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 声を掛けられた時の状況という表が載っています。何人の子どもを対象にして実施したアンケートかというのは読み取れないのですが、いわゆる不審者から声を掛けられた場所ということです。下校時が41.9%、登校時が14.9%ということで合計して約6割が登下校途中。なかんずく6割中の4割強が下校途中。あと、塾の帰りとか塾に行く時、遊びの帰り、遊びに行く時、遊戯中、その他となっています。
 まさにボランティア活動、見守り活動を推進していくには、この警視庁だけの統計の結果ですが登下校途中の子どもの見守り活動というのが子どもを犯罪被害から防ぐためには非常にキーポイントとなってくるのではないのかというところです。
 ところで「83運動」という言葉を聞いたことがある方はいらっしゃいますか。これは8時と3時、ちょうど小学生が登校、下校する時間を指しているのです。それを83という呼び方をして8時と3時に子どもを見守りましょうということだと思います。83運動の全国的展開という言葉も言われておりますので自主防犯ボランティアを実施される上での参考にしていただければいいのかなというところです。
 続きまして、その2は通学路や通学時間帯における街頭活動の強化ということです。制服警察官による街頭活動、いわゆるパトロールの強化は犯罪企図者に犯行に及ぶことを思いとどまらせるのみならず、それはそうですよね。何か子どもに変なことをしてやろうなんて思って小学生を探している時に制服警察官とばったり出会えば、目の前で悪いことをやるやつはまずいないと思います。
 悪いことをやろうと考えている者に犯行を思いとどまらせるのみならず、パトロールしている制服警察官の姿を見て地域住民に、ああ、パトロールしてくれているんだなと、多大な安心感を与えるわけです。ということで制服警察官による制服を見せる街頭活動の強化ということは有形無形の犯罪抑止効果をもたらすということが言えると思います。
 このようことから現在、第一線警察署におきましては、いろいろな仕事があるのですが可能な限り制服警察官による街頭活動の強化、いわゆる制服を見せる警察活動を特にこの83を中心にして強化しているところです。
 その3としましては地域安全情報の迅速、的確な把握と発信ということです。それぞれの職域、地域が防犯活動等を通じて得た不審者等に関する情報、いわゆる地域安全情報を当該活動団体内にとどめておいてしまっては、もったいないのです。これを迅速に発信していろいろな防犯ボランティアの団体同士、あるいは警察に情報を流していただいて、その情報を共有してこそ初めて効果的かつタイムリーな安全対策が構築できるということです。
 現在、警察では、いろいろな伝達手段の相違こそありますが、地域安全情報の受け付けとか発信体制は全国警察において確立されて運用されているところです。それでは全国警察の情報の発信、あるいは受け付けの体制を二、三紹介していきたいと思います。
 始めに大阪府警察本部の例です。ここでは、ひったくりや子どもへの声掛け事案など犯罪から身を守るために必要な犯罪発生情報と防犯対策情報を電子メールを使用して警察署からリアルタイムに発信するほか、府警本部のホームページにも当該情報を掲載するなど情報提供ネットワークを構築しました。
 続きまして警視庁の例を申し上げます。警視庁本部にメールアドレスを登録している者に対して警視庁本部から電子メールを配信しているほか、警視庁のホームページ上に区市町村ごとの地域安全情報を掲載し、日々更新しています。
 最後に茨城県警察本部の事例です。県本部のホームページ上に地域安全マップと称した地図を掲載。小学校の校区単位ごとに警察施設、警察署とか交番、駐在所や「子ども110番の家」など、子どもの安全上必要な場所や、あるいは変質者等の出没情報などの危険な場所に印を付けて、子ども達の生活圏内における安全な場所、逆に危険な場所を容易に確認できるようにした、いわゆる地域安全マップというものを掲載して更新しているということです。
 このように全国警察はさまざまな創意工夫をこらしまして情報の発信、受け付け、あるいは共有化に努めているところです。
 ここで私の警察署勤務時代で情報発信の方法で留意していた点について、経験を基に紹介させていただきたいと思います。ちょっと子供の安全対策から話ははずれますが情報発信というところで付言させていただきたいと思います。
 振り込め詐欺という言葉は聞いたことがない人がいないぐらい新聞だとかテレビで報道されております。全国的には減少傾向にあるものの、警視庁管内ではなぜか増加傾向を示しているのです。この振り込め詐欺に関する情報発信の仕方で留意していた点について紹介させていただきます。
 私が今年の8月まで勤務しておりました警視庁小金井警察署管内におきましても、ご多聞に漏れず去年に比較しまして振り込め詐欺が倍増とまでは行かないまでも去年よりは増えているのは事実なのです。被害総額のほうもしかりです。
 振り込め詐欺を一応ご紹介しますと例えば弁護士等を装い、ご主人が痴漢をして逮捕された。示談金として今すぐウン百万円が必要。あるいは息子さんを装って、仕事上のミスをしてしまって会社にウン百万円の損害を与えてしまった。穴埋めをしないと首になる。今すぐお金を振り込んでちょうだいよと泣きながらお父さんとかお母さんに。というように被害者の肉親を思う情につけ込んだ、特に高齢者が被害者となっている犯罪です。
 この犯罪が小金井警察署管内で多発した場合には直ちに、このような手口の振り込め詐欺被害が多発していますので注意してくださいよというような内容の情報を発信するのです。しかし、高齢者が被害者となることが多い犯罪であることから、パソコンや携帯電話などのいわゆる電子メールで発信しても一番情報が届いて欲しい高齢者には届かないのです。
 なぜなら、ある高齢者を対象とした防犯教室で私が問い掛けをしたのです。小金井警察署から常時、管内の犯罪の発生情報等々についてこんな犯罪が発生しているから注意してくださいよと流しています。どのような情報発信手段だと目にとどまっていただけますか。そうしたら、やはりパソコンだとか携帯電話、いわゆる電子メールとお答えになった高齢者の方はいなくはなかったけれど少数派なのです。
 どの情報発信だと見てくれるかというと、やはり新聞折込とかチラシ。一番目に付くのは町会等から回って来る回覧板で、これだったら見るというような回答でした。いくら携帯とかパソコンで情報発信しても、これでは一番情報が届いて欲しい高齢者に届くわけはないのですね。
 このような実態を受けまして管内全ての町会長に対して振り込め詐欺被害の防犯対策に関する注意事項を記載した、いわゆる生活安全ニュースなるものを配布して回覧板での回覧を依頼、また、市役所の玄関ホール、病院の待合室、図書館、公民館等、高齢者が集うと思われる場所にこの生活安全ニュースを配布、またはバスの中やJRの駅での防犯アナウンス依頼、果てはヘリコプターによる空からの防犯広報、ケーブルテレビによる情報発信も行いました。
 そして一番振り込め詐欺においては水際と言っても過言ではないと思います金融機関に対しては、水際作戦と称しまして、特に高齢者の方が50万円以上お金を引き出す、あるいは振り込む際、そういうのを見た時にはひと言、今振り込め詐欺がはやっていますけれど大丈夫ですかというような声掛けを実施していただく。小金井所管内には郵便局とか信用金庫を含めて金融機関は五十幾つあったのですが支店長、あるいは次長クラスを全部小金井警察署の講堂に招致しまして、お願いを致しました。
 このような手段を講じて考えられるすべての情報発信手段を駆使して情報の受け手に間隙が生じないような対策を講じました。その結果、銀行から今振り込もうとしているおばあちゃんがいて、振り込め詐欺被害だと分かりましたというような一報をいただいたりして一定の効果を収めた次第です。
 今21世紀になってデジタル化だのIT化だのと言われております。確かにそれはそれで警察としても、そういったものに対応した情報発信も必要です。しかし、アナログ的な情報発信の仕方も、いくら21世紀になったといえどもまだまだ必要です。そのようなことを肝に銘じてケースバイケースで情報発信手段を考えて発信すれば情報の受け手に漏れがなくなるのかなと。情報発信の仕方で留意した一例としてご紹介した次第です。
 話を戻します。第二として関係省庁との連携ということです。その内、「犯罪から子どもを守る対策に関する関係省庁連絡会議」の発足による政府を挙げての取り組みの強化ということです。
 先ほどご紹介しましたように相次ぐ小学児童の殺害事件の発生を受けて、政府を中心として関係省庁の講ずる対策が有機的にリンクするよう、平成17年12月、内閣官房副長官補を議長とし、内閣府、警察庁及び総務省等の事務担当局長により構成された「犯罪から子どもを守る対策に関する関係省庁連絡会議」を発足させて省庁横断的な対策を取りまとめました。
 そして同17年12月、内閣総理大臣を議長としました先ほども申しましたが、犯罪対策閣僚会議において同対策が報告され総力を挙げて子どもを守る各種対策を推進していくことが確認された次第です。
 その2は「子ども安全・安心加速化プラン」の策定についてです。このプランは子どもを非行や犯罪被害から守るための対策に関する関係省庁プロジェクトチームによるものです。犯罪から子どもを守る対策を迅速、的確に推進していくために犯罪対策閣僚会議、青少年育成推進本部との合同会議に「子ども安全・安心加速化プラン」が報告され了承された次第です。
 このプランで策定されました骨子は主に三本柱からなっております。その第1は地域の力で子どもを非行や犯罪被害から守る。第2は子どもが非行、犯罪被害に巻き込まれない力を地域で育む。第3は困難を抱える子どもの立ち直り等を地域で支援する。
 この三本柱をお聞きになって既にお気付きのことと思いますが全ての柱に「地域」という言葉が挿入されています。換言すれば子どもの安全対策は警察等関係行政機関のみならず、地域が連帯感を持ってそれぞれの地域の子どもはそれぞれの地域で守っていく。そうした地域力の復活こそが犯罪から子どもを守る有力な対策の一つとなる。政府としてもそのことを期待している証左だと思われるということです。
 また、治安が悪化しているとの国民の意識の高まりからか、皆様方のような防犯ボランティア団体の活動が大変活発となってきた。平成15年末にはこのボランティア団体数が3,000余、活動人員は約18万人でした。その2年半後の平成18年6月末現在では団体数が約2万6,000団体と8.5倍、活動人員に至っては約165万人と9倍となり、この日本の古き良き伝統である相互扶助の精神はまだまだ息づいているのだと確信した次第です。
 第3として地域住民等との連携の強化ということについてです。その1点目として防犯ボランティア活動の活性化と支援ということが掲げられると思います。この犯罪の抑止というものは既に再三申し上げております通り、警察の独力のみではなし得ないのです。関係省庁はもとより、特に皆様方を始めとした地域住民等のご協力を賜って初めて十分な効果が期待されるというようなことです。
 したがいまして警察が犯罪抑止の強力なサポーターである防犯ボランティアの活動を支援していくことは警察として当然の責任ということが言えると思います。
 そして、さまざまな支援策の一つとして本年初めての施策となりますが、特に顕著な功績のあった全国の自主防犯ボランティア10団体に対して過日総理大臣官邸におきまして安倍総理からの表彰伝達式を警察庁主催で実施致しました。今後とも自主防犯活動に従事していただいている方々の意識高揚対策を積極的に警察庁としては推進してまいる所存です。
 その2は「子ども110番の家」に対する支援と活性化ということです。「子ども110番の家」とは子どもが何らかの犯罪被害に遭い、またはその恐れがある場合にその家に駆け込み、当該子どもの一時的保護及び110番通報等をしていただく制度です。このことは既にご案内の方も多数いらっしゃると思います。
 そして、その後もJR旅客鉄道各社を始め各鉄道会社の協力を得まして全国の駅員が常駐している駅を「子ども110番の駅」として同様の役割を担っていただいている次第です。
 しかしながら、その委託主体が各地域の教育委員会やPTAなどの学校関係機関であったり、自治体、警察、あるいは警察の地区防犯協会などさまざまである。また、依頼先にも一般家庭から商店、事業主など千差万別です。さらに有事の際における対応要領、いわゆるマニュアルが画一化されていないなど形がい化が懸念されるところでした。
 そこで、警察庁としましては平成17年10月に社団法人日本PTA全国協議会、社団法人日本フランチャイズチェーン協会、財団法人全国防犯協会連合会、文部科学省、東京都教育委員会のほか学識経験者及び警察関係者などからなる「子ども110番の家に対する支援と活性化検討委員会」を設置し、支援と活性化策を決定致しました。
 その内容は前述しました委託主体間の連携による地域安全情報等の共有体制の構築、表示板及び対応マニュアルの作成及び講習会の実施などです。ハード、ソフト両面における支援と活性化の具体的推進要領につきまして策定すると共に全国警察に対して通達を発出しまして指示を徹底したところです。
 その3は退職警察官の活用ということです。防犯とか捜査などの治安活動に豊富な知識と経験を有する退職警察官を、学校と警察との連携業務等に従事させることは子どもの安全対策上、極めて有益な人材活用方策と言えます。そこで、退職警察官を非常勤職員という身分で再雇用し前述しました警察と学校との連携業務等に従事させる、いわゆるスクールサポーター制度を発足させ、平成18年3月末現在、20都府県で導入されています。
 そして学校からスクールサポーターを通じて犯人の検挙につながるような情報提供などもあり、学校及び地域の安全・安心に大きく貢献しているところです。警察庁としても現在20都府県ということですが、近未来47都道府県警察にこのスクールサポーター制度が定着するように各全国警察の支援を今後とも継続して、1年でも半年でも1日でも早く全都道府県警察でこの制度が普及するよう努力を継続してまいる次第です。


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