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●里親として知っておきたいこと
乳幼児の養育ポイント
 乳幼児の成長過程で、精神的な安定と人との信頼関係を築くためには、1対1の愛着関係が必要不可欠です。日常生活の中で抱いたり、さすったり、おぶったりと直接肌のふれあいを持つことにより安心感をあたえます。この安定した関係が自立心を育てていくための重要な関わりとなります。
 子どもと関わる時間を大切にし、落ち着いた環境の中でゆったりと対応出来るようにしましょう。乳幼児と接する時のポイントを紹介します。
 
日常生活の基本と留意点
☆睡眠
 月齢や個人差により時間やリズムが異なるため、その子どもの状況を把握し、一日の生活を考慮しながら、その子どもに合ったペースを作っていけるように心掛けます。また、心地よく眠りにつき、さわやかに目覚めることができるよう室内の環境を整えます。
 
(1)寝かせ方
・就寝前に着替えや排泄をすませる。
・子守唄やお話、また軽く背中をさすったり、トントンするなど、心地よい雰囲気の中で眠りにつけるよう配慮する。
《留意点》
・6ヶ月位までは、うつ伏せ寝をしている際は目を離さないよう十分に注意をする。
・頭の変形を防ぐため、同一方向ばかり向かないように配慮する。
・睡眠時は発汗に留意するとともに、顔色や発熱等、体調の変化に気を配る。
 
(2)寝具
・マットレスや敷き布団等は、子どもに合った適切なものを選ぶ。
・上掛けは、子どもの体調・室温や季節により調節する。
・寝具は定期的に洗濯をしたり、日に干すなど清潔に気を配る。
 
(3)抱っこ
《留意点》
《首のすわらない乳児3〜4ヶ月以内》
・首をしっかりと支えられるよう、腕を後頭部、首、背中にまわし、もう片方の腕で臀部から足を支える。
・抱き上げる際は頭部から先に、寝かせる際は臀部から先に静かに下ろす。
 
遊び
 遊びは子どもにとって生活そのものであり、基本的な生活習慣を身につけたり、さらに感覚・運動・社会性・言語理解力・知的発達などの成長発達をも促す大切な役割を担っています。出来る限り個別に1対1の温かい関わりを持って愛着の関係を築き、その中で自ら興味の幅を広げ、さらに工夫・展開していけるような援助を行います。
 子どものあるがままを受け止め、さらにその子どもの持つ可能性を引き出していけるように心がけ、また保育者らも一緒に体験を楽しみ、遊びを通して子どもとしっかりとした信頼関係を築いていけるようにしましょう。
 遊びのポイントを月齢・年齢別にあげてみました。
 
0〜4ヶ月
(1)運動機能の発達を促す遊びのポイント
・手足の動きを促せるような簡単な体操を取り入れていく。
・腹ばいや縦抱きなどで周囲に目を向けられるように工夫する。
・握りやすい玩具を選んで、手に持たせてみたり振って音を出して楽しめるよう配慮する。
 
(2)情緒、社会性、言葉を促す遊びのポイント
・目覚めている時は、1対1の心地よい関わりを持って、保育者との関係を深めていく。
・抱いて目線を合わせながらやさしい語りかけ、なん語の発声を促す。
・少しずつ屋外の環境に慣らしていく。
 
《配慮及び留意点》
・色彩の明るいオルゴールメリーやつり玩具、また静かで柔らかな音楽をかけたりするなど、身体全体で心地よい刺激を受けとめられるよう環境を整える。
 
5〜8ヶ月
(1)運動機能の発達を促す遊びのポイント
・運動機能の発達がめざましい時期なので、姿勢の変化、移動(寝返る、座る、這うなど)を促したり、援助できるような遊びを取り入れていく。
・目と手の供応ができるようになり、音に対してもしっかり反応するようになってくるので、つかむ・にぎるなどの玩具を使用しての遊びの機会を多くもち、また両手を使って操作できるような姿勢を援助していく。
 
(2)情緒、社会性、言葉を促す遊びのポイント
・人との関わりを求めるようになってくるので、子どもの気持ちをそのつど十分に受けとめながら、1対1の関わりを楽しめるよう心掛ける。
・繰り返しの遊び・模倣遊びなど、簡単な手遊びや歌遊びを行って、やり取りを楽しませる。
・語りかけやなん語の応答を繰り返していく中で、さらに発声を促し発語へとつなげていく。
・戸外へ出て、外界への興味を広げられるようにする。
 
《配慮および留意点》
・個人差が大きく発達のリズムの差があるので、のびのびと身体を動かして自分からやろうとする意欲を大切に育てていく。
 
9〜12ヶ月
(1)運動機能の発達を促す遊びのポイント
・ハイハイでの移動を十分に行えるよう、言葉かけや玩具を使用して働きかけていく。
・座る、つかまり立ち、歩くなどの発達を援助できるような運動・遊びを取り入れていく。
・つかむ、にぎる、つまむなどの指先の機能を促していけるような遊びや玩具を提供していく。
 
(2)情緒、社会性を促す遊びのポイント
・1対1の安定した保育者との関係から友達への関心も育ってくるので、子ども同士が触れ合えるような遊びを工夫し、保育者が仲立ちとなっていく。
・行動範囲の広がりから、いろいろなものに興味を持ち始める時期でもあるので、遊び方に捉われず、様々な素材・種類の玩具に触れて、遊びや探索行動への意欲を育てていく。
・戸外での活動の機会を多く持ち、自分で見たり触れたりする体験を大切にする。
 
(3)言葉を促す遊びのポイント
・言語の理解が進み、指差しも見られるようになってくるので、自分の意見や声や動作で伝えられるように促し片言へとつなげていく。
・「ちょうだい」「どうぞ」など簡単な繰り返しのやり取りや、また絵本・紙芝居・歌や手遊びなどを楽しめるように配慮する。
《配慮および留意点》
・危険に留意しながらも、自由に玩具を取り出すことの出来る環境を整えるなど、自ら行動しようとする意欲を大切に育てていく。
 
 
1〜1歳6ヶ月
(1)運動機能の発達を促す遊びのポイント
・立って歩くことが出来るようになり、行動範囲がさらに広がってくるので、外での遊びの機会を多くする。
・転がる、よじ登る、すべるなどの全身を使った遊びを楽しめるよう配慮をする。
・手や指先を使う遊びに集中して取り組めるよう環境を整える。
 
(2)情緒・社会性を促す遊び
・できるだけ小グループ、又は1対1の遊びのなかで、甘えや後追い、やきもち、人見知りなどの感情の揺れをしっかりと受け止めていく。
・保育者が仲立ちとなって、友達との関わりの遊びを楽しませていくとともに、トラブルの際は、言葉でもやり取りが出来るように繰り返し伝えていく。
・戸外で自由に行動し、興味を示したものに、直接見たり触れたりする機会を多くもつ。
・いろいろな玩具や身近に使用しているものを素材に、ごっこ遊びやつもり遊びへと促して行けるよう配慮する。
 
《配慮及び留意点》
・行動範囲の広がりから、危険のないよう環境を整える。
・身近な生活用品に触れて遊ぶことが出来るよう配慮する。
 
1歳7ヶ月〜2歳
(1)運動機能の発達を促す遊びのポイント
・歩く、走る、登る、跳ぶなどの全身を使った動きや、バランスをとるような運動遊びをたくさん取り入れていく。
・細やかな操作を必要とする遊びに集中して取り組めるよう、環境を整える。
 
(2)情緒・社会性を促す遊びのポイント
・様々なものに興味を示し、考えたり工夫するなど、自信をもって遊びに取り組むことが出来るよう、配慮を行い見守る。
・友達と関わったり協力して遊べるような環境を整え、簡単なルールや約束を守って遊ぶことが出来るよう留意する。
・家庭や社会での経験を取り入れ、生きた経験を得ることができるよう、また社会への興味を広げていけるように配慮する。
 
(3)言葉を促す遊びのポイント
・片言から一語文、さらに二語文へと言葉でのやり取りを促して行けるよう、関わりの遊びを通して働きかけていく。
 
《配慮及び留意点》
・自発性を大切にし、保育者は余裕をもって子どもの行動を見守れるよう心掛けていく。
 
2歳〜3歳
(1)運動機能の発達を促す遊びのポイント
・押す、引っ張る、ぶら下がる、跳びおりるなど、身体を自分の思うようにコントロールできるようになってくるので、楽しみながら全身を使う活動が出来るような遊びを取り入れていく。
・細やかな操作を必要とする遊びを、一人で集中して取り組むことのできる環境を整え、見守っていく。
 
(2)情緒・社会性を促す遊びのポイント
・日々の体験を生かし、見立てたり工夫したりする遊びへと繋げていけるよう、自然や身近な事物、また生活・社会体験などの広がりを通して配慮を行う。
・自分で行おうとする意欲を盛り立てていくとともに、ルールや約束事を守りながら、友達とのやり取りを楽しむことで“うれしい”“楽しい”といった感動をみんなで共有できるよう、配慮を行っていく。
 
(3)言葉を促す遊びのポイント
・歌を歌ったり、絵本を読んだり、お話をする中で、少しずつ自分の思いを言葉で伝えていけるようになるので、さらに言語理解や表現の幅を広げていけるように心がけていく。
 
《配慮及び留意点》
・家庭や社会での生活体験を多く取り入れ、意識して取り組む。
・活動が活発になり、行動範囲も広がってくるので、危険のないよう十分注意する。
・自分でやろうとする意欲を大切にしながらも、「危険なこと」や「してはいけないこと」などを学べるよう留意し、さらに自立への援助を行っていく。
(取材・資料提供)
社会福祉法人二葉乳児院
中村先生
 
里親さん紹介コーナー
「愛する団子4兄弟」
 ここ名護市は県北部に位置し人口約55,000人、冬でも平均気温14℃という温暖な気候でここ北部地域は風光明媚な観光地、そういう中で“団子4兄弟”はのびのびと暮らしています。私たち夫婦は現在40代、今から8年くらい前、長男が3歳の時里親に関心をもち、夫婦で児童相談所へ相談に行きました。そこで説明を聞き里親登録をし、現在の子どもたちとめぐりあいました。この温暖な気候と沖縄には「命(ぬち)どぅ宝(たから)」・・・命は宝物という独特の精神から、我が家の4兄弟も地域の中にスムーズにとけこみ、皆に育てられながら成長しています。
 
 野球が大好きな中学1年の長男、勇太。野球と3度のご飯が大好きな5年生の次男、侑樹。はじけるように遊ぶ笑顔のカワイイ2年生の三男、睦。かわいい盛りの元気者3歳の四男、弘樹。やさしくてチョットこわいお父さんと優しくふくよかなお母さん。デコボコ家族の個性的な面々です。
 いつも家族揃ってご飯を食べ、皆で助け合ってお手伝いをし、家族の中では隠し事をしない事、それが我が家の大切な約束事です。
 毎日のように繰り返される口げんかとお母さんの大声が家中に響き渡ります。家の中ではいっぱいワガママをして、外では元気ないい子でいてね。ささやかなお母さんの願いです。
 里子ちゃんも含め、我が家の愛する団子4兄弟からどんなに私達が励まされ育てられてきた事でしょうか。
 「お父さんとお母さんの子どもでよかった」と心から言ってくれるその日まで私達は祈りつつ楽しく頑張ろうと思います。
沖縄県 新垣真由美
 
 
「広い牧草地帯の中にあるグループホーム」
 現在、我が家の家族構成は中2・1名、小3・2名(計3名、内2人は双子)という年齢差がほとんどなく、にぎやかを通りこしている毎日です。家の回りは牧草地帯と広い原野なので、子ども達が、少々大声を出して言いあっても隣近所を気にせず出来るので、のびのびと元気に育っている様に思います。
 
 私達夫婦は、共に大阪市住吉区で生まれ育ちました。結婚後、昭和48年に旧瀬棚町(現せたな町)に入植、酪農を始めました。まもなく長男が誕生、夫婦共、生活が軌道にのるまではたいへんでしたが、平成2年に里親登録、その半年後に初めて里子(当時小4男子)を預かりました。もっとも、それ以前から函館の養護施設児童の季節里親の経験はありましたが。
 里親に関心をもったのは大阪で働いていた頃からで、「あなたの愛の手を」(毎日新聞)の記事をいつも見ていたことを覚えています。
 たぶん、血のつながりのない親子を身近にみていて、子ども心に色々考えていたのではないかと思います。
 里親になってからは常時4〜5人の里子がおり、グループホームになったからといって、特に養育上、大きな変化はありません。ただ、グループホームになることで、周囲の人々の関心が一段と高まります。すでに、複数の夫婦から里親についての質問も受けています。また、里子の記録を書くことによって、自分たち里親と里子の関係を、より正確に客観視でき、非常に有益であると感じています。
北海道 新井清福


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