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●ピアカウンセリングについて
■里親サロンはうまくいっていますか
 国が里親相互支援事業(里親サロン)を始めて3年目になります。導入する地方自治体も増えて、多くの里親会で里親サロンを開いているようです。しかし「これでいいのだろうか」という声も耳にします。集まって話をする、すると「先輩里親が自分の意見を押しつけてくるので自分の悩みをオープンにできない」、あるいは「制度の問題や児童相談所のことに話が及ぶが、これらは話しただけでは解決しない、かえって欲求不満になる」など。
 里親サロンの運営についてはピアカウンセリングという言葉が使われています。そこで、ピアカウンセリングについて取り上げてみました。
 
■ピアカウンセリングの重要さを理解していますか
 ピアカウンセリングのピア(PEER)は仲間という意味。現代は競争社会で、うっかりしていると蹴落とされてしまうような社会ですが、そういうなかで、お互いをサポートしあえるようなつながりはとても大事なことです。とくに里親は地域のなかで孤立することもありがちですので、なんでも相談できる仲間をもっていることは助けになることでしょう。
 ピアカウンセリングとは、何らかの共通点をもつ仲間が対等な関係でカウンセリングすること。仲間からサポートされていると感じる場にいることで、効果的に援助しあったり悩みの解決につなげることができます。そうしたことから、今さまざまな団体で導入されつつあります。
 カウンセリングというと専門家のイメージがしますが、ピアカウンセリングは仲間が行うものです。ピアカウンセラーは通常、解釈や診断はしません。もちろん話の流れを誘導することもしません。問題の解決については本人が一番よく分かっている、という立場をとります。ピアカウンセラーの役割は、アクティブリスニングなどのスキルを使って、相手が自分の考えや気持ちを明らかにして解決や選択の支援をすることです。ピアカウンセラーは固定化せず、みんながそのスキルを理解して役割を交代していきます。
 一般には、参加者の自己紹介、参加した理由や動機を話してもらうことから始めて、里親サロンの趣旨を確認します。秘密厳守(ここで話されたことを他で話さない・安心で自由な場を確保すること)、批判的なことや決めつけになるようなことは言わない、他の人が話しているときは傾聴し途中でさえぎらないなどのルールを決めておくことも大事です。
 
■ここがピアカウンセリングのポイント
・ピアカウンセリングは他の人の自助努力を手助けすること。手助けする立場にたつと「自分はこの人を助ける責任がある」と考えて必要以上のことをしがちです。要注意。
・ピアカウンセリングの理念は「人間はチャンスさえ与えられれば日常で当面する問題のほとんどを自らの力で解決できる」という考え方。ピアカウンセラーの役割は相手の問題を解決することではなくて、相手が自分で問題の解決を見出す手助けをすることです。
・ピアカウンセラーは「こうすべきだ」というような決めつけや答えとなるようなアドバイスをすることもいけません。話に耳を傾け問題の解決に向けて共に考え、相手を支えることが役割です。
・自分の経験で判断したり批判をしないこと。話し合いのなかから「問題はなにか」を掴んでいく。「どういう気持ちなのか」などの問いかけをする。同じような経験をしたことがある場合は「私もそのようなことがあった」「私もその時そう感じた」と言ってあげるといい。「私は」「私の場合は」と限定的な言い方をする。秘密は必ず守る。自分の希望や価値観を相手に強制しない。すべて自分で引き受けないで、タイミングがきたら他の人やサービスを紹介する。相手の希望や価値観、信念を尊重する。相手の抱えている問題があまりに難しい場合は見極めて適切な専門家を紹介すること。スーパーバイザーを置き協調して行うことが望ましい。法律的、倫理的、道徳的な責任と制限に従うこと。所属機関の方針を守ること。
(木)
●ユニーク里親さん紹介
 会合や研修を通してさまざまな里親さんにお会いしますが、皆さんパワフルで、とくに子育てが実に多様なのに驚きます。児童養護施設の養育は団体生活が基本ですから、どうしても画一的にならざるを得ないのでしょうが、里親の場合は里親さんの考え方次第で、個性的に養育することが可能です。可能と言うより、この多様さは、里親による養育の重要な要素である、といえると思います。見聞きしてきた里親さんをご紹介してみます。
 専門里親の研修会で知り合った里親さんは、苗字は違うものの姉妹でした。姉妹で里親をやっていればレスパイトも簡単。お互いに、子育ての相談も気軽に親身になってできることでしょう。なるほど、こういう方法もあったか、とひとり頷きました。
 英語を勉強したい、という里子の熱意に動かされてカナダに里子を留学させている里親さんもいます。児童養護施設ではできないことでしょうが、普通の家庭でしたら子どもが留学することは普通です。里親の場合にもムリではないかと思いましたが、厚生労働省にまで判断を仰ぎ、結局OKをとりました。児童福祉法の改正で里親にも親権の一部である監護権が認められましたが、監護をしっかりしていれば必ずしも手元で養育していなくてもいいわけです。養育の可能性を切り拓いている里親さんがここにもいる、と感じました。
 里親歴のながい、ある里親さんは、これまで人に貸してきたアパートがやや老朽化したこともあって、貸すのをやめて、児童養護施設をでて就職する若者たちに提供しました。監督のために東京にでていた息子さんたちを呼び寄せて一緒に住まわせています。里子を養育することだけが里親ではなくて、自分にどんな資源があるのかを考えて行動する、これもベテラン里親だからこそ、の知恵なのでしょう。
 週末里親で知り合いとなった施設に生活する中学生を、離れた里親さんとネットワークを結んで、一人旅をさせている里親さんもいます。確かに、一人旅ほど自立のためのトレーニングになることはないでしょう。目的地を確認し、交通を調べる。お金がいくらかかるかも計算しなくてはならない。しかし、この一人旅のプログラムも施設でできることではありません。施設に知られたら問題になることなのかも知れません。
 ユニークな里親のパワーが子どもたちの可能性を広げています。だけど、特別にユニークと言わなくても、里親さんはそれぞれがそのままで、充分特別でユニークである、ともいえます。大きな子と乳児を“専門”に預かる愛知県の里親さんからこんな手紙がきましたのでご紹介します。
 
★里親になって早いもので13年がたちました。我が家ではおもに乳児と大きな子をお預かりしています。赤ちゃんは生後5日〜2歳くらいまで。大きな子は15歳以上。これまでに短期長期あわせて26人の子どもたちとのご縁をいただきました。それ以外に養子縁組した子どもが3人います(長男12才、次男10歳、長女7歳)。03人とも産院から迎え名前も私たちがつけました。長男の時には実母のお産にも立ち会いました。愛知県では以前は乳児委託をしていませんでしたが、熱心に希望し、希望が叶いました。
 長男を迎えて数ヶ月後に中学生を受託し、それからは大きな子どもたちとの生活を楽しんできました。また乳児院がいっぱいなので新生児をお願いしたいと児童相談所から話があり、喜んで受託しました。大きくやんちゃなお兄ちゃんも赤ちゃんに触って、そんなことから私との関係もよくなりました。
 我が家は大工を営んでいます。大きな子は住み込みで大工の仕事を手伝っています。まれに高校に行くので預かる、施設を出ても行くところがないので預かる、という子もいます。大きな子に共通するのは、孤独を感じていること。赤ちゃんのときからしっかり抱かれた経験があればそんなこともないのに、と思います。大きな子は抱っこできませんから(心を抱っこしてあげられるほど難しいことはできませんから)、私は乳幼児専門の里親さんになりたいと思っています。
 今は、生後7ヶ月目の女の子、15歳の男の子、18歳の女の子を里子として預かっています。15歳の男の子は情緒障碍児施設をへて働き出したが続かず、本人の希望で来春高校受験の予定。働くことをせず意欲もない子どもといるのは私も嫌なので、小さな畑を借りて二人で家庭菜園のようなことをしています。私は農業のことはまったく分からないので、地域の友人や老人に教えてもらっています。こうした人たちが里子をかわいがってくれるのは本当にありがたいことです。
 本人の希望でトウモロコシを植えようと思っています。お盆のころには収穫ができるでしょう。お腹も心も満たして、安心して暮らしていけることを願っています。いまはたくさんの愛情を押し売りしています。ほめ言葉もいっぱいかけて。子どもの嬉しそうな顔を見るのが私の生きがい。これからも多くの子どもたちと元気に生活していけることを願っています。
(木)
Info 奨学生募集
 来春高校を卒業し、大学・短大・専門学校へ進学を希望する里子に対しての奨学金の募集が全国里親会に届いていますので、お知らせします。どうぞご活用下さい。
 
[第15回雨宮児童福祉財団修学助成]
入学金の助成(返済の義務はありません)
(17年修学助成を受けた里子16名)
〜申請締切 10月31日(火)〜
 
[第1回資生堂児童福祉奨学生]
 児童福祉の道へ進みたいと考えている里子・児童養護施設入所児童を対象に3名程度助成を行う。
 助成の内容は、授業料援助として年50万円(返済の義務はありません)
〜申請締切 10月20日(金)〜
 
 詳細については、各都道府県・指定都市里親会事務局、または全国里親会に問い合わせ下さい。


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