとかというのがあります。
 今、正倉院展をやっていますけれど、正倉院の銀メッキの鍵です。エビ錠といいます。これは法隆寺です。
 これはシーボルトがコレクションで長崎の出島から持ってきました。実はこれは台湾製のもので、からくり錠です。こちらは安芸錠です。四国などに行くと土佐錠だとかいろいろあります。
 皆さん、私はここに防犯の原点があるような気がするのです。これは非常に学ぶべきところがあります。「Always三丁目の夕日」ってありますよね。結構今、昭和30年代のことをいいます。なぜか。子ども達の周りにはうるさいおじさん、おばさんもいましたけれど、皆から見守られていた。自分のことをいつも思ってくれているなと信じ、安心していたのです。
 これは子ども達が皆に守られているというところです。それは貧乏でそんなに裕福ではなかった。自分の子どもだけという今の時代は、自分の子どもだけ幸せになればいい、やはりお金持ちになって自分の子どもだけ出世して欲しい。そうではなくて、周りの子ども達も幸せになって欲しいという思いがここにはあったのです。それはやはり、皆で子ども達を見守ってあげるということが、私はここから学ぶべきことが多いなと思いました。
 この時の子ども達は幸せだったなと思うのです。それはやはり私達が今まで忙しくて、ずーっと働きづめで来た。その中でそういうことが忘れられてきた。特に団塊の世代の人達は、これから地域に戻って来た時にいろいろなボランティアをしようとするでしょう。けれども今まで競争社会の中で生きてきましたから、あの町とこの町とあの県とうちの県、競争になってしまったら、これはやはりすぐに破たんしてしまうと思うのです。地道に努力して、できることからしていかないと。だからこういう気持ちを基に、地道に動いていかないといけないなと私は思います。皆さんはどうでしょうか。
 私が昭和30年代に警察官になった時には南京錠のつるを切るとか、この掛け金を外すとか、こういう手口がありました。レバータンブラー錠というのがあるのですが、この外側にネジがあるので、このネジを外してドライバーを入れて開く、昭和30年代当時はこういう鍵が主流だったのです。それからカマ錠が出てきた。実は、これは一番奥のほうに突っ込むと開いてしまうのです。そんなに精度が高いものではない。
 鍵という概念だけでは駄目だというところです。やはり精度は時代と共に変わってきます。社会的な背景もあります。建物の部品も変わってきています。この円筒錠というのは非常にはやりました。このトリガーがグッと押さえられていないと、意外と簡単にセルロイドか針金で開いてしまったのです。
 この戸板もぜい弱ですから、特に店舗の裏側へ回ると台所とか勝手口はこういう形で破る泥棒もいます。これは簡単に破れます。アルミは入っていますが中はベニヤですから。この辺がぜい弱なところです。音も無く破壊されます。こういうのがあるということです。
 握玉壊しというのがあります。泥棒はこういう握玉を壊すことによって、こんな所にドライバーを入れると開いてしまうというやつです。
 皆さん、これ見たことありますよね。防犯連絡所便りといって、ベニヤ板にワンドア、ツーロックにしましょう。ドアチェーンを掛けましょう。このレベルです。まだ一般の街の人は防犯というと、この感覚です。鍵、ワンドア・ツーロックだけです。でもツーロック目をどうしようかと。今、そこです。今の手口から見ていくと。やはり私達が対策として確かなことをしていかないといけない。知恵を出していかないといけないということです。
 今までの錠前は東京オリンピック以降にどんどんはやって、日本の経済を支えてくれた錠前です。皆さん、この錠前はご苦労様です。感謝しましょう。この錠前は使命を果たしてくれました。やはりこれに感謝するけれど、次にどうしなければいけなのかということです。
 官民合同会議、皆さんにパンフレットをお渡ししましたが、ここで今、国を挙げて全体でこのことを考えています。防犯性能が高い建物はどうあるべきだろうということを真剣に考えて今、その方向で進めているというところです。
 それから、品確法、特に新しい住宅の場合はCPをどんどん使っていきましょうという方向にあります。そして、これからマンション、特に全防連さんが主体になって進めてくれています防犯優良マンションの認定制度、これが普及していったら、どんどんCPの製品が使われていきます。
 CP製品の基準は5分もちこたえるということです、皆さん、5分はどれぐらいの時間だと思いますか。泥棒からしたら、これは必要ないとか、もっと1分ぐらいでいいとかいろいろ言うかも知れません。この官民合同会議の製品は5分なのです。必ずこれが生きてきます。
 これはどれぐらいの時間かといいますと、この前、安藤美姫ちゃんがスケートで優勝して金メダル取りましたが、あれは4分です。あれは練習しているからできるのです。
 皆さんにパトロールをしていただいたり、周りの人が防犯のことを考えてくれている中で、5分攻め続けてドアをこじたり、ガラスをこじたりするのは泥棒からしたらすごく辛い時間なのです。捕まってはいけない、すごく不安な時間なのです。
 私は試験の指導員をさせてもらいました。最初のうちはどんどん駄目出ししました。もう駄目駄目。でもやはり業界団体の方、一つのメーカーが頑張ったのではなくて国を挙げてそういう方向で頑張って、いいものができたということを私は確信します。日本の製品が良くなったということは外国の製品に比べたら本当に誇れるということです。
 これは錠前だけではなくて、ドアも考えていかないといけない。これは従来のご苦労様、錠前。これが現在の合格品です。このCPの製品をぜひ覚えて欲しいなと思います。これは一つのメーカーだけではなく、いろいろなメーカーの製品があるということです。
 バリアフリーを優先したらちょっとこれは面倒くさいよ、これは使い辛いよという人がいるかも知れません。しかし、自らの用途にあった選択肢ができました。こういうことをぜひ覚えて欲しいと思います。
 これは実はこのところがマグネット式です。女性の方の部屋であれば、こういうものはぜひ選んで欲しいです。これは泥棒はやりようがないのです。これはお出かけサムターンといって、鍵を抜くやつです。これは面付けの本締まり錠ですが、補助錠としてこういうのを選んで欲しいです。二つ目の錠前として。
 CP製品のサムターンはこんなにあるのです。これだけあったら使い勝手がいろいろあります。コストのこともあります。皆さんが選べます。選択肢ができたというのが非常に大きなことなのです。これはやはりきちっと理解して欲しい。
 1本の針金でこれはとても開きません。穴を開けて攻めても駄目です。実際に試験をしてみました。これは学生で、防犯実務専科生です。屈強な警察官が5分交代で40分やっても開かないのです。だったら防犯性能は絶対ありますよね。皆さんに体験してもらったらありがたいですけれども。
 これから電気錠というのがどんどん出てきます。でも電気錠の中でデッドボルトが従来の物だとやはり駄目です。これからはバイオメトリックといって、こういう指紋とか、こう彩とかこういうのが出てきます。これも官民合同会議の中で防犯性能の高い建物部品として、これからどんどん出てきます。これも選ぶ時にはぜひ覚えてください。
 それから、防犯性能のことだけで言いますと、実はこういうのは使い勝手が悪くて駄目だと最初から否定する人がいます。これはお年寄りだとか体のご不自由な方は使えない。これは使えないかも知れませんけれども、もっと優しさを考えたらタッチキーとかノンタッチキーとか、こういうものであればお年寄りだとか体の不自由な方はこの方が本当は使いやすいです。
 パニックファンクションといいまして、ハンドルを上げておいて下げるだけで開くドア錠もあります。本当はそういうのが人に優しいということになっていくのです。ただ、やみ雲に強いものとか強固なものが防犯ではなくて、人に優しいということが大事です。
 これは30年代の木製の格子です。木製の格子だったものがアルミになったのが40年代なのです。でも、これは手でグイグイやると取れてしまう。これは防犯性能がありません。
 特に夜入る忍び込みの泥棒。お風呂場は意外と換気のために開けておくことが多いです。泥棒からしたらこの格子をグリグリとやって入れば窓が開いていますからここを狙うのです。ですから、お風呂場の格子だけは防犯性能の高いのにしましょうというのは、ここにお金をかけなくてはいけないということになりますよね。こういう知恵を出していって欲しい。現状に基づいて、対策を立てて欲しいと思います。
 これもバールであおるやつです。一挙にあおっていきます。これはクレセントが破損するなど、意外に簡単に開いてしまうのです。こちらもグッと揺すります。揺するとクレセントがクックックッと開錠されてしまうのです。これはバールでサッシ枠をこじていますね。これは防犯性能の高い建物部品の試験です。実際にこういうサッシ枠でこれが煙返しといいます。このクレセントが2ヵ所つく。ガラスも合わせガラスといって防犯ガラスになっていきます。
 これは見たことありますか。これは卓球の愛ちゃんタイプと言うんです。結構最近センサーがオートロックのドアから離れた位置に付いています。これはドアの下からこう入れこう揺すると、これでセンサーが反応します。これにメジャーが付いていて引いてくるのです。開いたらこうやる。うまくできているでしょ。
 次に行きましょう。これは防犯ガラスで実際に打ち破っているところの試験です。7回打っても、こんな程度で穴が開きません。ウインドフィルムも全体にはらないと駄目です。部分的に45センチ大では、切り破りと同じ手口で簡単に破れてしまうのです。既存の6ミリぐらいのガラスですと。全体的に貼らないと防犯性能はありません。
 これは合わせガラスです。皆さんにお願いしたいことは人に優しいということを防犯と合わせて考えていただきたい。京都議定書の中で温暖化防止が取り上げられていますが、これは合わせ複層ガラスです。これは防音、断熱に非常にいいですので、特に地方で雪の多い寒い所はこの合わせ複層ガラスをぜひ使っていただけたら防犯性能は格段に大丈夫ということになります。この辺はぜひ覚えて欲しい。
 このシャッターをちょっとご覧ください。こういう攻め方があります。ガイドレールを付けたことによって非常に強くなりました。バールでやってもオーケーです。これは従来のラッチ錠です。それにこういうガイドレールを付けてこういうふうに工夫したことによって、バールでやってもオーケーです。
 ピッキングもできませんし、これは攻められません。非常に良くなったこのCPの製品をぜひ覚えてください。
 ちょっとご覧ください。歌舞伎と白波というのでいろいろ調べてみました。時間がないのでまたの機会に詳しく話します。実はこの河竹黙阿弥が白波という泥棒のことを書いているのです。私の田舎の、日本左衛門、これは有名です。これは大泥棒。「問われて名乗るのもおこがましいが生まれは遠州浜松在」。私の田舎なものですから、気になって気になってどこだろうと探し回りました。やっと分かりました。後でまたその機会に話しますけれど。実はこの遠州の宿場にある、古文書を見ると被害があったのは片瀬村の弥次兵衛さんという所なのです。日本左衛門は、ずーと逃げ回ります。愛知の御油の松並木、それから金比羅山、ここも行っています。宮島も行っています。そして京都東町奉行所に自首するのですが、この奉行所跡があります。ねずみ小僧、これは実際にあった話です。歌舞伎にもあります。これは小塚原の処刑場で処刑されました。今、回向院にお墓があります。受験生が墓石をかいて持っていくのです。あまり勉強しないやつが墓石かいていくとご利益があるというので大勢来ています。
 鬼坊主の清吉というのがいまして、これも墓が雑司ヶ谷霊園にあります。これもどういうわけか墓石をかいていくのです。泥棒のお墓なのに。これは面白いなと思うのです。裏宿の七兵衛さんという足の速い泥棒もいました。小説の大菩薩峠にも出てきます。実は今マラソンランナーが七兵衛さんのお墓にお参りをして、このお守りを持っているのです。こんなのを付けて走っている人もいます。実は野球の選手とかお相撲さんもここにお参りに来ます。石川五右衛門です。浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ。まさにこれですね。われわれはいつまでも泥棒と対峙していかないといけないと思うのです。
 最後になりました。江戸しぐさです。優しい思いやりの行動。ここのところをもうちょっと話したいなと思ったのですが、時間がなくなってしまいました。ご静聴ありがとうございました。(拍手)


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