●韓国での「アジア里親大会」と学生調査団来日
去る2006年9月15〜16日、韓国里親会(韓国里子養育父母協会、カン・スンウォン会長)が主催して、初のアジア里親大会(アジア子どもの権利と里親会議2006)が、ソウルで開かれました。この協会は正式に発足してから8年という若さですが、政府と企業の大きなバックアップを受け、伸び盛りです。
大会参加者は約150名。その他、里子合唱団やマスコミなどを含めると、全部で約350名という、盛大な大会でした。参加国は西から、ウズベキスタン、アフガニスタン、パキスタン、インド、カンボジア、フィリピン、台湾、中国、韓国、日本、国際里子養育機構(IFSO)からアイルランド人のヘンダーソン会長も来賓として参加し、11カ国でした。日本からは21名でした。
日本人の発表は、京都府立大学の津崎哲雄教授が、「大人の既得権益対子どもの権利」、ライターの村田和木さんが、「日本ではなぜ里親委託が増えないのか?」という題で、発表されました。栃木県の里親の藤正信氏は、フィリピンの子どもの支援活動と、日本の堕胎の問題を指摘し、尺八、オカリナ、ショーファーで、彩りを添えました。
大会の詳しい結果は、私のホームページをご覧ください。
各国の発表に、「子どもが家庭を持つ権利」という言葉が何度も出てきました。「子どもが家庭を持つ権利を保証しよう」、これを今後の日本の里親関係者のスローガンにしてはどうかと思います。各国の発表者から、「次は日本で?との声を何度も耳にしました。できれば3年くらいのうちに、日本でアジア里親大会を開けないものかと思います。
アジア大会のおまけとして、その時のボランティア学生と友人の4人が、同年12月の8日間、里親の調査に来日しました。
北海道では中央地区里親会でのホームステイと札幌市里親会での調査の他、雪合戦と温泉と寿司を楽しみ、東京では養育家庭の会とアン基金プロジェクトでの調査を無事終え、満足して帰りました。韓国は国際養子に出しすぎているとの汚名をそそぐべく、国が里親制度にとても力を入れていますが、貧富の差が大きく、里親になろうとする階層が限られるのではないかとのことです。
いずれにしても、アジアの里親運動は、しばらく韓国里親会を軸として進んでいくことでしょう。エネルギーでは韓国に押され気味な日本ですが、日本の方が充実している面もあるので、学びあえればと思います。
中兼正次(北海道、里親)
●地区別里親研修報告
平成18年度の地区別里親研修会は、9月15日(金)に四国、10月1日(日)に北海道で行われ、無事8地区すべての研修会を終えました。担当の里親会のご尽力でそれぞれの地域の特色が現れ、有意義な研修会でした。今まで交流のなかった他県の仲間と悩みや経験を語り親交を深めました。また来年も地区別研修大会で再会し、子ども達の健やかな成長を確かめ合えるよう願っています。お疲れさまでした。
★9月15日(金)四国地区里親研修会
高知県高知市(ウエルサンピア高知)
鼎談 テーマ「家族の絆」
鈴鹿医療科学大学教授 新宮一夫氏
子育て支援室「みその」 主任保育士 谷本恭子氏
★10月1日(日)北海道地区里親研修大会
北見沢市(北見沢市文化センター)
講演「私の出会った子どもたち」
市立名寄短期大学教授 家村昭矩氏
平成19年度地区別里親研修会について
『里親と施設、児童相談所との連携』を共通テーマとして下記のとおり開催が予定されています。
ブロック |
担当地区 |
日程 |
会場 |
北海道 |
中央地区 |
9月30日(日) |
千歳市民文化センター |
東北 |
青森県 |
8月28〜29日(火・水) |
青森市 |
関東甲信越静 |
千葉県 |
7月7〜8日(土・日) |
アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張 |
東海・北陸 |
愛知県 |
6月8〜9日(金・土) |
蒲郡市 |
近畿 |
神戸市 |
6月9日(土) |
神戸市産業振輿センター |
中国 |
島根県 |
6月上旬 |
松江市 |
四国 |
香川県 |
9月中旬 |
高松市 |
九州 |
大分県 |
7月中旬 |
別府市 |
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●ピアカウンセリングについて
前号で里親サロン、ピアカウンセリングについてとりあげたところ、ピアカウンセリングの勉強法について教えてほしい、などの問い合わせがありました。
ピアカウンセリングをご自身の地域で取り入れる場合、どのようにしていけばよいでしょうか?残念ながら里親サロンにおけるピアカウンセリングは、こういうものだと言う明確なものは現在のところまだ確立されていません。しかしながら、ピアカウンセリングはその原理を応用してさまざまな分野で使われており、里親サロンにおいても有効な点は多いと思われます。カウンセリングといっても、あくまで仲間(ピア)で行うものですのですので、相談をする側とされる側に対等な立場があることが前提です。ただその中でもピアカウンセラーは、相談者よりも里親制度についての知識をもっており、相談者の悩みを傾聴しながら、決して上から押し付ける形でなく情報やスキル(技術)を伝える技術が必要です。ピアカウンセラーとしての態度や心構えなどは、共通したものがありますので、ピアカウンセリングに関する書籍などを参考にしてみたり、最初の数回はそうした技術を持っている臨床心理士や自治体でピアカウンセリング講座などを主催している人たちに協力をお願いするのもよいかと思います。
ただピアカウンセリングがどちらかというと悩みに対して、一対一で相談や対応するということを考えると、里親サロンに集まった全員がそれぞれの抱える問題をお互いに支えていく場合にはセルフヘルプグループ(当事者同士での支えあい)という考え方が適しているかもしれません。セルフヘルプグループでは、共通の問題をもつ人たちが集まり、そこではお互いが傷つけ合うことなく悩みを話せるように、いくつかのルールがあります。そうしたルールのもとで、安心して自分の悩みを話し、また他の人の話を聞くことで自分自身の悩みを客観的に見つめ直したり、お互いの問題を認識しあったりすることができるようになります。最近では子育てに悩む親たちなどにも多く活用されてる手法です。こちらのセルヘルプグループに関しては、具体的なやり方が書かれている本(『セルフヘルプ・グループとサポート・グループ実施ガイド』高松里著 金剛出版)などを参考にして、まずはルールに従ってお話を始めるだけでも比較的容易に実践できるのではないかと思われます。また上述のようにこうしたグループについての知識を持っている臨床心理士やワーカーなどに協力を求め、そのやり方がなじむまでの足がかりをつくってもらうのも1つのやり方かと思います
(記:臨床心理士 御園生 直美)
〜小学校入学にあたって〜
新しい里親にとって、里子が小学校入学というのはうれしさと、そして戸惑いの時。
実子で入学を経験した里親、また実子のいない里親、それぞれ状況は異なりますが、いずれにしろこれから始まる新生活は里子・里親には不安でいっぱいです。そこで、先輩里親さんに小学校入学に際し、実際の体験をうかがいました。
[CASE1]
我が家は里子の小学校入学にあたって、実子の通っていた小学校に入学させること、通称名を使うことを前提としていました。そのため学校などからの連絡の氏名が実名で来ることが最初の不安でした。
まず、入学の前年4月に教育委員会に行き、里子であること、通称名で通わせたい旨をお願いしました。
その後5月の運動会に来年度の入学予定者ということで学校からお知らせが届きますが、教育委員会にお願いしておきましたので、運動会も秋の就学時検診も入学式の通知も通称名で届きました。
次に11月頃、学校に伺い、校長先生に里子であることなどをお話ししました。実子が6年生に在籍していたこともあり、我が家の状況をよく理解していただきました。
その後は入学式当日担任の先生とお話が出来るように連絡を取り、里子の様子や今後の対応などについて話しました。
入学前に学校や教育委員会に連絡を取っていたために大きな不安もなく現在まで来ています。これから里子の世界もだんだん広がっていき、問題も出てくると思います。その都度、早めに学校と連携を取り合って対処してきたいと思っております。
[CASE2]
ある里親さんは児童相談所の里子担当者と話し合い、教育委員会、学校長等に事前に話をしてもらっておいた。
[CASE3]
保護者の中には、いろいろ不思議に思い質問してくる方もいます。その場合、あまり隠さずに話をして、里子・里親の関係を理解してもらうよう努めた。親同士の交流が大切。
里子の個性とおかれている立場は、1人1人違いますので、里親の臨機応変な対応が必要です。里子とともに4月には、新しい環境へ足を踏み入れ、またその中で新しい体験や出会いがあることでしょう。そして里子たちがたくさんの友達・楽しい思い出を作って毎日笑顔で過ごしてくれるよう願っています。
青森県 葛西れい
これまで里親として多くの里子を養育してきましたが、専門里親として障害児・被虐待児を養育するようになり、子どもを育てるということはどれだけ大変であるかということを再認識しております。
私は昭和50年10月1日に里親として登録され、同年11月15日から里親として子どもを養育する事になりました。現在は、家族4人で17才男児2人の里子を養育しています。1人は高校在学中で、もう1人は児童養護施設で問題児とされ、養護学校も退学となった子どもです。
子どもたち2人には、親・兄弟もいます。里親として、発達障害とともに生きていく子どもたちに対応するのは大変です。里子の1人はADHD(注意欠陥・多重性障害)で医療機関から向精神薬の処方を受けています。我が家に里子としてやってきた中学2年生の頃は、小さなおもちゃで遊び、気に入らないものはどこにでも捨ててしまいました。当初は寮から通学していましたが、自分で起きて通学することが出来ず退寮となってしまい、その後は毎日、私が車で送迎していましたが、この子は、せっかく友達ができても、障害のため暴力で周囲を傷つけるなどの問題行動が続き、1年で退学することになりました。養護学校から退学されたことで子どもは少しずつ反省することがわかるようになりました。今は、病院に通院しながら、レコードを聞いたり、本を読んだりし、時には私と一緒に山で散歩をして楽しい一時を過ごしています。
子どもはマスコットではありません。子どものために自分ができるだけのすばらしい力を子どもに与えたいと思っています。
障害のない子どもでも一度問題を起こした子どもを落ち着かせるには時間がかかります。万引き、女性問題、すぐにカッとなる短気な子ども、子どもの性格をみて、子どものために時間をかけて頑張ってほしいと思います。
全国の里親のみなさまの幸福とご健康を祈りながらペンを置きます。
鹿児島県 青木学
私達家族は、鹿児島県霧島市霧島に在住しています。霧島市は、平成17年11月7日に1市6町が合併して誕生した鹿児島県で2番目の人口規模を有する市で、その中でも霧島は、日本百名山の霧島山・天孫降臨の神話に由来するニニギノミコトを祀った霧島神宮のある自然豊かな観光地です。
私達夫婦は、不妊治療も何回か試みましたが、なかなか子どもに恵まれなかったので、養子縁組を前提とした里親制度に平成15年に登録を申し込みましたが、その年は保留で正式には翌年に里親として認定されました。
登録はされたものの何の連絡もないまま歳月だけが過ぎ、少し不安になりかけていた頃、私が里親会の主催する会に出席した際、児童相談所の方より人見知りの強い2歳半過ぎの男の子がいますという話がありました。
自宅に帰り早速妻にこの話をしたところ、会ってみてはどうかとの答えでしたので、いろいろな方々の計らいで最初の出会いが乳児院で実現しました。
その翌日より、妻の乳児院行きが始まりましたが、最初のうちは遠くから見守るだけでなかなか進展がなくイライラしているようでした。その内に段々信頼関係が出来てきたようで、1ヶ月半を過ぎるころには、夕方別かれるのがとても辛いので、泊まり込みをして一日中一緒にいたいと妻が言うようになりました。その事を乳児院に相談をして一週間くらい泊まり込みをしましたから、本当の親子みたいに信頼関係が出来上がりました。
この後1ヶ月の外泊預かり試し期間を経て、正式に平成18年7月24日付けをもって措置変更の手続をして、親子3人の生活が始まり4ヶ月経過しようとしていますが、本当の実子と変わりなく悪いことをすれば怒るし、良いところは精一杯誉めています。
まだ始まったばかりの生活なのに、私達夫婦の間に誕生して永い間一緒に生活しているような気がしてなりません。
最後に、今この様な信頼関係に満ち溢れた家族を形成出来たことは、色々な関係者のお陰と妻の地道な努力の結果以外には何もありませんので、心より感謝している次第です。
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